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空に橙色が広がっている。
「このあたりで野宿して、続きは明日にしようか」
「そうだな、焚き火の準備をする」
二人で焚き火に適した枝を集める。
「指輪を見つけるのはむずかしいね」
「小さいからな」
ソウヤも少し困ったように言う。
今朝、学校を出発して遺失物探索の任務を始めた。
依頼人は木州に住んでいるため、そこにたどり着くまでに半日以上を要した。
「はるばるありがとう」
ふんわりとした笑みで迎えてくれた女性が依頼人のアスカであった。
「三年前亡くなった祖母がくれた大切な指輪だったんだけどね。外で作業した時に外して。しかもそのまま着物の袖に入れて、土州まで商談に行ってしまって。帰ってきた時にはもうなくて」
アスカは着物を販売する仕事をしていて、各地に商談に行くらしい。木州から土州の移動も半日弱かかる。
「そうなんですね。どのような指輪なのですか」
「金属性の祖母が作ってくれたものでね。特に細工や飾りがついていたわけではなくて、私の小指にぴったり合うようにしてくれていたの」
「世界に一つの大切な品物なんですね」
「ほんとうに。服に入れずにすぐつけなおせばよかった」
アスカの声が涙にぬれる。
これはますます気合を入れて探さなければ。
「色は金色ですか」
金属性の手作りでも色を変化させている場合もある。念のため確認する。
「そう、濁りのない金色よ」
その後、アスカの歩いたところを教えてもらい、実際に探し始めた。
しかし当然のことながら、すでにアスカ自身も一度探しているので、簡単には見つからない。
そうしている間に日が沈んできたというわけである。
暗闇で探すのは単純に見つけにくいうえに、危険を伴うので、今日の作業はここまでである。
まだ木州から土州の道のりの半分ほどなので、捜索は明日では終わらないかもしれない。
二人で集めた枝に、ソウヤに火をつけてもらう。
「ありがとう。こういう時火属性は助かるね」
そういうと返事に迷うように、視線をさまよわせ、
「まぁ」
と結局二文字を絞り出した。
その様子がおもしろくて少し笑うと、ソウヤは罰が悪そうな顔をした。
「ごめんごめん、話そうとしてくれて嬉しいよ。ごはん食べようか」
捜索ついでに、龍導で川から水ごとすくい上げていた魚を焼く準備をする。
「その能力も便利だよな」
水に包まれていた魚を見て、ソウヤが言う。
「そうだね。私たち二人でいれば野宿は困らないね」
にこっと笑いかけたら、ソウヤもうなずいてくれた。
やはり少しずつ仲良くなれている。ほんわりとあたたかい気持ちになった。




