王都での陰謀 16
久しぶりの投稿です。
「何か問題でも?」
「いや、なに。この豪天丸の盆栽ですが、買い取り額が、大金貨400枚程度になります。なので、こちらを返還されても、全額返済には到底足りませんので、フィエルルシエ王女を奴隷として売るしかありませんな。もしくはこのまま払い続けるかですが、どうします?」
何を言ってやがる。
「大金貨400枚ですか? これより二回り小さい盆栽が他の商会では、大金貨800枚程度の値が付いていましたよ?!」
「どこの商会ですかな? そんな馬鹿な鑑定をする者は? 商業組合の方に報告せねばなりませんな。これでは公平な商売が成り立たなくなってしまう」
両手を開き大げさに首を横に振るバクス。
「ちなみにその商業組合の長は何方なのですか?」
「え? お知りになられません? 不肖、この私めが、させていただいておりますが?」
じゃあ、商売に関してはバスクの思うがままじゃないか? これはどう言ってもフィルが欲しいんだろう。
こうなっては仕方がない。
「バスク殿」
「何ですかな、従者殿」
「では、この盆栽、国外の商人に売り払う事にいたします。そうすれば借金の一つや二つ返せるでしょう?
「な!? なんですと! これを国外に持ち出すと言うのですか!?」
「そうですけど? それが何か?」
えらく慌てはじめたぞ?
「この盆栽の価値はこの国でなければ正しく評価は出来ぬ! これを探すのにどれだけの時間と手間暇が掛かったと思っているんだ!」
そんな事いってもね?
「仕方ないじゃないですか? 王家の借金を返さないとフィルが奴隷契約しないといけないのでしょ? なら少しでも多く金を出してくれるところに売って借金返済に当てなきゃいけないでしょ?」
「い、いや! この盆栽を貸し出すときに、国王には転売はしないよう言っておったはずだ!」
「ほう、それは本当ですか?」
「本当だとも!」
少し息が荒いな? 慌て具合が手に取るように判る。
「盆栽を貸し出す? ですか?」
「あ?! い、いや、売ってだな、いやそんな事はどうでもいい! あれはとても貴重なのだ! 国外に持ち出すなんてもってのほかだ!」
「別にいいじゃないですか? 借金とはいえ今は王家の物なんですから、王家が勝手にどうこうしようが問題無いはずですよ?」
「えええい! 小娘が! こうなったら力ずくで!」
「力ずくでどうするんですか?」
「何やらもめておる様じゃの?」
僕と、バクス氏が言い合っているところに、やたらと露出の多いお姉さんが入ってきた。
「あなたはどなたでしょうか?」
「われか? われは、われじゃよ」
何かの頓知か? このお姉さん色気が半端ないな。フィルやパルティナさんはその妖艶な姿に当てられて直視できてないし、アマネにいたっては敵意丸出しになっている。
「そこの刀を持ったお嬢ちゃん、そんな物で我がどうにかなると思わないでもらいたいものじゃ」
「ふん! そんな下品な色気をマコト様に向けないでください。へんな匂いがマコト様に付くじゃないですか」
「なんじゃと?」
「なんですか?」
おいおい! アマネ自重、自重!
「バスク! なんじゃこの礼儀知らずのお嬢ちゃんたちは!?」
「そ、そいつらは、わしに借りた借金を踏み倒そうとする悪徳王家の者だ!」
「なんじゃと? どうにも胡散臭そうな顔していると思ったのじゃが、そんな子悪党だったとはのぉ?」
「な!? 何馬鹿な事を! 無理やりお父様に借金をさせたくせに!」
フィル王女が、バスクの勝手な言い分に腹を立て反論する。
「何を行っておる! ここに証文もある! どこに無理やりした形跡が有るっていうんだ!」
「ふむ、この男も真面というわけじゃなさそうだが、一応証文も本物みたいじゃの? これを踏み倒そうだなんて、お主等、案外にあくどいのぉ」
その女性は、考えるそぶりを見せながら僕の方をジッと見つめてきた。
「お主がこのグループのリーダーじゃな?」
え? リーダーって当然フィル王女じゃないの?
そう思ってフィルの方を見ると、首を横に振って、僕ですと指さしてきた。
「一応、ここの店主もそれなりに悪どい事をしておるだろうが、借金を踏み倒そうとする様な物に容赦する必要もなかろう。さっさと借金を返すか、それに代わる物を差し出せばよかろう?」
「その、変わりがこの子なんだよ。人を物の様に考える奴に正当な言い分が通る方がおかしいんだよ!」
「それがどうしたと言うのだ? 負けは負け、どんな手でも勝つ方が正義じゃ。負けた方が悪い」
この女、頭が筋肉で出来てるんじゃないのか? 考えが弱肉強食だぞ?
「そこな、子供よ、これ以上たてつくなら、ちょっとは痛い目に会ってもらうだけじゃが、いいかの?」
それを聞いたアマネが、戦闘体勢になっていた。
こんな狭いところで。暴れられたら建物の弁償でまた請求しかねられないぞ?
「ちょっと両者共、喧嘩しないで!」
僕、絡みとなると、アマネも見境がなくなるからな。
「とにかくちょっと落ち着いてお話しましょう」
そう言って僕はフードをとって顔を見せた。
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