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食事をすませ、ソウヤは川に体を洗いに行った。その間に私は龍導をつかい、木陰で体を洗った。こういう時たしかに水属性は便利である。
「そろそろ寝ようか」
敵襲の心配があれば交代で寝たほうがいいが、今回はそのような心配もないので同時に寝る。
焚き火を消し、寝転ぶ。ソウヤも少し離れたところに寝転んだ。
「明日こそ指輪見つけたいね。わたしもこの首飾りなくしたらいてもたってもいられないと思うから、すごく気持ちわかるし、はやく見つけてあげたい」
首元に下げている三本の銀の首飾りを指で触る。
「大事なものなのか」
ソウヤが首飾りを見つめる。
「うん、家族でおそろいだったの」
そっと息を吐き出す。学校のみんなは知っているがソウヤにはまだ伝えていない。
「今は形見として私が三つともつけてる」
形見、つまりそれは…
「お前、親いないのか」
驚いたようにソウヤがつぶやく。
「五年前にね。お父さんもお母さんも龍導師で、任務で死んじゃって」
暗闇だから伝えられた。明るいところで顔を見ながらではきっとうまく言えなかった。
目に水滴がたまるのを、静かに拭う。
「俺も」
小さな声が聞こえてソウヤを見る。しかしソウヤは空を見上げていた。
「俺も、父さんも母さんも妹も五年前に死んだ」
「え…」
驚いて声が漏れる。同じころに、なんという悲しい偶然だろう。
「任務で?」
まさかとは思いつつも、尋ねる。
「いや。俺の親は龍導師じゃなくて、細々商売してた」
「そうなんだ」
妹さんもということは流行り病だったのかもしれない。
「そのあと一人で生活してたの?」
私は学校の寮にいたので、生活は困らなかった。ソウヤはどうしていたのだろう。
「元龍導師のじいさんが保護してくれた」
そういえば初任務の時にユサがそのようなことを言っていた。
「じいさんに龍導の扱い方も教えてもらって、高等部のタイミングでこの学校に入学したんだ」
「それで龍導のコントロールがうまいんだね」
「ああ。ユサも俺と一緒に練習した」
腑に落ちる。編入当初からふたりとも龍導のコントロールができていた。
なんとなく優しい沈黙が広がった。
「寝るか」
話しすぎたことに照れるようにソウヤが言う。
「そうだね、明日に備えよう」
静かに帳が落ちていく。目をつむる。穏やかに眠ることができそうだ。




