新たな旅立ち 1
第2章をスタートします。
読んでみてください。
「それではマコト様、暫くの間、留守にさせていただきます」
「うん、気を付けてね。レリーア」
「マコト様もぉ、お体にご注意くださいねぇ」
「わかった。カルナも怪我とかしないようにね。親御さんには改めて僕がご挨拶に行くこと伝えといてね」
「え? ええ、でもそんな事いったら、母さん達、卒倒して倒れるんじゃないかな?」
「ありえるわぁ」
「そ、そう? でも、レリーアとカルナを貰い受けるんだからちゃんと挨拶はしないといけないからね」
「分かりました。それとなく伝えておきます」
「うん、お願い。それとこれ、旅費と親御さんに渡すぶんね」
僕はそう言って、布袋を一つレリーアに渡してあげる。
「これは? お金ですか?」
「そう、旅費はそんなにかからないかもしれないけど、今まで親孝行できなかったんだから、これで、少しは恩返し出来ればと思ってね」
「こ、これ!? お金じゃないですか! それも大金貨ばかり、これいくらあるんですか!」
「え? 確か30万ルペだよ?」
「それって、この間稼いだ金額の殆どじゃないですか!」
相当な剣幕で言ってくるレリーアだけど、僕としてはこれは正当なものだからね。
「そんな事気にしないの。だいたいベアドップを討伐したのってレリーアとカルナだしね。この間の稼ぎってそれが主だから問題ないよ?」
「それでも、これはいくらなんでも・・・」
「まぁ、今までロエバルバの所で過酷な状態だったんだし、お見舞金と思えばいいじゃない?」
「でも・・」
「レリーアさん、カルナさん、貰って下さい。マコト様、こう見えて頑固ですから一度いったら引きませんよ?」
あ、何それ? アマネ僕の事そんな風に思ってたんだ。まぁ確かに僕が折れる事は無いと思うけどね。
「分かりました。ありがたく頂きます」
「マコト様ぁ、ありがとうございますぅ」
レリーアとカルナが深々と頭を下げてくれる。実際自分達が稼いだんだから、そんな事する必要もないんだけどな。
そしてようやく、二人は街を出立し、自分達の故郷へと向かったのだった。
「アマネ、彼女達の故郷って、たしか王都の近くだったんだよね?」
「そうですね。王都ブルーフェルドより北方へ馬車で3日の田舎街だそうです」
「いつか、行ってみようね?」
「ええ」
僕とアマネは二人が見えなくなるまで外門のところで見送っていた。
まだ朝も早いせいか、人通りもそれほど多くなかったけど、冒険者の幾人かは、もう街の外へと向かって行く人の数が結構見られるようになって来ていた。
「マコトさま~!」
あれ? どこかから僕を呼ぶ声が聞こえた様な?
「マコト様! お仕事出られるの少しお待ちくださあい!」
あ、町の方から一人の女性がブンブンと腕を振りながら僕達の方に向かって走って来るぞ?
「あれは、冒険者組合の受付をしている、ラーナみたいですね」
ぶっきらぼうに答えるアマネ。
顔がもの凄く嫌そうになってるけどどうしたんだろ?
「はあ、はあ、こ、こちら、でしたか。間に合って、良かった、です。ふう」
走って来たせいか、息を乱しながら話すラーナさんに、アマネが物凄く睨んでる。
「ラーナ、何故朝から私達の邪魔をする」
「げ、アマネ! あなたこそお呼びじゃないわよ!」
いつの間にか二人で見合いながら話し始めたけど、そんなに仲が良かったのかな?
「ねぇ、アマネ、ラーナさん。名前を呼び捨てにするほどいつ仲良くなったの?」
「「仲良くなんかありません!!」」
二人同時で怒鳴ってきた。
僕、何か悪いことしたの? だったら誤らなきゃ。ふ、二人の顔が怖いよ!
