新たな旅立ち 9
投稿いたしました。是非読んでやってください。
「あ、改めて自己紹介いたしますわ。私は、ブルーフェルド王国、第一王女、フィエルルシエ・ブルーフェルドと申しますわ。王族の一角を担う者であり、国を治める王の補佐をしております。この度はわたくしの王都への帰還護衛のお願いをお聞き下さり誠にありがとうございますわ」
そう言って丁寧に自己紹介してくれるのは、昨日、ニーブアームの危機から救い出し、僕が放り投げた女の子、この国に王族の一角である、フィエルルシエ王女様だ。
改めてこうやって対峙すると、やっぱり王族のオーラというか、気品がある。挨拶のその仕草一つとっても優雅で、その容姿からも可憐という言葉がこれほど当てはまるとは、こんな人が世界には存在するんだと感心した。
「いえ、トルタ冒険者組合としましても、王族の護衛を承り名誉な事でありますので、お礼を申し上げるのはこちらの方でございます」
冒険者組合の代表を兼ねるラーナ先輩が、王女との挨拶を卒なくこなしていた。
さすが、受付とかも慣れているし、こういう対外的な対応もちゃんとできるんだ。やっぱりラーナ先輩はカッコイイかも。
などと、僕が尊敬の眼差しでラーナ先輩を見ているのでアマネは少しご機嫌斜めのようだ。
「それで、こちらのお嬢様方が冒険者の方々なのでしょうか?」
王女が僕とアマネ、そしてルリを交互に見ながら、質問を投げかけてきたのだけれど、それって凄くわざとらしさが、ありありと分かるほどの芝居がかった言い回しだ。
多分、分かってて言っているのだろうし、僕が神様だと言うことも、知っているんじゃないかな? まあ今はあえて言う必要もないし、何か企みでもあるのだとしたら、ここは慎重に行くべきかな。
「フィエルルシエ・ブルーフェルド王女様、ご挨拶が遅れ申し訳ありません。僕がご依頼をお受けしましたこのパーティーのリーダー、マコトと申します。そして隣に居りますのが、僕のパートナー、アマネと申します」
僕の紹介で、胸に手を当て頭を下げるアマネ。
「そして、この肩に居りますのが僕の契約精霊、ルリでございます」
ルリは僕の紹介に合わせて、肩の上に立つとアマネと同じく胸に手を当て頭を垂れた。
「その若さの魔導士で、それほどに立派な精霊様と契約されるなんて、よほど優秀なのでございますのね?」
「いえ、まだまだ若輩者でございます。しかしフィエルルシエ王女様の護衛を仰せつかいました以上は、その大役をしかと務めさせていただきますのでご安心下さい」
「それは、頼もしいかぎりですこと。どうにもこのパルティナは剣の腕はよろしいのですが、少し抜けたところがございますので、道中が不安になりましてね、こうして無理を言ってトルタの冒険者組合長にお願いいたしましたの。見た目は可愛らしいお嬢様方ですが、その実力は、昨日の魔獣討伐でしかと確認いたしましたので、安心でございますわ」
オホホホ、と扇子を開き口元を隠しながらお上品に笑うその姿は、表情を見られないようにするためにわざと隠しているように感じられる。
それに先程から僕の事を頭の上からつま先までジロジロと見つめている王女様の瞳がギラギラとしていて今にも襲って来そうな雰囲気だ。
だいたい、魔獣の討伐はラーナ先輩一人でされたんで、僕らは実力も何も見せてもないんだけど?
それどころか、商隊のおじさん達にパンツは見られるは、さんざんだったんだよね。ラーナさんなんか鼻血出し過ぎて今でも貧血気味らしいし。
「姫様ぁ、私の事、抜けているだなんて、酷いじゃないですか」
突然、フィエルルシエ王女の隣に座っていたパルティナさんが王女に詰め寄ってきた。
ああ、そう言えばちゃんと説明していなかったけど、今、僕達は王都に向かう馬車の中にいます。
この馬車、外見は一見シックで派手さのない馬車なんだけど、その中身はすべすべの生地で装飾された壁や、フカフカのクッションが効いた椅子に、ガラス自体が貴重な物なのにそれを窓にふんだんに使い、開放的な作りの内装の馬車だった。
当然窓にはカーテンが付けられ、陽の光の調整も可能な見た目派手さは無いものの質の高い作りとなっていた。
凄く良い趣味をしているというか、こういうセンスがあるって事は、この王女様もそれなりの知識、教養と鋭敏な感性の持ち主なんだろうと思えるんだけど、最初会った時の印象と違うんだよね?
それにしてもこの馬車、案外小さいのかな? 小柄な女性ばかりとはいえ、5人も座るのはちょっと無理があるような広さだ。
だから、パルティナさんが詰め寄ると、王女様は直ぐに窓際に追い詰められ身動きが取れなくなってしまっていた。
「ちょ、ちょっと、パルティナ! そんなに詰め寄らないでくださいまし! 苦しいじゃありませんか!」
「だって、姫様が私の事、頼りないなんて悲しい事、言われるから・・・」
「そ、それは、言葉の綾、と言いますか、マコト様への依頼をもっともらしく言う必要があったからですわよ!」
あ~あ、依頼をもっともらしくとか言ってしまっているよ。
教養とか感性とか前言撤回です。
「本当ですか?」
「ほ、本当ですわよ! 私がパルティナを一番信頼しているのはお判りでしょう!?」
「はい! 良かったですぅ。私も姫様の事は信頼しております!」
パルティナさんと王女様って主従関係というより姉弟か友達みたいな関係だな。ちょっと憧れるかも? まあ、それは置いといて、先程のもっともらしくとか、色々と疑問があるのでこの際色々聞いておくとしましょう。
読んでいただきありがとうございます。




