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第6話

 身体を起き上がらせて、真面目顔で俺は訊ねてみた。


「自分で言うのもなんですけど、俺ってそこそこイケてると思いませんか?」

「その自信がどこから来るかは分からないけど、ブサイクでもなければイケてるわけでもないと思うよ。THE普通だね」

「フツメン代表とは俺のことか」

「でも、お洒落に目覚めたらもう少しかっこよくなると思うけどね。肉体改造とか、その伸び切った髪型とかを変えるとか?」


「自分を飾りたくないんです。自分を偽りたくない」


「はい。もうその時点で負け組の発想だよねー」


 Nさんの説明が始まった。人生の先輩からの助言だ。


「キミはモテたいと思ったことはあるかー?」

「なんですか。その1、2、3だぁーみたいなノリは」

「キミはモテたいと思ったことはあるかー?」


 そのノリをやれってことかよ。


「だぁー!!!!」

「……………………」

「あの普通にスルーするのやめてもらってもいいですか?」

「いや、ちょっと面白かったら放置してみた」

「軽いノリで放置するなぁ! それと某動画サイトの『〇〇やってみた』ノリで言うなよぉ!」

「でもさーモテたいのに自分自身を変えないってダメじゃない? 成績上げたいのに、勉強しないと同義だよ!」

「たしかにそれは言えてますね。でも恋愛って頑張るものじゃないと思うんですよ。運命って言うんですか。時が来れば、この人だって分かるみたいな。そんな感じだと思うんですよ」

「キミさ、童貞でしょ?」

「ドドドドど、童貞じゃないですよ。数回の経験はありますよー。あはは、もう高校生ですよー? 小学生で童貞卒業するのが当たり前の世の中で何を言っているんですかー、あはは」


「完全なる童貞だね。あと、ネットの情報に惑わされすぎだよ。友達がいないから騙されるんだ。現実を知りなさい」

「何を言っているんですか。ネットの方が現実に近しいんじゃないですか。匿名だからこそ、誹謗中傷が幾らでも書き込むことができるし。これぞ、人間って感じがしますけどね」


「一理あるかも」


 それなら、とNさんは不敵な笑みを浮かべて言った。


「今からキスしよっか? 大人の遊びを教えてあげるよ」

「………………」


 【朗報】俺氏童貞非モテの民。謎の巨乳美人に詰め寄られて「キスしよっか?」と言われた結果——。


 無事撃沈。ごめんなさい。俺、童貞だから太刀打ちできず。


「結局のところ無理なんだよ。現実には勝てない」


 言い切った後、彼女は清々しい表情でさらに言った。


「どうして照れちゃったの? ネットの方が現実に近しいんじゃなかったのかなぁー?」

「それはですねー。人間の深層心理というのは、ネットの方が強く見られるという意味でですねー。あのー恋心というのは、そもそもただのバグでありまして」

「あのさ……言っていることが支離滅裂だよ。最初から童貞臭いと思っていたんだよねー」

「童貞臭いと言うなぁ!! 童貞だけど臭くはないわ!」


 言った後に、あ……しまったと思った。

 何を俺は自分の女性経験皆無を語っているのか。


 Nさんはニタニタ顔で見つめてきて、小馬鹿にするように、人差し指で、俺のほっぺたをプニプニと触ってくる。


「可愛いなぁー本当キミは。Cくん。いいや、チェリーくん」


「あの触らないでください。一応これって犯罪ですからね。十八歳未満との行為は禁止されてるんですよ」


「と言ってる割には、満更でもない表情みたいだけど」

「ち、違いますよ。ただ……人肌が恋しかっただけです」

「それなら……膝枕してあげよっか? 気持ちいいと思うけどなー。大人の女性を侍らせて、朝から膝枕。良いご身分だなと」

「嬉しい提案ですが、遠慮しておきます。というか……お姉さんって、わざわざ文化祭に来たのに……このままここにいていいんですかー? 見て回った方がいいですよ。俺みたいな相手をするよりも」

「キミと喋っていたら、学生時代を思い出すんだよ。だからさ、もっと喋っていたいなぁーと思うんだけど……」

「俺は、大人の意見を尊重する若者ですよ。好きなだけ、満足してください。俺で良ければ」


 俺の返答を聞き、彼女は満面の笑みを浮かべた。

 その笑顔を見るだけで、俺の心は左右に揺れ動く。


 だから美人は嫌いなんだよ。

 本気で惚れちまったら責任取ってくれるのかよ。

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