4
アスカの通った道をすべて歩いた。しかし指輪は見つからなかった。
「見逃しちゃったのかな…それとも拾われちゃったかな…」
「依頼人も自分で探していたし、俺たちも二人がかりで丁寧に探したから、見逃したとは考えにくいな」
ソウヤも思案顔である。
見逃しならば帰りの道で見つかる可能性もあるが、拾われていたら手元に戻る確率はかなり低い。絶望的な気持ちになる。
「川に落ちている場合も考えて、帰りは龍導で水中を探ってみるよ」
かなり体力は消耗するがなんとしても見つけたい。
「ああ。俺は…」
ソウヤの言葉が途切れたので、そちらを向く。すると空をじっと見つめていた。
「なにかあった?」
「いや。鳥が運んだ可能性もあるかもしれないと思って」
ソウヤが見つめていたのは空をはばたく鳥であった。
「たしかに。金属とか宝石とか輝いているもの好きだもんね」
その可能性は大いにある気がしてきた。
「鳥の巣探してみようか」
「戻ろう」
先ほど到着したばかりだが元来た道を引き返す。行きは地面ばかり眺めていたが、今度は上を見て巣を探す。
「道中じゃなくて、遠いところに巣がある鳥だと追えないな」
「そうなると難しいね。とりあえずは道なりにあると信じて探そう」
お願い、見つかりますように。祈るような気持ちで道を歩いていく。
鳥の鳴き声が聞こえ、そちらを見る。少し道を外れた林の中である。
「巣だ」
近付いてみると大きめの巣があった。
「俺がのぼる」
「ありがとう」
ソウヤが軽やかに木を登る。すると親鳥と思われる大きい鳥がソウヤに向かっていく。
「危ない」
思わず声を上げる。しかしソウヤは動じず、小さな火を出現させる。それに鳥は驚き旋回する。もちろんソウヤは鳥に危害を加えるつもりはないが、効果はてきめんだった。動物はやはり本能的に火は怖いのである。
「わるいな」
親鳥が躊躇している間に巣をのぞく。雛鳥たちが鳴き出す。親鳥も攻撃体制に入っている。
私も地面で謝る。ごめん、すぐ終わるから。
親鳥が火にひるみつつも、子を守ろうとソウヤに向かう。その瞬間ソウヤが木から飛び降りる。
「大丈夫?」
着地したソウヤに声をかける。
「ああ。あったぞ」
「え」
てっきりないと思っていたので驚く。
握り締めていた手のひらを開くと、金色に輝く指輪があった。
「よ、よかった…」
ほっと息をつく。
「本当に鳥が持って行ってたんだね」
「ああ。このあたりの巣でよかった」
見つからないかもしれないと不安になっていたので、本当に良かった。
「ありがとう。ソウヤが思いついたおかげだよ」
「いや、お前も水中探すの疲れただろ」
気遣いの言葉に嬉しくなる。途中水辺では龍導で探っていたので、たしかに疲労感はあった。
「でも見つかったから疲れは飛んだよ」
嘘ではなかった。一気に安心感と達成感で疲れが飛んでいった。
「そうか、なら依頼人のもとへ帰ろう」
「うん」
ソウヤとともに歩き出す。先ほどまでとちがい、足取りは軽い。




