一仕事終えた後は? 4
投稿いたします。
是非読んでみてください。
冒険者組合での一騒動があってから、2日ほど経ちました。
あの後、次の日に改めて、ベアドップの討伐依頼の完遂を報告。予定以上の頭数を納品した事で、また一騒動起こったけど、そこはまたマリナエルス組合長にお任せしてさっさと逃げ帰りました。
ただ、その日はそれで終わらず、薬草ハイリイレーフの入手場所を教えろと、多くの冒険者から質問攻めに遭いました。けど、そこはまたアマネの鉄壁の防御で難なく逃げ延びる事ができたので良かったのですが・・・
僕達がこの憩いの止まり木亭にいる事が知れ渡り始めて、朝からこの宿屋を伺う人が多数居たのはちょっと困りました。プエルちゃんと女将さん達に迷惑が掛からないよう、追い返すのが大変だったので、げんなりとしながらみんなで朝食を食べ終えて、今は自室に戻ってくつろいでいるところです。
「えっと、あまり考え過ぎても仕方ないので、昨日の魔獣討伐の報酬を聞いておこうか?」
僕は、みんなの気持ちが朝から下がり気味なのが嫌だったから、紛らわす為にも、昨日の騒動で確認できなかった報酬の確認をすることにした。
「はい、マコト様。依頼、ベアドップ討伐ですが、1頭討伐で報酬、5万ルぺでしたので、2頭ほど報告して、10万ルペとなりました。あとベアドップは肉質が魔獣の中ではかなり上位の食肉として扱われていたり、内臓などは、高価な治療薬や滋養強壮剤の原料としても重宝されている素材でしたので、買い取りをお願いいたしました。
「へぇ~、あのでっかい魔獣って美味しいんだ?」
「はい、そのヒレや舌は、高級な店でしか味わえない貴重な部位ですから、相当美味しいと思います」
レリーアが、教えてくれた。
「ですので、アマネ姉さまと相談して、1頭は残しておきました。姉さまの次元収納でしたら劣化することがありませんから」
なるほど、さすがアマネだね。
僕は無言で、親指を立てて、アマネに向かってウインクをしてあげた。
「キュウ!!」 バタン!!
「あ? アマネ!」
アマネが、突然、後ろにひっくり返ってしまった!
「お母さま! だから不意打ち攻撃はアマネ姉さまでもかわせませんと、言ったはずですよ? あれは相当なダメージだよ?」
ルリが、僕に説教してくる。うん、僕が悪いんだろうけど、ベアドップでさえ通用しないアマネに、僕のウインクの方が、威力があるというのはどうなんでしょう?
「と、とにかく資金は結構貯まってきたのかな?」
「はいぃ、アマネ姉様のぅ、代わりにお話しますねぇ」
倒れたアマネの代役にカルナが話してくれるそうだ。
「ベアドップのぅ、買い取りですけどぉ、状態保存が良かったので1頭で10万ルペ、大金貨10枚になりましたので、2頭分で20万ルペとなりました」
「結構いい値段なんだね。すると実質1日で、薬草合わせて32万ルペの稼ぎとなったわけだ。これって凄いよね?」
「ええ、とっても凄い事ですよ! この街で普通の家族4人が暮らしていくのに一月5千ルペあれば暮らせますから」
「という事は、暮らすだけなら、64ヶ月、5年くらいは暮らせるわけだ」
「そうですぅ、でも冒険者は、常に装備とかにお金が掛かりますからぁ、そういう訳には、いきませんけどぉ」
なるほどね。でもその点も僕達は有利なんだよね。
怪我とかの回復に、アマネと僕の力があれば、ほぼ完治出来る事が分かったんだよね。回復薬や傷薬が必要ないのと、医療費がかからないのは結構有利なんだよね。
その上・・・
「それと、カルナ達の命を繋ぐことが出来てから、創造とか修繕とかそんな感じの力に芽生えたというか、出来るようになったんだよね。例えば・・・。そうだ、レリーア」
