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王都での陰謀 10



「大変です! ブルルロエ様!」

「何事だ?」


執務室で諸々の資料に目を通していたブルルロエ・バスクに、店員の男の大声が届いたと感じたその次に、執務室の扉が勢いよく開いた。


「申し上げます! ブルルロエ様大変でございます!!」

「なんじゃ! 騒々しい! だいたいまずノックをしてから入らんか!」

「も、申し訳ありません! しかし、早くお知らせしなければと焦りまして!」


店員の男は、バスク商会では古株で、店の運営をある程度任せている程の男が、相当に慌てている事に、ブルルロエも不思議だった。


「どうしたと言うのだ、思えがそこまで慌てて、何があったというのだ?!」

「そ、それが・・・」


その男性は、どう話していいものか思案している様で、なかなか切り出せないでいた。


「え~い! もういいわ! わしが店に出る!」


業を煮やしたブルルロエは、足早に部屋を出ると、店へと向かった。


「ブ、ブルルロエ様!」

「いったいどうしたと言うのじゃ!」

「それが、店先に、バ、バルロナ様が・・」

「はぁ?」


ブルルロエは、商会の建物を出て、王都でも一番大きな大通りへと出た。

この王都でも、1,2を争う大商会のバスク商会であるので、一番の人通りがあるこの大通りに面して商会が建てられていた。

だから、この光景を朝早いといえど、多くの人が目にしていた。


「な、なんじゃ! バルロナ! 何をしておる!?」


ブルルロエは自分の目を疑った。

そこには、美しい着物を少しはだけながら着こなす、見目麗しい女性が澄ました顔でこちらを伺っていた。ただそれだけなら、少し変わった服を着こなす絶世の美女として目を引く程度なのだが、問題はその足元にいた自分の息子の醜態だった。

なんと、着ているものはパンツ1枚しかない状態で四つん這いになり、その女性の足に犬っころの様に、纏わりついていたのだ。


「止めんか貴様! そんな醜態を人前にさらしよって!」


激怒するブルルロエ。それも当然だ。王都で有名なバスク商会。その知名度と共にブルルロエを知らない者は居ない程に、この息子バルロナの顔も皆が知っているからだ。

ただ、この息子の知名度は、商会の跡取りというだけではなく、良くない噂でも有名であまり評判は良くなったのだ。それがこんな醜態で公衆の面前でいれば、その知名度は悪な程高まるというもの。それがどれだけ商会にとって痛手なのか、馬鹿な息子でもわかるはずなのだが。


「そこの女! バルロナに何をした! 気様がバルロナの気を狂わしたのか! 貴さま魔女か!」


大通りを行き交う人々の視線が一瞬で全てブルルロエの方に向けられた。それは、ブルルロエが放った魔女という言葉に皆が注目したからだ。

魔女。それはこの世界から神がいなくなってから勢力を拡大してきた悪魔で女性の形態をしている物の総称だ。

最近は、5大高位種族によって悪魔の行動もかなり抑えられているので、それほど多くの目撃は聞かれていなかったが、時折姿を見せるその悪に人々は恐怖心を持っているのだ。

そんな者の名前が上がり、それに似合ったような姿をしている女がいるとなれば、騒然とするのも必然だった。


「ま、魔女?」

「お、おい! 王都の警備隊を呼んだ方が良いんじゃねぇのか!?」

「あ、あれが?」

「こ、殺される・・」


その騒めきに、その女性は別に気にするわけでもなく、ブルルロエの方を見つめていた。


「そち、我を魔女と言うたのか?」

「そ、そうじゃ! わしの息子をそのような状態にする者など悪魔ぐらいしかおらん!」

「ほぉ、それはちと違うと思うがの? この男、我をいかがわしい宿屋に連れ込んでいきなりこの様な恰好になっての、か弱い我を縛り上げとても口では言えないような羞恥を、幾度となくされてしもうたのじゃ」


およよ、と儚げにわざと見せながらその場に座り込む女性。

裾が乱れ、綺麗な太ももが露わになり、行き交う男性の目を釘付けにした。もちろん女性からは軽蔑の眼差しと、所々で殴られる男性の姿があったが。

そんな、倒れた女性に、バルロナはそれこそ発情期の様な犬の様にむさぼりつき、露わになった太ももを舐めようとする。


「あん! 止めてえぇぇ! 犯される~!」


とにかくワザとらしかった。女性の言葉からは恐怖心が全く感じられない。それどころかブルルロエの方を見ながら余裕の笑みを見せている。


読んでいただきありがとうございます。

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