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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第2章 初任務
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8


捕まえた少年はおじいさんと向かい合っている。

私たちはおじいさんの後ろの方に座った。

憔悴しているので逃げるとは思えないが、一応出口は塞いでいる。


「名前はなんと言うんじゃ」

おじいさんは優しく問うた。


完全に私たちに怯え、縮こまっていた少年は意外な優しい質問に顔を上げた。


「ヨウ」

小さな声で返答する。


「そうか、いい名前じゃな。ヨウはなぜ野菜を取ったんじゃ」

また優しい声である。


するとヨウの瞳から、また涙が出てくる。


「ごはんがなくて…」

「そうじゃったのか。ご両親は」

おじいさんがそっとヨウの頭をなでる。


「流行り病で二人とも死んじゃって。俺どうしたら…」

嗚咽が漏れる。


「そうか。辛かったの」

「ごめんなさい!お腹減っちゃって、だめだって分かってたけど」


しゃくりあげながらヨウが一生懸命謝る。

言われてみれば、ヨウはかなり痩せ細っている。


「もう少し優しくしてあげればよかったわね」

「そうだね」

ヤヨイの言葉に同意する。


容赦なく捕らえたのが申し訳ない。

任務なので逃すわけにはもちろんいかないし、おじいさんのためにも再犯は防ぐべきだが、他にやりようはあったかもしれない。


「よし。うちで働くか。ちょうど人手が欲しかったしの」


おじいさんがヨウの顔を覗き込む。

涙でぐしゃぐしゃだったヨウが驚いた表情になる。


「い、いいの」

恐る恐るおじいさんに聞く。


「あぁ。ここに住んで仕事を手伝ってくれたら助かる」

「ありがとう」


再びヨウが泣き出す。

「よしよし。まずはごはんを食べるか」


おじいさんがごはんを作りに台所に向かうので、私とヤヨイも手伝いに行く。


ユサとソウヤはヨウを慰めに近づいている。


「ありがとうございます」

「なんのお礼じゃ」

突然礼を言った私を不思議そうにおじいさんが見つめる。


「彼を拾ってくださって」

「なぜお前さんが礼を言うんじゃ」

やはりおじいさんは不思議そうである。


「親が二人ともいないのは本当にさみしいし、ひとりはつらいから」


「そうじゃな。わしもひとりで寂しかったし、人手も増えてむしろ助かるわい」

私の顔を見つめて何か感じたのか、おじいさんはそっと頭をなでてくれる。


人に頭を撫でてもらったのはいつぶりだろうか。

優しい温もりに少し涙腺が緩む。

慌てて涙がこぼれ落ちる前に言葉を紡ぐ。


「私が言うのもおかしな話ですが、彼をよろしくお願いします」

「ああ、任せなさい。こちらこそありがとうな。ヨウを捕まえてくれて」


おじいさんの微笑みにつられて私も微笑む。

ヨウとおじいさんのこれからの生活が幸せでありますように、と願った。



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