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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第4章 決意
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6


任務から一週間。その日が近づいてきて、教室は浮足立っている。

「星夜祭たのしみだね」

隣のヤヨイに話しかける。毎年この学校で、外部から屋台を出店してもらい行われるお祭りである。一年に一度の盛大な祭りなので、みんな楽しみにしている。


「そうね。でも悪いけど今年は二人でまわれない」

「え、なんで」

当然、例年通りヤヨイと回るつもりだったので目を見開く。


するとヤヨイに後ろから抱き付く影があった。

「俺と回るから」

ヤヨイに抱き付いたユサが二カッと笑う。

「えぇ…」

だめとは言えないが、ヤヨイを盗られたようで面白くない。


じと目でユサを見つめると、さらに衝撃発言をされる。

「俺たち付き合い始めたんだ」

「あ、ちょっと、まだ言ってないのに」

ヤヨイがあわてたように言う。


「え?!いつから?」

動揺を隠せず、思わず席から立ち上がる。

「昨日の任務帰り」

ヤヨイとユサは昨日、任務を終えて帰ってきたところだ。

まさかそんなことになっていたとは。


「お、おめでとう」

「ありがとう」

今晩はヤヨイに質問攻めだと決意しながらも、祝福する。実際そう聞いて、最近の二人を思い返すと、付き合うというのは自然の流れに思えた。


しかしそうなると星夜祭は本当に一緒に回れない。三人でもいいかと思っていたが、付き合っているとなると話は別だ。


「あぁ、ひとりで参加かぁ」

それか誰か誘おうか、とつぶやくと

「ソウヤと回ればいいじゃん」

ユサが明るく言う。


「というか今年はみんなだいたい相棒同士で回るんじゃない。実際付き合っている子たちも多いし」

ヤヨイの言う通り、一年近く任務を共にしているので、おのずと仲が深まり、相棒同士で付き合っている子も増えた。


自分の席に座っているソウヤをちらりと見る。付き合うとかはまだ想像ができないが、星夜祭はたしかに一緒に回れたらうれしいかも。

「ソウヤも絶対誰と行くかなんて決めてないし、一緒にまわりなよ」

ユサが元気よく言うと、返事を待たずにソウヤを連れてくる。


なぜ連れてこられたかわからず、不思議そうな顔をしている。しかし私の腕を見つめ、口を開く。

「怪我は大丈夫か」

「あ、もう大丈夫」

制服に隠れて見えないが、もう包帯も取っている。


心配してくれているのだなと、ほんわりとあたたかい気持ちになる。

「ありがとう」

「大丈夫ならいい」

ソウヤはうなずくと、自分の席に戻ろうとする。


「あ、まってまって」

慌てて服の裾をつかむ。

「星夜祭、一緒に回りませんか」

なぜか敬語になってしまった。そして照れくさいやら緊張やらで手に汗がにじむ。任務の時以上に緊張しているかもしれない。


ちらりとソウヤの顔を見ると、ひとつうなずいて

「ああ」

とお得意の二文字返事を返してくれた。


ヤヨイとユサがソウヤの後ろで親指を立てる。

「あ、ありがとう。楽しみにしてる」

「ああ。…俺も」

小さくソウヤが微笑んでくれた。


勢いで誘ったが、誘いに乗ってくれたことに胸が弾んだ。当日学校は休みなので、私服である。任務のお礼でもらったあの碧い着物を着てみようか。


任務以外での二人行動は初めてだ。楽しい一日になりますように。

期待に胸を膨らませた。


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