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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第3章 二人の距離
23/48

4

アスカの通った道をすべて歩いた。しかし指輪は見つからなかった。

「見逃しちゃったのかな…それとも拾われちゃったかな…」


「依頼人も自分で探していたし、俺たちも二人がかりで丁寧に探したから、見逃したとは考えにくいな」

ソウヤも思案顔である。


見逃しならば帰りの道で見つかる可能性もあるが、拾われていたら手元に戻る確率はかなり低い。絶望的な気持ちになる。


「川に落ちている場合も考えて、帰りは龍導で水中を探ってみるよ」

かなり体力は消耗するがなんとしても見つけたい。


「ああ。俺は…」

ソウヤの言葉が途切れたので、そちらを向く。すると空をじっと見つめていた。


「なにかあった?」

「いや。鳥が運んだ可能性もあるかもしれないと思って」

ソウヤが見つめていたのは空をはばたく鳥であった。


「たしかに。金属とか宝石とか輝いているもの好きだもんね」

その可能性は大いにある気がしてきた。

「鳥の巣探してみようか」


「戻ろう」

先ほど到着したばかりだが元来た道を引き返す。行きは地面ばかり眺めていたが、今度は上を見て巣を探す。


「道中じゃなくて、遠いところに巣がある鳥だと追えないな」

「そうなると難しいね。とりあえずは道なりにあると信じて探そう」

お願い、見つかりますように。祈るような気持ちで道を歩いていく。


鳥の鳴き声が聞こえ、そちらを見る。少し道を外れた林の中である。

「巣だ」

近付いてみると大きめの巣があった。


「俺がのぼる」

「ありがとう」

ソウヤが軽やかに木を登る。すると親鳥と思われる大きい鳥がソウヤに向かっていく。


「危ない」

思わず声を上げる。しかしソウヤは動じず、小さな火を出現させる。それに鳥は驚き旋回する。もちろんソウヤは鳥に危害を加えるつもりはないが、効果はてきめんだった。動物はやはり本能的に火は怖いのである。


「わるいな」

親鳥が躊躇している間に巣をのぞく。雛鳥たちが鳴き出す。親鳥も攻撃体制に入っている。

私も地面で謝る。ごめん、すぐ終わるから。


親鳥が火にひるみつつも、子を守ろうとソウヤに向かう。その瞬間ソウヤが木から飛び降りる。

「大丈夫?」

着地したソウヤに声をかける。


「ああ。あったぞ」

「え」

てっきりないと思っていたので驚く。


握り締めていた手のひらを開くと、金色に輝く指輪があった。

「よ、よかった…」

ほっと息をつく。


「本当に鳥が持って行ってたんだね」

「ああ。このあたりの巣でよかった」

見つからないかもしれないと不安になっていたので、本当に良かった。


「ありがとう。ソウヤが思いついたおかげだよ」

「いや、お前も水中探すの疲れただろ」

気遣いの言葉に嬉しくなる。途中水辺では龍導で探っていたので、たしかに疲労感はあった。


「でも見つかったから疲れは飛んだよ」

嘘ではなかった。一気に安心感と達成感で疲れが飛んでいった。


「そうか、なら依頼人のもとへ帰ろう」

「うん」

ソウヤとともに歩き出す。先ほどまでとちがい、足取りは軽い。


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