シーアーンの奴隷市場
サルフェンダス国南方にある辺境の町シーアーン。
乾燥した土地に木と漆喰で作られた建造物が立ち並ぶ、とても埃っぽい町であった。
この町は、月に一度奴隷市が開かれることで知られている。
「で、ここがその奴隷市というわけね」
売り物であるエルフの少女たちが10数名、町の中心部にある広場に設置された粗末な木製の囲いの中に集められ、座らされていた。彼女たちは一様に幼い少女たちだ。
そのうちのひとり、おそらくは年長者である14歳くらいの少女が突然そう言ったのである。
彼女のとなりに座っていた、10歳前後くらいに見える少女が怪訝な表情で彼女に顔を向けた。
「何を言ってるの。私たち一緒にエルフの村からさらわれて、この奴隷市場に来たんじゃない」
「ふーん、そうなの。ええと、あなたの名前は」
「名前?えっ・・・あ、そうだ・・私はマイラ」
「私はハイネ。いいかしらマイラ。いくつか質問させてもらっても」
「え・・・質問て・・何」
マイラは明らかに動揺している。
「エルフの村ってどんなところだったっけ?」
「え・・それはエルフが住んでいる、森の奥にある秘密の村よ」
「その村でマイラのご両親は何をしているの?どんな家に住んでいるの?」
「・・・・・」
「マイラはいつも何をして過ごしていた?友達とかは?」
マイラは目を見開き、表情をこわばらせた。
「・・・わからない・・・私・・・村で何をしていた・・・私は・・・誰なの・・」
ハイネはマイラの肩をそっと抱きしめた。
「ごめんね、無理な質問をして。やはりこの世界は作り込みが甘いみたい。細かい設定が無いのよ」
次にハイネは木の柵の扉の前に居る、奴隷商人の男に声をかけた。
「あなた、ちょっと話があるんだけど」
「なんだ、奴隷の分際で生意気に話だと」
いかにも悪役風で乱暴そうな外見の男だった。
「あなた奴隷商人の一味なんでしょ。あなたたちって意外に紳士的なんだね。美少女をたくさん誘拐しても誰にも手をつけていない」
「ああ、そりゃ俺たちだって出来るもんなら手をつけたいさ。あんたなんか俺の好みだしな。ガハハハッ」
男の言葉を聞いたハイネは、まだ幼く細い身体を男に摺り寄せ、耳元で囁いた。
「いいよ、あなたの好きにしても」
男が生唾を飲み込む音が聞こえた。
しかし、男は大きく咳払いをして片手でハイネを押し戻した。
「お前、小悪魔だな。俺たちがどんなに望んでも、お前らに手を出せないことを知ってるくせに」
「どうして手を出せないの」
「決まってるだろ!ここに奴隷少女を買いに来るのは勇者だからだよ。勇者は処女しか求めない。しかも奴は大人の女には欲情できないんだ」
「この世界の勇者は売られている少女を奴隷として買うわけ?ひどいものね」
「まああれだ。かわいそうな奴隷少女を解放するとか、そういう名目なんだろうな。そして解放されたお前らは、勇者様に惚れ込んで、自ら奉仕するわけなんだろ?そういうシナリオだよな」
「つまりこの奴隷市場はその勇者のためだけに開かれているんだね」
「なに当たり前のことを聞いてるんだ。勇者というのは転生者だ。この世界のすべては転生者のために存在しているんだよ。モンスターだって魔王だってそうさ、奴らは転生者に殺されるためだけに存在している。お前ら美少女キャラは転生者の性欲処理の道具さ。まあ言ってもあいつ童貞でやり方知らねえから、はあはあして勝手に果てるだけだがね」
「ふんっ・・本当にどこに行ってもサイテーの世界だね。あ~あ」
ハイネは両手を天に向けて大きく背伸びする。
いや、単に背伸びしたわけではなく、実際に身長が160cmくらいに伸びていた。
体つきももはや、か細いローティーンではなく、グラマラスな大人の女になっている。
「ああ、あんたダメだよ。勇者は大人の女が怖いんだから。あいつは子供にしか欲情しねえ・・」
「そんなキモい奴は勇者じゃない、それはただの変態オヤジ。もういい、こんな世界ぶっ壊す」
「壊すって・・・あんた、まさか・・・あんたも転生者?」
ハイネは長い脚で柵を蹴り破った。
そしてエルフの奴隷少女たちに向かって言った。
「あなたたちはもう奴隷じゃない、転生者のオモチャじゃない。さあそこから出てきなさい。そしてあなたたちの人生を作り出すの。さあ行きなさい」
エルフの少女たちがハイネの傍らを早足で通り過ぎて行く。
「ありがとう」小さくマイラの声が聞こえた。
奴隷商人の男は呆然とした表情でそれを見送るが、特に止めようとはしなかった。
エルフたちの姿が見えなくなると、男はハイネに向かって言った。
「あんたが転生者なら、この世界をどのようにしようとあんたの自由だ。しかし不思議だ。たしか転生者はひとつの世界にひとりしか居ないはずなんだが・・・」
「私はイレギュラーな存在なの。とりあえずこの世界の勇者を殺してやる。そしてNAROWの造り出したつまらない世界を破壊して、私好みの世界に作り変えるから」
その言葉を聞いて男は頷いた。
「どうぞご自由に。ところで、さっきの話はまだ有効かね?」
「さっきの話って?」
「あなたの好きにしていい・・って言ったろ」
ハイネは悪戯っぽく微笑んだ。
「あなた、大人の女とエルフの少女、どっちがいい?」
共にNAROW異世界を破壊せんとする同志たちよ、今こそ諸君の★★★★★とブクマが力となる!
強大な敵を滅ぼすために、ぜひとも諸君の力をこの禁断の書に!
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