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王都での陰謀 15

「な! なんだ! これは豪天丸じゃないか!」

「豪天丸?」

「この盆栽の名じゃ! これは樹齢800年物の豪松という品種の超希少盆栽なのじゃ! それをこんな無造作に! なんと無知なことか!」


そんな事言われても、僕達にとってはただの木だもの。樹齢800年と言うのはちょっと凄いと思うけど、それが? て感じだよ?


「お父様は、この盆栽がどうしても欲しくて、私を担保にしてこれを手に入れたと聞きましたが本当なのですか?」


フィル王女がバクス氏を睨みつけている。


「な! あやつ、話したのか?!」

「本当なのですね? まったくお父様といい、バスク様といい、女の子をなんだと思っているのですか? こんな木を売り買いするのに私を、担保にするなんて、これでは人身売買ではありませんか」

「そ、それがどうしたと言うのだ! 人身売買は違法ならお咎めもあるが、借金のかたや、返済能力が無くなった者を売買し奴隷化するのは合法となっているだろうが!」

「そうなの?」


僕は小声でフィル王女に尋ねてみた。


「ええ、まあ借金返済が出来ない事は犯罪ですので、刑罰の一つとして売買や奴隷化は合法となっています。けれどそれは本人の了解を得ての話です。証文でもなければ成立しません。どちらにしても、この盆栽を買い取っていただき、借金の返済をしていただければ何の問題もありません」


バスク氏に対して言い切るフィル王女。

それを受けて、黙り込むバクス氏。しかしその表情は別段変わった感じは見えない。それどころか含み笑いをしている?


「ふ、その様なこと商人である私が知らない訳があるまい? ちゃんとここに証文はあるぞ? 内容を確認してみるんだな」


そう言って、バクス氏が座る椅子の横に置かれていたワゴンに黒光りする木の箱を持ち出し、テーブルの上に置くと、フィル王女に向けて箱の蓋を開けて見せた。


「これ、この通り、証文には、フィル王女のサインも入っているぞ?」

「ま、まさか! 私がそのような証文にサインするわけが!」

「お、おちついてフィル王女様! 僕が確認する! バクス様これを手に持っても宜しいですか?」

「ほお、なんと可愛らしい声の方だ。お嬢さんはフィル王女の侍女か何かですかな?」


僕の声を聞いただけなのに、何故かニタニタした笑いを顔に張り付けて僕を見つめて来た。

フードで顔を隠しているのに、こいつ変な嗅覚がありそうだな?


「ぼ、僕はフィル王女に頼まれて、借金返済の立ち合いの手助けをしに来ただけです」

「そうか・・・ふふ」


き、気持ち悪い!! なんだ、この視線は!? まるで着ている服でも溶かしそうないやらしさだぞ?

お、落ち着け自分!


「しょ、証文お借りします!」


僕は、その視線をなるべく見ないようにしながら、箱からその証文を手に取ってみた。


「どう? 分かる?」


僕は、誰にも聞かれないような小さな声で、外套の下、僕の胸中に隠れている、ルリに証文を見てもらった。


「お母さま、これは血判証文ですね。魔法効果でその対象者の血を使って、効力を発揮するものです・・・・・うん、この赤い印が魔法印で確かにフィル王女の血が使われているみたい。ただかなり劣化したものを使っているせいか、効力は発動しません。でも証文としては成立しますから、法的には有効だと思います」


ルリが一通り確認できたことを僕に教えてくれた。


「つまり、この血は、フィルの血を何らかの形で手に入れたか、保管していたかで、それを証文に使用したと?」

「はい、間違いないですね」


そうか、後はこの証文の内容だけど・・・えっと、


【宣誓文、この血判を交わした私達はこの証文に書かれた以下の約定は違える事は許されぬものであると認識する。

借用日:エルデリード新暦231年4月1日 

借用金:大金貨1000枚

月返済額:大金貨18枚(利息分含む)

返済期間:5年(60回)


以上の返済計画で了承したものとする。

但し、この返済が滞り返済能力が無いと認められた場合、豪天丸か、フィエルルシエ・ブルーフェルド王女を担保とし、返済残への充当とする】


う~ん、それらしく書いてあるな。

けれどこれで見る限り、盆栽を返せば問題ないようだな。


「確かに証文は確認いたしました。血判は有効のようですが、少し使用された血が劣化していた様で、魔法効果が完全ではないようですね?」

「あたりまえだ? 1年前の血判だぞ? 劣化もしよう?」

「いえ、これを交わした時点で劣化していたのではと・・」

「そんな事何故分かる? それをどう証明するのだ?」


やはり予想通りの言い分だな。まぁ実際証明できるものはないからな。

「失礼いたしました。それよりこの内容ですと、盆栽を返還すれば良いとなっていますので、こちらの盆栽をお返して、借金完済としていただけますね?」

「は? 何を言っておるのだ?」

「え?」


僕は、バクス氏の返答に、一抹の不安を感じた。返還すれば問題ないはずだぞ? それにこの1年間は返しているとフィルからも聞いているし、なんだっていうんだ?


読んでいただきありがとうございます。

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