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危険な出来事 8

「えっと、気をとりなおして・・・彼女達の状態表示ですね」

「う、うん」


アマネ、もうちょっと待っていてね。

僕は、両手を顔の前で合わせて、謝っておくと、少し頬を膨らませてから、小さく頷いてくれた。

これは今晩、慰めてあげないといけないかも。


「あ、目覚めたみたいですよ?」


ルリが、レリーア達が目覚めたことを教えてくれた。

あ、本当だ、うっすらと目が開き始めている。


「う、う~ん、ん・・ん? え?」

「わたし・・・」


二人とも、ほぼ同時に目を覚ますと、状況がはっきりと分からないのか、うわ言の様な言葉をいくつか声に出していたが、少しづつ意識がはっきりしてきたようで、目に力が戻って来たようだ。

まずはレリーアが体を起こし、続いてカルナも上半身を起こしてから周囲を見渡し始めた。


「え?」

「え! え?!」


その顔はみるみるうちに、驚きに変わり、目を大きく見開き僕を見つめてきた。


「あの~、大丈夫? レリーアさん、カルナさん?」

「・・・・・・・・・」

「あ、あの~・・レリーアさん?」

「「・・マコト様!!!」」


僕が声を掛けたけど、反応が無くて心配になったけど、いきなり僕の名前を叫ぶ二人。


「えっと? その、体の方は大丈夫かな?」


少し、不安になりながらも、彼女達に今の状態を聞いてみた。だって、何処かおかしなところがあるのなら、アマネに再度、治療をしてもらった方が良いと思ったから。


バッ!!

「「はい!!」」


僕が心配そうに話しかけたと思ったら、いきなり体を起こし勢いよく、ワンステップで後ろに下がると、僕に向かって両膝を付き、頭を床に擦り付け、両手をその額の前で床につき合わせた。

これっていわゆる土下座っていうものなのか?


「は、初めて見た。」

「私も初めて見たよ。あ! でもお爺ちゃんは見たことがあるみたいですね」


ルリも初めての土下座を見て、少し驚きながらも感心もしている様だった。


「いや、そのね、急にそんな風に体を動かしたら駄目なんじゃないかなって・・・ね?」

「滅相もございません!! 私どもの様な者にご慈悲を頂き、死の淵から呼び戻していただいた御恩、なんと言って感謝すればいいのか!」

「そうです。これで2度も命を救っていただいたのです。もうこの命はマコト様のものと思って下さい!」

「ま、まあ、そんなに思いつめなくていいからね? それより、ロエバルバと、執事のラーデンを、どうするのか考えなきゃいけないでしょ?」


このままだと、レリーア達の僕への思いを語る事で、数刻が過ぎてしまう気がしたので、話題をあえて変えてみた。

すると、二人の顔の表情が一瞬で不快さを増し、ロエバルバの方を睨みつける。


そのロエバルバは、片方の手首を切り落とされていたが、ルリがさすがの世界樹の大精霊だけあって、痛みや回復などの木や薬草の事をよくしっていたので、ロエバルバに、止血と痛み止めなどを調合してもらい、治療にあたらせていたので、正気は保っている様だった。

ただし、変な行動をさせない為に、床から湧き出ている木々の根た枝にでがんじがらめに拘束してもらっていた。


「おい! レリーア! カルナ! 何をしている!? 私を助けないか! そいつを早く殺してしまえ!」


まだ、あんな事言っている。

さっき、カルナに手首を落とされているのに、まだ自分が主人でいるつもりなんだろうか?今更、言う事を聞くわけが無かろうに。


「おじさん、もうレリーアとカルナは、あなたの奴隷でもなんでもないの。自由になったんだよ?」

「いえ! 私たちはマコト様のものです!」

「レリーアさん、話がややこしくなるから黙っていてほしいんだけど?」

「はい!」

「でわ! 私が! 言わせていただきます!」

「カルナさんもね?」

「はい!」


この二人、こんな性格だったのか?


「とにかく、もう奴隷では、なくなったから、おじさんがいくら言っても強制力は働かないよ?」

「嘘だ! そんな簡単に重罰が消えるわけがなかろう!!」


う~ん、結構苦労したんだよ?


「お前達、早くそいつを殺さないと、今度は心臓を一息で捻りつぶしてやるからな!」


焦る表情で脅しても、なんの効果もないですよ?

実際、彼女達は、ロエバルバを見てもいない。何故か僕を潤んだ瞳でジーっと見続けているのだから、脅しそのものを聞いていないようだ。

たぶん彼女達にとって、ロエバルバは眼中になくなったのかもしれない。

・・・だからと言って僕のその視線を送り続けられるのは、ちょっと恥ずかしいんだけどね。


「くっそー!! もういい! 死んでしまえ!!!」


息も荒く、目が血走っているロエバルバが、小声で呪文を唱え始めた。


「フン!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「? どういう事だ? どうしてお前達に何も起こらないのだ!?」


心底、レリーアとカルナに何の異変も起こらなかった。


「そ、そんなぁ・・・」


信じられないといった感じのロエバルバ。ようやく理解できたかな?


「なるほど。どうも本物のようですな?」


突然、アマネと相対し牽制し合っていたラーデンが、ゆっくりと剣を下ろし床に置いてしまった。


「!!」

「アマネ! どうしたの?!」


突然、ラーデンが武器の剣を床に置いて丸腰になったのに、アマネが後退し僕の前に立って盾になるようにして、ラーデンに強い視線を送っていた。


「マコト様、奴の気配が今一瞬変わったように思えました。あれは、人ではありません」


その言葉を聞いた途端、レリーアとカルナも僕の横に立ち、それぞれがラーデンに向かって構えだした。


「どうしたの? 二人まで」

「マコト様を守るためです。これで宜しいですか? アマネ様」

「ええ、あいつは危険だわ。マコト様は、レリーアとカルナから離れないでください」

「う、うん」


アマネの表情が険しい。緊張感が漂ってくる。アマネにこれだけの表情をさせる、ラーデンって何者なんだ? アマネは人ではないと言っていたけど。


「そんなに身構えなくてもよろしいですよ? 今ここで戦っても多勢に無勢、私も命は欲しいですからね。何もいたしません」


先程までの執事ラーデンの声だし話し方なんだけど、微妙に雰囲気が違ってしまったというか、ふてぶてしさが増したというか、明らかに違う。


「あなたは何者です?」


読んでいただきありがとうございます。

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