「は、はい」
「君の剣、見せてくれる?」
「はい、構いませんが、そんなに良いものではありませんよ? ロエバルバから渡されたもので、普通の剣士や駆け出しの騎士が使うようなものですから」
「いいよ。ちょっと貸してね?」
そう言って僕はレリーアから、剣を渡してもらった。
「えっと、やっぱり大きいし太いね。重さもあるけどちょっと斬りにくそう?」
「はい、この手の剣は斬るというより叩くといった方が正解ですね」
「なるほど、両刃だけどその刃は・・・切れないね」
僕は親指を、刃の部分に当て引いてみたけど全然切れる気配を感じなかった。
ただ、これは後で聞いたんだけど、僕の体を傷つける剣がそこら辺にあるなんて事、無いらしい。ルリが胸張って言っていたな。僕を斬るなら、神剣か魔剣でないと無理だそうだ。
「レリーアはどんな剣が使ってみたい?」
「え? 私ですか。ん~そうですね。出来ればアマネ姉様やマコト様が使用されている、刀、という剣が使ってみたいです。あの切れ味と刃の無い背で斬らずに打つ事ができるのは用途が広がりますし、それになんと言っても美しいですから!」
ハハ、あんなに目を輝かせてよっぽど魅力的なんだろうな? 僕の黒竜丸やアマネの白竜丸が。
「じゃあ、それでいこう!」
「え? いこう? ですか?」
「うん、見ていてね」
僕は、右手で束を持ち刃の腹の部分を左手で添えるように横に持つと目の前まで掲げてから、意識を刀に集中させた。
すると、刀がゆっくりと光出し、どんどん強くなる。それと合わせるように小刻みに剣が振動し始める。その振動も次第に早く細かくなり、甲高い音が始まった。
「ど、どうしたのですか!?」
どうもアマネがこの音に反応して気が付いたみたいだ。ただ、今集中しているから話しかけられない。
「あ、アマネ姉様! 今、マコト様が私の剣を・・」
「ああ、そうですか。よく見ていてください。マコト様の偉業を!」
何か、アマネがまた僕を際限なく持ち上げ始めたみたいだけど、ここは無視させてね。
僕の手にある剣、相当熱くなってきた。ここでイメージ、想像する。鋼自体は、硬さと柔らかさを両立。必要な素体は周辺の大地や空気中から取り出す感じで、魔素を練り込む。形はアマネの白竜丸をイメージして、よし! これで創造形成!
一気に光が収束、振動も止まり、熱も逃げていく。
「あ!?」
レリーアの驚く声が聞こえた。成功かな?
「こ、これは・・・刀・・・」
「うん、上出来だね」
僕はイメージ通りに出来た刀を、グイっとレリーアの前に突き出す。
「今日から、これを使ってね。今までよりは使い勝手がいいはずだから」
僕の言葉を噛みしめるように、両手でゆっくりと崇めるように刀を手にとるレリーア。そんなにかしこまらなくても良いのに。
「す、凄い、軽いなんてものじゃない。持っているというより自分の手の延長みたい」
シュン!
レリーアが、刀を唐突に一振りすると、鋭い風圧が部屋の中を駆け抜けた。
ガン! ガシャッ! ドガ!!
「え?」
「あちゃぁ~、やっちゃった」
「レリーア、やりすぎですぅ」
「そうしたくなるのも分かります。けど軽率でしたね」
「お母さま、私プエルちゃんを呼んでくるね」
レリーアが、振った先の窓と壁が綺麗に切り裂かれ壁が一部崩れてしまっていた。
いやぁ~、ここまで威力がでるもんなんだ。
さすがレリーア! さすが僕の創造した刀だね!
「マコト様! 渡す前にちゃんとレリーアに、振らないように、言わないと駄目じゃないですか!」
「はい、ごめんなさいアマネ」
僕とレリーアはこの後、アマネとルリに怒られ、プエルちゃんとご両親に謝った。
うう~、良い出来、過ぎたかな?
ありがとうございました。