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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第2章 初任務
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私たちの初任務が行われる日。校門で先生が見送ってくれる。


「あなたたちなら心配ありませんが、気を付けていってらっしゃい」


「ありがとうございます、いってきます」

挨拶を交わし、四人で歩き出す。


「ふたりは土州には行ったことあるの」

ユサの質問にヤヨイと軽く首をふる。


「通過したことしかないかも」

「そうね、しっかり滞在したことはないわ」


今回の任務は五つの地域に分かれているうちの土州である。正確には五角形の国の中心は王都なので、地域分けとしては六つが正しいかもしれない。五角形の角が頂点から時計回りに金州、火州、水州、木州、土州となっている。目的の土州は学校がある金州の隣の州というわけだ。歩いて半日といったところか。


「土州は農業が盛んな地域だから、観光って感じじゃないもんな」

「そうだね。二人も初めて?」

ユサとその隣を歩くソウヤに聞いてみる。


「俺らは二人とも水州出身なんだけど、ちっちゃい頃学校から農業体験で行ったことあるよ」

「農業体験!たのしそうね」


「一般の学校は必須なんだよ。泥だらけになって楽しかったよ」


初等部の頃から龍導中心のこの学校にいたので、一般の学校はなじみがない。

初めて聞く話に興味がわく。


「二人はやっぱり龍導師を目指してるの」

「そうだね」

ユサの質問に即答する。


龍導師とは龍導が強いものが能力をつかい、国の平和を守る専門職である。中でも優秀なものは王族直属の組織で働く。


私たちの学校は龍導師を目指すものがほとんどである。


「やっぱそうなんだね」

とユサもうなずく。


「私はお父様の跡を継ぐことになるわ」

ヤヨイは首を振る。


「お父さんはなにしてる人なの」

「木州の領主よ」

「え!?領主さま!?」


それぞれ五つの州にはその土地を治める領主が存在する。

ヤヨイはその一つ木州の領主であるタイジュの一人娘なのである。


「そうよ。いろいろ面倒ごとも多くてね。今だけなの自由は」

「そうなんだ」


ユサは驚いている。領主はこの国でいうと、王族の次に貴い立場なので当然である。


ちなみに金州は学校長のお父様であるミカゲ様が領主である。


「二人はどうなの」

ヤヨイが聞き返すと


「俺もソウヤも決まってないなぁ。家が商売してるけど兄貴が継ぐ予定だし」

ユサがなぜか二人分答える。


「そう。お兄さんいるのね」

「そうそう。兄貴が一人と弟が一人。男ばっかだよ。ふたりは」


「私たちはふたりとも一人っ子よ」

「へぇ、一人っ子同士なんだ。意外かも。偏見だけど自己主張の激しいぶつかり合いとかにならないの」


その言葉にヤヨイと同時に吹き出す。

「あった、あった」

「初めの頃はケンカだらけ」


「どんなケンカだったの」

「ヤヨイがはじめは偉そうでさ」

思い出して笑う。ちびヤヨイは本当に態度がでかかった。


「仕方ないでしょ。あの家で育ったら」

ヤヨイが恥ずかしそうに口を尖らす。


「友達なんて存在知らなかったから、席が前後だったシズクを召使いのようにしようとして」


「そう。それで私も命令しないでって」

シズクも結構生意気だったわよね、とヤヨイが言う。

たしかに、とうなずく。


「でもケンカしまくったから仲良くなったよね」

「言いたいことお互い遠慮なしだったからね」


「まぁだから仲良くなってからもいっぱいケンカしたけど」

お互い顔を見合わせて笑う。


そうだ、数え切れないほどケンカした。


「でもそういう意味ではお互いが兄弟みたいなものかもね」

「つらい時支えてくれたのもヤヨイだし」


「いい関係だね」

ユサが二カッと笑う。


「ソウヤ、くんは」

呼び捨てにしていいかわからず、ぎこちなく呼ぶ。


「妹」

短く答える。記念すべき初会話だが、それ以上聞いていいのかいまいちわからない反応である。


「へぇ、お兄ちゃんなんだ。いくつ離れてるの」

「二つ下でさ、俺もよく一緒に遊んだよ。ソウヤにべったりでさ」

ユサが結局間に入り、残りを説明する。


そして自然と話題は変わっていき、目的地に到着した。



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