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15の春。見慣れた同級生と挨拶を交わしながら校門をくぐる。
今日から高等部とはいえ、中等部からメンバーも制服もほぼ変わらないので実感は薄い。
「シズク!似合ってるね、高等部の制服」
後ろを振り返ると、それこそ見慣れた顔の友人であるヤヨイがいる。
桃色のふわふわと長い髪が風になびき、色気を感じさせる。
「いや、あんまり中等部と変わらないでしょ」
「まぁね。若干濃い紺になった」
そういうとヤヨイは制服の袖を揺らす。
着物を模した制服だが、下は動きやすいように細身の袴のようになっている。
男女ともに紺色になっており、中等部の3年生にもなるとみなアレンジを加え、個性を出す。
高等部は自分やヤヨイをはじめ、みなすでに手を加えた着こなしである。
私の制服は着本の形は変えていないが、首元に三本、銀色の長さの違う首飾りをつけている。
ヤヨイの袴の丈は異様に短く、制服の胸元は大きく開き、色香漂う見事なスタイルを惜しげもなく披露している。
昔は幼いながらに発達したその豊満な体に悩まされていたようだが、最近は開き直っている。
実際15になっても、いまだ発育の様子がうかがえない私からすれば羨ましい限りである。
「教室に行こうか」
一学年につき一クラスしかないので、迷わず先に歩き出したヤヨイの後を追いかける。
その時ヤヨイ越しに一人の少年が見えた。
ほぼ見知った顔の中で、全く見たことがない少年。
制服は着ているが、人波のなかそこだけ時が止まったように、別世界のように馴染むことなく佇んでいる。
漆黒の髪に美しく透き通るような碧い瞳。
「綺麗」
「え?」
思わず声が漏れ、ヤヨイが振り返る。
「いや、そこにいた男の子」
とヤヨイに伝えかけたが、いなくなっていた。
「高等部からの新入りかな」
「見たことない子だったなら、そうじゃない?毎年5人くらいは増えるらしいし」
ふたりできょろきょろしてみたが見当たらない。
「綺麗な子だったんだ」
「うん。けど…」
あの瞳は…
「けど?」
「いや、なんでもない。綺麗な子だったよ、瞳も、顔自体も」
端正な顔を思い出しながら言う。
「へぇ、そら楽しみ、同学年だといいわね」
「だね、仲良くなりたいね」
ヤヨイとうなずき合い、教室に向かった。