7
寮から学校へ続く道は着飾った学生たちであふれかえっている。私も碧い着物をまとい、落ち着かず髪をさわる。いつもは頭頂部で一つにまとめている髪を今日はお団子にしてみた。
一応ソウヤと校門で待ち合わせしているが見つけることができるだろうか。思っていた以上に同じ待ち合わせ方法の生徒が多いようだ。きょろきょろしながら歩く。
そもそもこの碧い着物を着てくるのは気合が入りすぎていただろうか。急に不安になってくる。
いた。
こんなに人がたくさんいるのにソウヤの姿を見つけた。校門の近くで立っている。
あの着物だ。ソウヤが身に着けているのは、私の碧い着物と一緒にアスカにもらった黒い着物と銀の帯だった。
ほわほわと心が弾む。
ソウヤに駆け寄る。
「お待たせ。その着物やっぱり似合ってる」
「ああ。お前もあの時のだな」
半年以上前にもらった着物のことをソウヤも覚えてくれていたのがうれしい。瞳の色なので忘れようもないかもしれないが。
意図せずお揃いができてしまった。自分とソウヤの帯を見て照れる。
「行くか」
ソウヤが歩き出す。
しかしいくら一学年一クラスとはいえ、初等部も含め全員集まるとなかなかの人数だ。
気を緩ますとはぐれそうだ。
慌ててソウヤの後をおうと、振り返って
「ん」
と右手が差し出される。
これは手を繋いでいいということだろうか。
差し出された右手を凝視し、恐る恐る左手を伸ばす。
心臓がやけにうるさい。
私の動きが遅かったからか、ソウヤが手を伸ばし私の左手を掴んだ。
私よりひとまわり大きくてかたい手だ。
外は寒いのに、繋いだ手は熱を帯びる。
「小さい頃お父さんとお母さんと繋いだ以来かも、人と手を繋ぐの」
懐かしい記憶が蘇り、思わずつぶやく。
「俺も」
繋いだ手をちらりと見たソウヤが言う。
頬がにやける。
人と手を繋ぐのはなんてあったかくて幸せなんだろう。
どうかこんな日々が続きますように、そう願わずにはいられなかった。




