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【完結】龍の導き  作者: 楽羽
第1章 出逢い
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9


「優秀な私たちに編入生をフォローさせようってことか、何か問題があるのを押し付けたのかどっちかしらね」

ヤヨイは肩をすくめる。


「深い意味はないかもしれないけどね」


「そうかしら。私たちに編入生をあててくるのは意味がある気がする。しかも相剋なのに」

「それはそうだね」


編入生に相剋の相棒をつけるのはなぜなのか。本来ならやりやすいように相生の生徒と組ませるのが順当である。


「まぁなにはともあれ、シズクは気になる彼とこれで否が応でも関わることになるわね」


「あの瞳は気になっちゃうよ」

「一時のシズクみたいな瞳だもんね」


そうなのだ。瞳の色がどこかで見たような気がして気になるのもあるが。昔の私に似ているのだ。だから彼が強烈に気になる。始めて会ったにもかかわらず、あの瞳が他人には思えない。


「せっかく相棒になったし、仲良くなる努力はするよ」

「そうね」


「俺も俺も」

突然入ってきた声に驚いて振り返る。


そこにはヤヨイの相棒になった彼がいた。


「えっと、ユサくんだったよね」


「呼び捨てでいいよ!」

戸惑いながら聞くと、二カッと効果音がつきそうな笑顔で言われてうなずく。


「ちょうどよかった。私が相棒になったヤヨイ。よろしくね」

「よろしくー!すげぇうれしいよ、こんなかわいい子となれて」

またもや二カッとした笑顔で笑う。


ヤヨイはというとストレートな褒め言葉に耳が赤くなっている。


可愛いのだが、同級生の男子は家柄、成績、スタイルを含めヤヨイのことを高嶺の花扱いしている節がある。


ここまでフレンドリーかつ真っ直ぐに褒めてくる男子がなかなかいなかったのだ。


そのため意外と褒められることになれていない。

これはいい相棒になりそうだ。

二人の様子を見てそっと微笑む。


「シズクちゃんだっけ?ソウヤのことよろしくね」

優しい、見守るような瞳でユサが言う。


「え?あ、もちろん」

なぜユサが頼んでくるのだろうか。


「あなたたち前から知り合いなの?」

ヤヨイが不思議そうに聞く。


「うん。いわゆる幼馴染ってやつ。ちっさい頃からずっと一緒でさ。この学校もソウヤが入るってなったから、親に無理言ってついてきた」


「ずいぶんべったりなのね」

「あいつ見てないと心配なんだ。壊れちまいそうで」

すっと目を細め、寂しげにユサが言う。


「どういう意味?」

ヤヨイが聞こうとしたら


「なーんて。俺があいつのことが大好きなだけ」

二カッとユサはもう一度笑うと、じゃあよろしくねと去っていく。


「訳ありってことね」

ヤヨイが軽くため息をつく。ユサは明るく誤魔化していたが、両方真実なのだろう。


「まぁ納得だね。なにか失くしてしまった瞳してるもんね…」


あの綺麗な碧い瞳は周りを見ているようで見ていない。どこか遠くをみているような、そんな寂しそうな瞳だった。


「そうね、だから気になるのよね。シズクは」

こくりと素直にうなずく。


彼がなにを失ってきたのかはわからない。

これから先知ることはないかもしれない。


少なくとも彼の方が話すまで、こちらからずかずかと聞く気はない。


それでもかまわない。私なりに相棒として仲良くなるだけである。



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