「ぼ、僕何か悪いこと言ったの? だったら謝るよ? 何が悪かったか教えて? ちゃんと直すから」
ちょっと悲しかったから、少し目に涙が出たかもしれない。
「「!!!!! はうっ!!」」
ドサ! バタン!
「あ、アマネ?! ラーナさん!! ど、どうしたの?!」
いきなり、二人とも変な悲鳴をあげて、ひっくり返ってしまった! あ、鼻血まで出してる!
「ど、どうしよう!!」
この騒ぎに周辺の人たちも何事かと、集まりはじめたよ。
「お母さま、落ち着いてください」
「あ?! ルリ!」
いつの間のか僕の肩の上に腰掛けて、冷静に声をかけてくれたのは、大精霊(秘密でただの精霊としている)のルリだった。
「あれほど、お母さまには仕種に注意してくださいと何回もいってますのに、こりませんね?」
「ええ! でも僕何もしてないよ?!」
無自覚が一番怖いわ
「え? 何か言った?」
「なんでもありません、とにかく二人を冒険者組合に連れて行きましょ。そこでなら休憩室もあるでしょうから」
「そ、そうだね! じゃあ・・」
「ちょ、ちょっと待ってください! どうするつもりなんですか?!」
「え? 二人を担いで行こうかと?」
うん、二人くらいなら僕担いでどこまでもいけるから、その方が早いし。
「駄目です! こんないたいけな少女が大人を二人担いだら、変に思われますよ?!」
「あ! そ、そうか! じゃあどうしたら良いの?」
僕は慌ててルリに尋ねた。
それを見ているルリが大きく溜息をしてから、髪をかきあげ冷静な目で僕を見てくる。
もの凄く残念そうに見えるのは気のせい?
「いいですか? 今から私の言う通りにして下さい。良いですね?!」
「は、はい!」
「まず、集まった野次馬、特に体格の良い女性の方を見つけて下さい」
「???」
「良いから、早く!」
「は、はい!」
僕は、促されるまま、周辺を見渡すと、数人のムキムキ筋肉の女性のパーティーを見つけた。戦闘スタイルがもろ突進型と分かるね。要所はボディーアーマーで固めているけど、腹筋をわざと見せる様にしてるもの。
「見つけましたね。そしたらまず、両手を胸より少し上当たり、顎のすぐ下で握って下さい」
「う、うん。こうかな?」
「次に、顎を引いて少し顔を下に向けて下さい。ほんの少しですよ?」
「わ、わかった」
「次に、視線だけ彼女達に向けて、こう言うのです」
ルリはその言葉だけ、僕の耳元で囁いて教えてくれた。
「そ、そんなのでいいの?」
「良いから、やってみてください」
「う、うん、わかった」
とにかく、ルリの言う通りやってみよう。
「え、えっと。こうかな? こほん、そちらの、たくましくて美しい戦士のお、お姉さん、体調が悪くなった僕の連れを冒険者組合まで、運んでいただけませんか?」
バ! ババ! ババン!!!
「任せて! 子猫ちゃん!!」
こ、子猫ちゃん? って、いつの間にかアマネもラーナさんも、その戦士のお姉さん達に担がれているよ?
「ついでに、子猫ちゃんも私が抱いて行ってあげようか?」
「り、リーダー! それはずるい!!」
「そうだ! 職権乱用だ!!」
「あ、あの大丈夫ですから、お姉さん」
「そ、そうか? 残念だな。でも疲れたらいつでも言ってくれよ! キラーン!」
うっわー! は、歯が光った気がした! 音も聞こえた気がする!
「あれは、自分で言ってましたよ? でもこれでなんとか成りましたね?」
「う、うん。ありがとうルリ」
カルナさんがいない間は、私一人で頑張らないと! と決意を固めるルリだった。
そうして僕たちは集まる公衆の面前を掻き分け、冒険者組合にむかったのでした。それにしても、ルリはどんな魔法を使ったんだろ? それとラーナさん、何か用事でもあったのかな?
また、来て下さい。