「とんでもないもの」
掲載日:2021/07/01
その昔、とある大泥棒は『とんでもないもの」を盗んだそうだ。
けっこう有名な事件だ。
「とんでもないもの」は、
それはすごく大切なもので、誰にとっても大事なもの。
失くしたり、壊したりしたら大変だから、
大事にしまっておきたい。
結構、傷付きやすいし、もったいないから、
人にはあんまり見せたくないかも。
でも、まったく誰にも見られないのも、
なんかイヤだったり。
誰にも気にかけてもらえないのも……
誰かのを盗んでみたいと思ったり、
自分だけのものにしたいと思ってしまったり。
逆に盗まれてみたいと憧れたりもする。
どこに置いたら安全なんだろう。
硬い扉の中にしまって鍵を掛けておくか。
誰にでも見えるところに置いておくか。
拠り所がむずかしい。
傷を付けてしまったら、
自分のだろうと、誰かのだろうと、
ものすごく痛い。
それを知ってるはずなのに、
割と簡単にそのことを忘れてしまう。
大事な物のはずなのに。
でも不思議なことに、
盗まれてしまった時には、悪い気はしない。
することもあるのかな?
盗んでいくのが人間だけとは限らない。
動物だったり、景色だったり、作品だったり。
盗まれた「とんでもないもの」が、
盗んでいったモノと共に在るのなら、
それは幸せなことなのかもしれない。
ここには泥棒さんが多すぎる。




