王都での陰謀 2
投稿いたします。
ラーナがやりてです。
「それでは、お貸ししていた馬車の点検をいたしますので暫くお待ちください」
3人は、いくつかの馬車が留まっている小屋の中で、自分達が使用していた馬車の前に立ち検査の様子を見つめていた。
まず、バクスが馬車の前に立つ2人の作業員だろうか? その男達に何やら支持を出すと、その作業員達は、手慣れた具合でそれぞれ馬車の部位を確認し始め出した。
「入念にチェックしろ。盗賊に襲われたそうだからな」
バクスの指示が飛ぶ。
その声に作業員達の動きがさらに機敏になる。徹底的に各部位を嘗め回すように入念にチェックしている。
「・・・・・・・・・どうだ?」
「「いえ、それが・・」
バクスが問い合わせた作業員が、申し訳なさそうに首を横に振ると、もう一人の作業員も首を横に振っていた。
「ど、どういうことだ?!」
何やら慌てだした、バクスだったが、それから時間が過ぎるばかりで、一向に作業員のチェックが終わる気配がない状態が続いた。
「バクス様、どうでしたか?」
ラーナが、馬車の前で呆然と立ち尽くしているバクスに問いかける。
「え? ああ、その、ですな、王女殿下のお話では、王都に帰還される時に盗賊団に襲われたとお聞きしましたが・戦闘はなかったのですか?
「戦闘ですか? いえ、ありましたよ? そのおかげで盗賊団を捕まえる事が出来たのですから」
「つ、捕まえた? あ、あの集団を、ですか?!」
「はい。今頃は王都警備隊で尋問されているころでしょうか?」
「さ、さようですか・・・」
明らかに顔色が悪いバクスは、王女とラーナから離れ、作業員達の方に駆け寄り何やら小言を言っているようだ。
あの集団ですか、やはり、この男も噛んいたようですね。マコト様の言う通りでした。
ラーナは、心の中で、バクスの表情の変化にマコトが予想していたことが正解だったことを確認していた。
一方、バクスの方は・・・
「おい! これは一体どういう事だ! 傷一つないだと?!」
「は、はい。あらかじめ壊れやすくしていたタラップも綺麗に直されていました。それどころか、車軸の摩耗まで綺麗に取り換えられ新品同然になっております。もともと新品の馬車を壊れやすくするために、中古の部品と取り換えていたはずなのに、どうして・・?」
「それはこっちが聞きたいわ! まさか貸し出しする時、部品の交換を忘れていたのか!?」
「それは、ありえません! 旦那様も確認されたではありませんか!」
「・・確かに・・・では一体どうして・・それに・・・・」
近くに王女やラーナ嬢がいる手前、大声で喋れないバスク側陣営は、小声で話すしかなかったが、あまりにも有りえない状況に戸惑いつい、声が大きくなっていたようだ。
「何か問題でもありましたか? お貸ししていただいておりました馬車に傷や破損した箇所は無かったと思いますが?」
ラーナの言葉に、バスクは振り返る。
そこには、自信満々の顔をしたラーナと王女が立っている。
ま、まさか全て知っているのか? あの方々にお願いして手配していただいた者達が捕まった? そこから情報がもれている? いや、たかだか小娘ばかりじゃないか、精鋭の部隊だと聞いていたぞ?本当に捕まったのかどうかも分からないし、もし捕まっているとしても王都の警備隊なら、あの方々が何とかして下さるはず。
「あ、そうそう、その捕まったリーダー格の男は、冒険者組合で尋問させてもらいますので」
「な!? 何の権利があってそのような!」
「権利?」
「バクス様に何か問題でもあるのですか?」
「い、いや、そのような事はないのだが・・」
「いえね、その盗賊達に、内の若い冒険者が傷つけられましたので、報復の意味も込めての処置ですので。これは各国に設けられている冒険者組合の総会で定められた約束事ですから問題ありませんよね?」
「も、もちろんでございます」
ラーナの言葉に何も言い返せないバクス。
「そうでした。その盗賊がちらっと喋っていましたが、どうもこの王都の商人の誰かが王女様の帰還日時を漏らしていたとか? バクス様には、もしお力添えいただけるのならその商人が誰なのかそれとなく調査していただければたすかるのですが? いかがでしょう?」
わ、わざとらしい!
バクスは心の中で怒りまくっていた。しかしそれを表情に出すほど馬鹿でもなかった。
「わ、分かりました。このバクス、王都最大の商会をまとめる者としてそのような不定の輩を見つける為にご助力は惜しみませんぞ」
「それは助かります」
ラーナがお辞儀をすると、顔を引きつらせながら笑うバクスがいた。
「それで、今回の貸し出し料ですが・・・」
「いえ! 今回の貸し出し料はございませんよ? 我が国の王女様がお使いになっていただけただけで、この馬車にもハクが付くというものですからな、それだけで十分の報酬でございますれば、今回は必要ございませんので・・」
「え? でもそれは!」
「そうですか! さすがは大商会バクス様です! お言葉に甘えてバクス様の申し出を受けさせていただきますね」
王女がさすがにタダというのはと言いかけるところをラーナが制止し、今回の賃料をタダにしてしまった。
その後、貸し出し完了の書類などを確認し、王女とバクスがサインを交わし、3人はバクス商会を後にしたのだった。
「ラ、ラーナさん・・」
「どうしました? 王女様。」
「まさか、賃料をタダにしてしまわれるなんて・・・」
「これくらい当然です!」
「当然ですか?」
「はい、これでバクス側がどう出るか楽しみですね?」
「わ、私はラーナさんのやり取りをみて心臓が止まりそうです。私には絶対に無理です」
「あら、これくらいまだ前哨戦ですよ? まだまだ覚悟していただかないと、王家は守れませんよ?」
「・・・・・・・お手柔らかにお願いします・・・」
ウキウキするラーナさんと、ドキドキして顔が青い王女が並んでマコトの待つ場所へと向かって歩いていく。
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