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二十三話 幕間 クロカミ共和国3

 

 クロカミ共和国では、会議を終えた出席者たちが次々と出て行く中で最後まで残る者たちがいた。


「全く、クロノとかいう若造め。けしからん」

「いやはや、その通りですな」


「ですが彼のいう事は(もっと)もかと。硬軟(こうなん)(あわ)せ持った良い策であることは間違いありません。実際に国民はアイドルに過剰ともいえるほど熱中しております」


「軍事面に加えて文化面で攻勢に出るということは分かります。我々の文化が他国に広まれば、その国民も懐柔しやすくなるでしょうし」


「ふん、そういえば君の娘はアイドルグループに選ばれたそうだな」

「……何が言いたいのですかな?議長」


「よもや君も懐柔されているのではあるまいな」

「馬鹿な事を。ご自分だって賛成したではありませんか」


「まあまあ、そのへんで。いいじゃないですかアイドル。人気商売な所は我々政治家と似てますしな」


「確かにその通りですな。いっそのこと我々も歌ってみますか?」


 議長は歌はともかく踊りならいけるのではないかと一瞬考えたがすぐに考えを改めた。


「君ぃ、ふざけるのも大概にしたまえ」


「悪ふざけが過ぎましたな。それで近々完成する劇場でのこけら落としコンサートをめぐって前日に人気投票が行われるそうですよ」


「だが劇場の完成は随分先のことだろう?」

「……いえそれが、ラウラが協力したとかで工期が大幅に短縮していると報告が……」


「……またラウラか、やはり彼女をどうにかしなければならんな」


 評議員の一部は闘気によって肉体を強化するグレイク流体術の出身者である。彼らの目的は精霊を消し去り、グレイク流を大陸全土に広めることであった。そのため、多くの精霊を呼び寄せるラウラの存在を疎ましく思っていたのだ。







 クロノの道場ではアイドル達が集まってレッスンを受けていた。彼女たち4人は各地で開かれたミニライブで結果を残した者たちで構成され、アレクサンドで開かれるフェスティバルに参加することが決まっていた。


「だから何度言ったら分かるのですか、レズリー!そこは皆で揃えるところです!」

「あらフローネさん。私、もっと皆さん個性的になられた方が良いと思いますの」


 全員で揃ったダンスを披露したいフローネと個性を尊重したいレズリーはいつも言い争っていた。他の2人は気の強さに押されて意見が出来ないでいる。そのためフローネとレズリーは言い争いは止まない。


 一見直情的なフローネが突っかかっているように見えるが、レズリーも心に熱いもの秘めており相当な頑固者であった。グループのリーダーはまだ決定しておらず、どちらが主導権を握るかによって今後の方針も決定するのだ。それが分かっているからこそ2人は(ゆず)らなかった。


「うんうん、2人ともいい事いうな~」


 争う2人の間に割って入るように少女が声をあげた。


「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ」

「どちら様ですこと?」


 その疑問には道場の主であるクロノが答えた。


「彼女が最後のメンバーだ。仲良くしてやってくれ」

「マユラです。よろしくお願いします」


「そうでしたか。ではマユラさん、私とフローネさん、どちらが正しいと思いますか?」


 レズリーは自分の味方になりそうなマユラを見て勝負をつけにきた。


「なっ!? 彼女は今来たばかりだろう。これからのレッスンを通して――」


「第一印象こそがその人の本音ですわ」

「くっ、確かにその通りかもしれん……」

「という訳ですの。マユラさんの考えを聞かせくださいませ」


「うーん、そうですねー。やっぱりフローネさんみたいな格好いい女性が可愛い仕草をしたらときめいちゃいますよね」


 レズリーが満足そうに頷く。


「だ、だがイメージも大事だろう?私のファンは幻滅しないだろうか……」


「でもでも~それって結局現状維持じゃないですか。やっぱりチャレンジした方が良いと思うんです。ファンの方って成長を見守ってくれるっていうか、そういうの好きだと思うんです。フローネさんが挑戦する姿をみれば幻滅なんてするはずないですよ」


「そうだろうか……」


「そうですって。それに古参のファンもあの頃のフローネさんを知っているのは俺たちだけ、なんて優越感を感じてくれるかもですよ?」


「全くその通りですわ」


 勝利を確信したレズリーが高らかに笑いだす。だがそんな彼女に対してもマユラは牙をむいた。


「逆にレズリーさんはやりすぎです。ただでさえ1人だけフリフリの衣装なのに突っ走ったら浮いて見えますよ?ソロの時はそれでもいいかもしれないですけど、グループなんだから合わせないと」


「で、ですが、それは私の個性ですわ」


「やっぱりメリハリって大事だと思うんです。それでいていざという時強く出す。そうすればレズリーさんの個性はもっと際立つんじゃないかな~」


「それはっ! ……確かにそうかもしれません」


 それまで会話に加わらずに様子を窺っていたクロノが手を鳴らして注目を集め宣言した。


「我々はこのメンバーでアイドルフェスティバルを勝ち抜くぞ! リーダーは暫定的ではあるがマユラとする。異論はあるか?」


 皆が静かに首を横に振り、拍手で受け入れた。フローネとレズリーも渋々といった様子であるが受け入れている。そして(とう)のマユラは予定通りにリーダーになれたことを心の中でほくそ笑んでいた。

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