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翌日。朝一番におじいさんとみんなでヨウの作ったご両親のお墓に挨拶に向かった。
ユサとヤヨイが土を盛り直し、植物で囲い、綺麗にした。
それを見てヨウはうれしそうに笑った。
「ありがとう。またね」
「ありがとう、気をつけてな」
ヨウとおじいさんに見送られる。
私たちは丁寧に頭を下げて出立する。
なぜかヨウはソウヤにかなり懐いており、別れ際までソウヤにくっついていた。
「何かあったの、あの子と」
ソウヤに尋ねるが
「まぁ」
と短い返事だけである。
見かねたユサが横から
「昨日話してわかったんだけど。いろいろ二人似ててさ。属性も同じだったんだよ」
と口を挟む。
「なるほど、ヨウは火だったんだ」
「あぁ」
とこれまた二文字だけの返答である。
気持ちを切り替えて、もう一度話を振る。
「初任務、無事に終わってよかったね」
話しかけられたのは自分じゃないと思ったのか、しばらく無言が続く。
しかし誰も答えないのと、私がソウヤしか見ていないので、ようやく
「あぁ」
と返事があった。
これは…
「えーい!さっきから二文字しか話せないの!会話しようよ、会話」
限界だった。
私の中の何が弾けて、ソウヤに勢いよく迫った。
「わ、わるい」
私の勢いに押されてソウヤが謝る。
それを見たユサが慌てて間に入ろうとする。
しかしヤヨイが
「まぁ少し様子を見ましょう」
と後ろに引っ張っていく。
私はそれをいいことに、さらにソウヤに詰め寄る。
「会話苦手とか、私と話したくないとかあるかもだけど!これから三年間一緒に任務するんだよ!歩み寄ろうよ」
「あ、あぁ。いや、そうだな」
二文字だけしか話せないのかと言ったことが効いたのか、少し長めの返答が返ってくる。
文字数の問題ではないのだが、進歩ではある。
「シズクちゃんすごいね。もう少し大人しいというか、大人っぽい子かと」
ユサが驚いて、ヤヨイに言う。
「しっかりしてるから誤解されがちだけどね。気を許した相手にはあんな感じよ。感情が分かりやすいタイプだと思うわ」
ヤヨイがくすくす笑う。
「そうなんだね。ソウヤはさ、なかなか心の扉を開かないタイプだから、あれぐらいオープンに突っ込んできてくれる子の方がうまくやっていけるかも」
「あら。いい相棒になるかもしれないわね。シズクも素でぶつかっていくあたり、ソウヤくんと仲良くなりたいと思っているのよ」
各々の友人が好き勝手論評しているのが、若干聞こえてきて気まずい。
しかしここで挫けては先ほどまでと何も変わらない。
「会話嫌ではない?」
探るようにソウヤに尋ねる。
「嫌じゃない」
ソウヤが真っ直ぐ目を見て伝えてくる。
碧い瞳に見つめられて落ち着かないが、その返答に安堵する。
「じゃこれからいっぱい話しかけるから。仲良くなりたいし」
すっと右手を彼に差し出す。
「改めて、シズクです。これから相棒としてよろしくね」
「あぁ。ソウヤだ。こちらこそよろしく」
ソウヤもぎこちなく右手を差し出し、握手する。
「なんだか小さい子の初めての友達て感じね」
「だね、面白いね。任務の帰り道って今更だしね」
ユサとヤヨイが茶々をいれる。
「うるさい。帰るよ」
照れ臭くなって、握手してた手を離し、歩き出す。
仲良くなり方は思っていたのとはだいぶ違ったが、少しソウヤに近づけた気がする。
なんとなく満たされた気持ちでそっと微笑んだ。




