十五話 ラウラの魅力
グレン達はギルドマスターから魔物の討伐を要請されて、準備のために買い出しに出ていた。目的地の付近にはアレクとソフィアが眠る墓地がある。グレンとラウラは墓に供える花束を購入するとスタロと合流すべく門へ急いでいた。
「これも収納空間に入れられれば良かったんだけどね」
ラウラの収納魔法は動植物は入れる事が出来なかった。無理に入れてもどこかに飛ばされてしまうので旅の必需品などはスタロに訓練として持たせて、現在はもっぱらグレン3号改の専用倉庫として利用していた。
現場に到着するとすぐに戦闘になった。魔物は数こそいるがそれほどの強さではない。いつもならばスタロに任せてもよい程度の敵であったが、アレクとソフィアの墓を守るために3人で戦っていた。普段は積極的に戦わないラウラも先に逝ってしまった2人に見せつけるようにグレン3号改の腕を発射する新技を披露した。
戦いが終わると3人は墓に花を供えた。ラウラはひとしきり手を合わせると立ち上がった。
「グレンはゆっくりしていきなさい」
2人と話したいこともあるだろうとラウラは気を使った。だがそんな気も知らずスタロは居座っていた。
「アレクさんたちってどんな人だったんスか?」
グレンは少し考え込んで話し始めた。
「俺が初めて会った時、アレクとソフィアはいつもイチャイチャしていたんだ」
そんなことが聞きたいわけではない。スタロは話題を変えようとした。
「そ、そうなんスか。ラウラさんはどうだったっスか」
「ラウラはそんな2人を見てずっと不機嫌だった」
だがスタロのたくらみは失敗に終わる。グレンは分かるだろ?とスタロを見つめて話を続けた。
「当時の俺は同僚に幼馴染を奪われて苛々していてな、丁度村に来ていたラウラと気が合って一緒に飲んで愚痴を言い合ってたんだ」
スタロは以前ラウラから聞いた話を思い出した。
「朝起きたらベッドにラウラがいて驚いたよ」
いきなり情事を聞かされる方も驚きだ。
「それでどうなったんスか?」
「その後は平謝りして許してもらったさ。ラウラはあれで優しいところもあるしな」
「?? でも今ラウラさんはグレンさんの事をスキスキって感じっスよね? グレンさんもそうなんスか?」
「…………」
なんでスタロと恋愛話をしなきゃならないんだ。グレンは我に返ったがもう後には引けなかった。
「俺は……ラウラが好きだ」
「グレンさん……」
「ラウラのおっぱいが大好きだ……」
「っス!?」
お前もそう思うだろう? あのおっぱいたまらんだろう? スタロは無言の圧力を感じて思わず反発した。
「で、でもちょっと気が強いっていうか、性格きつくて無理っス」
グレンは分かってねえなとスタロを見下ろした。スタロは貧乳派だった。
「あれがいいんじゃないか。あの俺を見下ろす冷たい目つきがいいんだ、ぞわぞわがたまらんのよ。……おまえにもいずれ分かる時が来る」
「でもラウラさんはババアじゃないっスか!!」
グレンは急に真剣な顔つきになった。スタロはそれを見て失言を後悔した。だがグレンは逆に冷静になって語り掛けた。
「スタロ、目を閉じて想像してみろ……。お前は同年代と結婚する。そして50年が経った。相手は70くらいのよぼよぼの婆ちゃんだ。だがラウラはどうだ。魔力は歳を追うごとに強くなり、肌はつるつる、おっぱいもそのまま。……どうだ?」
「ありっス!!」
グレンはスタロの成長を感じて笑顔になった。
「戦闘も恋愛と同じだぞ。目先の事ばかり考えていては駄目なのさ」
「はいっス!!」
スタロはグレンに騙されて納得したが同時に疑問も浮かんできた。
「でも、そんなにラウラさんのこと好きならプロポーズすればいいじゃないスか」
「そ、そんな恥ずかしい事言えるわけないだろ!」
散々性癖を晒しておいて、いまさら何を恥ずかしがるのか。スタロには理解できなかった。