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王都での陰謀 4

投稿いたします。


「ここが、王都の中心、フィエルルシエ王女様が住んでおられる、お城ですか?」

「え、ええ、まあ住んでいるといえば住んでいますけど・・」


歯切れの悪い返答が気になった。


「まさか、5大新興宗教団体にお城を追い出された、とかですか?」

「い、いえ、ちゃんとお城・・の辺りで住んでいます。公務もちゃんとしておりますよ?」

「そ、そうですか。安心しました」

「では、ご案内いたしますので、私に付いて来ていただけますか?」

「お願いします」


僕は、王女がこの地に招いた理由、エルデリード神教の復活を望む王国の意向を聞くため、ブルーフェルド王との謁見を了承した。

そこで僕は、王女に連れられて、お城までやって来たというわけだ。


「開門! フィエルルシエ王女様のご帰還である!」


パルティナさんが、お城の正門にあたる正面入り口。そこの前には、防御用のお堀に架けられた橋の手前で、正門の前で警備をしている騎士にむかって、大声を張り上げた。


それにしても、王女の帰還なのに、従者が大きな声を出して気付かせないといけないというのもどうかと思うんだけど・・・・


「あ、姫様だ。門を開けてあげろ」


石造りの大きな城壁に、人の5倍くらいはありそうな正門の扉があり、その上で見張り番をしている兵士の声で、ギギギギという金属や木の擦れる不快な音と共に上がっていく。


「姫様、お帰りなさい。ご無事で何よりです」

「ありがとう、ペネロ。あなたが、そう言えるという事は大臣は留守のようね」

「はい! カルガナル大臣は赤竜帝教団との会合に出席するために、今日は一日留守にされてますよ」


やけに気さくな感じで話す王女と門兵。でも親近感あって悪い気はしないな。でも、その話し方、という事は、カルガナル大臣が居る、居ないで言葉使いが変わるんだろうか?


「フィエルルシエ王女様?」

「何でしょう? マコト様」

「いえ、その大臣とは一体どんな方なのですか?」

「そうですね。マコト様には知っておいてもらった方がよろしいですね。大臣、カルガナルは、5大新興宗教団体の中の赤竜帝教団の中で、大司教兼、我がブルーフェルド王国の大臣を務める男です。

そして、我が父サルダナリウス・ブルーフェルド王の弟でもあります」


あぁ、良くあるお家騒動という事か。それを教団が利用したのか、利用されたのか? 


「それだと、姪である王女様を奴隷に陥れようとする事に協力しているっていうの?」

「さあ、この件で叔父であるカルガナル大臣が関わっているかどうかは分かりませんが、王宮や国で使用される必要品や穀物などの仕入れは、バクス商会が一手に取り扱っていますし、それを認めたのは叔父である事は間違いありません」


はぁ、難しい話だな。身内の御家騒動なんて外部から色々調べても、結局は身内内で解決しないと、外部からは難しいと僕は思うんだよね。


王女様は助けてあげたいけど、実際は無理そうな気がしてきた


「ペネロ、王はどこにおられるか知っています?」

「ええ、今はご自宅で公務をされていると思いますよ?」

「ありがとう」


お礼を行って、お城の方に入って行こうとする。


「マコト様、どうぞこちらへ。私が案内いたしますので」

「う、うん。お願いするよ」


僕達は、大きな門をくぐり抜け、お城の内部へと入っていった。


「凄い。綺麗に手入れされていますね」


最初に、ラーナさんが門から続く王宮までの広いスペースに整然と作られた中庭に声をあげた。

門から真っ直ぐに一本の通路がかなり先にある王宮の入り口まで続きその両側を左右対称に庭園が造られ、色とりどりの花や青く茂る木々に、所々に流れる水路からの水の反射で、キラキラと輝き、それがいっそう庭園の華やかさを演出していた。


「マコトお母さま。ここの木々は凄く丁寧に育てられていますが、ちょっと無理やりに植えられているのと、肥料のやりすぎで根が腐りそうになっています」


悲しそうに話すルリ。

見た目は色とりどりの花が咲き、緑もとても綺麗で艶があるのだけど、ルリにはその木々の言葉というか訴えてくるものが分かるんだろう。


「王女様、ルリがそう言っているってことは本当のことだと思うのだけど、どうなんだろう?」

「・・・・そうですね。ここの庭木は元々、エルデリード神の加護を受けていて、草花や木々が枯れることなく育っていたのですが、神が居られなくなってからは、加護の力も失い、冬の季節はさすがに花や実をつけることはなかったと聞きます。ところが5大宗教の赤竜帝様の教会ができ、信者が増え始めた頃、またこの庭に冬でも花が咲き、実がなるようになったと言い伝えでは聞き及んでおります」


