少し戻って、あの世から 2
投稿いたしました。
「会えるぞ?」
「・・・へ?」
「だから、その楓とかいう女の子とじゃよ。誠君が向かう世界、エルデリードに彼女は先に転生しておるよ?」
え? え?! 楓ちゃんが? 転生? 会えるの?
いやいやいや! つまり彼女の亡くなっているっていう事じゃないか!
「彼女、楓ちゃん! 亡くなったんですか?!」
僕は、神様に詰め寄りその胸座を掴もうとしたが、手が無かった事を忘れていたので、神様を素通りしてしまった。
!? やっぱり僕って死んだんだ。こんな体験すると改めて認識してしまう。それに楓ちゃんが亡くなっていたなんて、ちょっと落ち込んでしまうな。
小さい頃から、お隣同士のいわゆる幼馴染の関係で、良く一緒に遊んだんだ。
でも楓ちゃんは体が弱くて、病院に居る時の方が多かった。
そんな時、僕が小学6年生の時、親の仕事の関係で外国に行くことになり、それ以来、会う事が無かったんだ。そして高校生になったのを理由に、僕だけ日本に戻ってきたんだ。
楓ちゃんに会う為に。
それなのに、亡くなっていたなんて・・・・・
「何を、落ち込んでおるのじゃ?」
神様が無神経に聞いてきたのに、腹がたったんだろう。きつい視線で神様を睨んでしまっていた。
「何って! 楓ちゃん、死んでしまったんですよ! 悲しむのは当たり前じゃないですか?!」
「だから、誠君も死んでおるのじゃよ?」
「・・・ん? あれ?」
つまり、どういう事だ?
僕も、死んでいて転生する。楓ちゃんも死んでしまって転生する。その転生先が同じ世界?
・・・悲しむ要素が無い・・・
「でも、お母さんやお姉ちゃん達、楓ちゃんのお母さん達は悲しむだろな」
「そればかりは、神であるわしでも、どうにもならんからの。すまんのう。」
「あ、いえ。お母さん達に悲しい思いをさせてしまうのは辛いですけど、お姉ちゃん達も居ますし、なんとか時間が解決してくれると思いますから」
それより、楓ちゃんの事だよ!
「本当に、楓ちゃん転生しているんですね?」
「ああ、本当じゃよ。このわしが直々に転生の手続きをしたからの。その時点で誠君の神昇格はほぼ決定しておったので、幼馴染の彼女には、君が何年か、何十年か先に転生してくることを、話しておいたのじゃよ。彼女喜んでおったぞ」
「そうか、楓ちゃんとまた会えるのか・・」
「いや、直ぐに会えるかは分からんぞ? なにせ個人がどこにいるのかなんて、その世界の神でさえ把握しきれていないのでな。自分で探し出すしかないのじゃ。エルデリード世界のどこかに居るのは確かなのじゃから、後は誠君の努力しだいかの」
そんなのは問題ないよ。同じ世界に居るなら探せばいい。
僕は、どうも神様に転生するらしいからね。それを存分に発揮して直ぐに探し出すぞ!
「直ぐは、無理じゃろうな」
「それはどうしてですか!」
「それはじゃな、神といってもまだ幼生体の状態で降臨する為に、神としての力の全てを、直ぐに使えるわけではないのじゃよ」
「そうなんですか。じゃあ何故、幼生体なんですか? 最初から成体では駄目なのですか?」
「それは、さっきの話と近いのじゃが、誠君の魂をもし成体の神に転生させたら、その成体の力に魂が耐えきれず、跡形もなく消えてしまうのじゃよ」
「恐ろしいですね・・」
「幼体として降臨し、地上世界でその地の法、まあ魔法や神聖術の事じゃがな、それを知り体と魂を成長させていく必要があるのじゃよ」
結構、制約があるんだな。とは言っても、幼生体とはいえ一応、神様なんだし、なんとか頑張って、修練しながら楓ちゃんを探し出そう! あれ? いつの間にか神様になる前提で話していた。楓ちゃんに会うためなら、受け入れるしかないか?
「それでは、転生の準備をしても良いかの?」
神様の言葉に僕は、頷く。
「それでは、こちらに来てもらおうか」
そう言って手を差し伸べた方に視線を移すと、さっきまでは無かった、大きな物体が現れていた。
それは、人一人程の大きさで、一番イメージに近いのは棺かな? でもそれは陶器でも金属でも無さそうな、白い物で作られており、細長い楕円状になっていた。さらにその表面には、赤や金、銀色の線で何かの文字や模様がびっしりと描き込まれ、その物体にはいくつものコードや紐の様な物が繋がれ、その直ぐ横にある、水晶や宝石の様な光点滅する石が幾つも嵌め込まれている何かの機械に繋がれている。
如何にも、小説とかに出てくる何かが封印とか保存とかされていそうな装置だ。
「その中に、僕の転生する体があるのですか?」
「そうじゃ、この体はわしら神の体の細胞から培養して生み出したものでな、なんとあの創造神様の体の一部も使わせていただいておるからの、相当に頑丈にできているはずじゃ」
何か、夏休みの工作の宿題で凄いものを作った小学生みたいな顔をして自慢する神様。相当に頑丈なんだろうか?
でも頑丈ってどれだけ頑丈なんだろうか?
「さて、誠君、こちら側の魔晶石の前まで来てくれんかの?」
神様が手招きする先には、先程の神の幼体が保存されている棺の様な物体を装置で挟んだ反対側に、1メートル程の棒の先に青い拳大の大きさの石が乗る何かの器具があった。それもその装置と配線で繋がれている。
「この魔晶石に手を添える感じでイメージしてくれるかの」
僕は神様の言う通りに、右手をその魔晶石と呼ばれる青い石の上にそっと手をかざした。
すると、その魔晶石が淡く光りだし明滅し始める。それが暫く続いたかと思ったら、その明滅が早くなりだし、それと共に僕の体というか、魂なのかな? それそのものが魔晶石へと少しずつ吸い込まれていく感覚に襲われ始めた。
読んでいただきありがとうございます。