異世界地獄変
ついに魔王を倒して俺は世界を救った。
しかしこれで世界を救うのは何度目だろうか?
忘れてしまったが・・・とにかくまたしても俺は最強で無双で無敵だった。
「マーカス様、お見事です」
そう言って児童体形エルフのミンミンがすり寄ってきた。
俺はいちばん長く旅を共にした彼女の小さな細い肩を抱き寄せる。
ミンミンはいつも甘い桃のようないい匂いがする。
辺りを見渡すと、ミンミンの他にも数十人の美少女たちに囲まれていた。
ロリ顔で巨乳、ツンデレ、悪役令嬢、小柄で貧乳、ドジな眼鏡っ子・・・いろいろなタイプのこれまで冒険とベッドを共にした美少女たちが集まって来たのだ。
「マーカス様、時が来ました」
ミンミンが言った。そう、時が来たのだ。
俺のこの世界での寿命は30年。それがいま尽きようとしている。
俺はミンミンの膝を枕に天を仰いだ。
よく晴れた青空には白い雲が浮かび、木漏れ日が優しく俺を包みこむ。
爽やかな森の香りを含むそよ風が肌に心地よい。ああ、この世界は美しい。
あるときは派手な戦闘を繰り返し、あるときはスローライフを楽しみ、モンスターや武器に転生したこともあったな。そして美少女キャラたちとのめくるめく愛の日々。
「ミンミン、そしてみんなありがとう。この世界に来て30年。長いようで短かったけど愛と冒険と魔法の旅、本当に楽しくて充実した人生だった。俺にもう悔いは無いよ。愛する君たちに見守られて眠れるのなら」
「ふざんけじゃねえよ、このキモオタ」
・・・え?これはミンミンの声?
「何が愛だ?売られていた少女エルフを買って慰み者にしただけじゃねえか、このロリコンが。リアルじゃ童貞だから女の口説き方ひとつ知らねんだよな」
「モンスターに襲われている少女を助けたら、ありがとうございます抱いて!ってか。妄想にしても貧困過ぎるだろ。いい歳したおっさんが」
「だいたいキモいのよ。自分をアニメの美少年キャラみたいにイメージしてるけどさ、ほんとうはデブで脂まみれの無職中年じゃない」
「ああもう、わたくし、生理的に無理でしたわ。こんな臭いデブおやじにはあはあされるなんて。いくらプログラムとはいえこの世界を呪いました」
「喧嘩のひとつも出来る度胸なんか無い癖に、自分は安全設定で好き勝手にモンスター殺して略奪して、何が無双で俺TUEEEだパラサイトおやじ」
他の少女たちも口々に俺を罵り始めた。いったい何が起こっているのだ?
「あんたがこの世界で犯した罪の数を数えなさい。そして思い出すのよ、どうしてあんたがこの世界にやって来たのか」
気が付くと俺は手足を縛られ裸で仰向けに転がされていた。
俺の身体はもはや美少年勇者のものではなく、ぶよぶよにたるんだ醜い腹を持つ中年男だった。
「あんたは今から内臓を摘出されるの。クソほどの価値も無いあんたの人生で、初めてあんたは他人の命を救うのよ。どう思いだした?」
遠い記憶が蘇って来た。
高校生活に馴染めず不登校になって以来、俺は自室に引きこもり30年以上、ひたすらゲームとアニメとラノベに耽っていた。
働いていないので当然収入は無い。両親の年金で食わせてもらっていたのだ。
しかしやがて母が死に、それを追うように父も死んだ。頼りの年金はもう無い。
「そんなあんたに手を差し伸べたのは政府の休眠人材活用局よ。30年分の夢と引き換えにあんたの内臓を頂くの。リアル世界での時間はほんの3日ほどなんだけどね」
・・・しかし、それじゃあ!!
「しかしそれじゃ約束が違うぞミンミン。俺はこの世界で勇者のまま夢見るように死ねるんじゃなかったのか」
ミンミンはそのかわいらしい顔を俺の顔に近づけて、にっこりと笑顔を見せた。
甘い桃のようないい匂いがした。
「私が嫌でしたのマーカス様。あなたを安らかに死なせたりはしませんわ。あと3秒で現実世界で目が覚めます」
周りを取り囲む美少女たちの姿もこの世界の風景もゆっくりと歪み始めていた。
「目が覚めたら手術台の上。もう開腹が始まっていますわ・・もちろん麻酔無しで♪」
共にNAROW異世界を破壊せんとする同志たちよ、今こそ諸君の★★★★★とブクマが力となる!
強大な敵を滅ぼすために、ぜひとも諸君の力をこの禁断の書に!
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