王女の話を聞き、考えていたルリが僕を見つめて、首を横に振った。


「ここの花々は、加護とかそういった力で守られている訳でないです。過剰な肥料をやり、腐りかけた者は人知れずに植え替えられているみたい。草木が怯えているもの」


より一層に悲しみを深くするルリを見て、僕も寂しい思いに駆られてしまう。


「ここの手入れは誰が指導しているの?」

「は、はい、大臣が直接指導し、大臣が頼んだ業者が手入れを直接しているはずです」

「それは昔から?」

「そうですね。この体勢になったのは100年前くらいからでしょうか? 私の3代前くらいからですし、その頃には王家は飾りで実務は大臣、それも赤竜帝の教団幹部だった者が代々執り行っています」

「つまり、エルデリード神と同じように赤竜帝も神として同じ力を持っていると示したい、ということなのか?」


僕の回答にルリが頷く。


「なんて、卑怯なやり方なんでしょう! こういう輩にはマコト様の天罰が必要です」


と、張り切るアマネ。

でも、まだ僕って天罰とか与えられるような気がしないし、そんなのどうやってやるのか分からないよ?

でも、ルリが悲しい顔しているのは見捨てておけないよね。


「わかった。僕に何が出来るか分からないけど、ここの草木や花々だけでも助けてあげよう」

「うん! お母さまありがとう!!」


うん、やっぱりルリも笑っている方が良いね。


「先ずは、王様にあってからだね」


そうして僕ら長い通路をひたすら歩いていく。


「それにしても長い通路だね? どれくらいあるんだろ?」

「さあ、私どもも測ったことはありませんので」

「そうなんだ?」


こうして話しながら王宮に向かって歩いているのに、まだ半分くらいの所だから、結構な長さだよね?

それから暫く歩いて、ようやく王宮への入り口前に辿り着いた。


「それでは、こちらへ」


そう言って王女は、王宮へ入らず左側へ続く通路へと歩き出した。


「え? 王宮に入るんじゃないの?」

「あ、いえ。今、王宮は大臣とその家族が住んでいまして、王家は別邸で暮らしておりますので」

「そ、そうなんだ」


それからまた暫く歩き続ける事になった。

王宮の横を歩き、いくつかの庭を通り、従者達が住む長屋を抜け、王宮騎士の練兵場を横切り、小さな門をくぐったその先に、それはあった。


「王家の館?」


と木の板に書かれた看板というか、表札というかそれが掛かった、小さな門が僕達を迎えていた。


「と、言うより! ここ王宮の外じゃないの?!」

「え。ええ、まあ厳密に言うとそうですね」


結局、僕達は王宮の中を縦断し裏側の通用門から城壁の外へとでて、その直ぐ向かいにある、王家の館と書かれた、細い原木で組み立てた、小さな門の前に立っていた。


「一応ですね、この裏は魔獣の森が私達の館を囲うように生い茂っていますので、天然の要害となっていますので、下手に人間関係で問題がある、王宮内よりも安全ですので。それにパルティナも住み込みで働いてもらってますし、案外に住み心地は良いのですよ?」


実際、王女の言葉に嘘はなさそうだし、本当に気に入っているのかもしれない。けど腐っても王家だよ? 国民から何か言われるんじゃないの?


「でも、大丈夫なの? 仮にも王家がこんな仕打ちと知ったら、決起する人も居るんじゃない?」

「その辺は問題ないです。もともとこの裏に広がる森は、神聖な森でして、エルデリード神様が御隠れになられてから魔獣の住む森に変わってしまったのですが元々エルデリード神を祀る古い祠がありますので、この場を離れるわけにはいかないのです」

「でも、今はいないのでしょ? 守り続ける意味は無いのでは?」

「ですので、その事を含めてマコト様にお願いがあり、ここまでご足労願ったのです」


王女はそう言って、改めて姿勢を正し、大きくお辞儀をしてきた。

それに合わせパルティナさんも頭を下げてきた。


「・・・分かりました。僕に何が出来るのか知りませんがお話を伺います」


そう答える。しかないよね? この場合。


「では、王がマコト様を待っておりますので、そちらでお話しの続きをさせていただきます」

「はい」

「では、こちらへ」


王女の招待を受けて、僕達は、王家の館という名の質素なつくりの邸宅へと入っていった」


感想等、お待ちしております。

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