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木の上から目をこらす。暗闇ではっきりとは見えないが、人の気配は感じる。相手は5人か。
今回の任務は初の『竹』である。今までの『梅』に比べて危険が伴うということだ。雪もちらつくほど寒いというのに、緊張でじんわりと手汗をかいている。
任務の内容は盗賊狩り。国の中心地、王都に続く火州からの山道に出没する盗賊の討伐である。
火州は鉱石の採掘が盛んな地域で、王都へと高級品が運ばれるため、しばしば盗賊が現れる。
最近被害が増えているため、私たちが派遣されたというわけだ。
盗賊が運び屋を襲撃する前に撃退するのが理想である。しかし万一私たちと同じように狩る側であったり、別の目的や未遂の可能性もあったりするので、現行犯で捕える。
そのため相手の場所と人数は把握しつつも、息を殺して待機している。盗賊たちは草むらに隠れているようだ。
馬車の音が近づいてきた。運び屋は昼夜問わず、運搬するため、人目につきにくい夜が盗賊に狙われる。
別の木に潜んでいるソウヤに合図を送る。
草むらに隠れている者たちも動き出したようで、微かに音がする。
唾を飲み込む。緊張しすぎては動きが鈍る。しかし集中せねばタイミングを逃す。
「かかれ!」
男の野太い声がする。
目の前を通る馬車に向かって、草むらから人影が飛び出した。
やはり数は5。
「うわぁ」
突然出てきた人に御者が驚く声がする。馬車の荷台にはもう一人男が乗っている。彼が運び屋だろう。
「荷物を取れ!」
荷台に4人の男が乗り込み、荷物を担ぎ出そうとする。
間違いなく、盗賊である。
判断がついたので迷いはない。動き出す。
手で持っていた石ころに龍導で水を纏わせて放つ。水弾である。
狙い通りひとりの男の首に直撃し、倒れる。威力は調節してあるので死にはしない。気絶しただけだ。
「なんだ!」
男たちがあたりを見回す。
その瞬間馬車の周りを火が囲む。
ソウヤである。
盗賊が逃げないよう火の檻を作ったのだ。
木から飛び降りる。ソウヤも地面に降り立つ。ここからが本番だ。




