危険な出来事 7
危険を回避?
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「ルリ?! なの?」
「うん! ごめんなさい! お母さまが窮地の時に傍に居てあげられなくて!」
あ、少し涙声だ。ルリ心配してくれていたんだ。
「そんなこと。僕が勝手に出歩いて、まんまと罠にはまったせいだから、ルリが謝ることじゃないよ?」
「でも!」
「ルリ! 大丈夫だからね、今こうして無事でいられるんだから問題ないよ。そして僕を助けてくれた彼女達を助けたい!」
「ぐす。うん・・分かった。お母さまを助けてくれたこの子達を助けるの私も手伝う」
「ありがとう! それでこの細いのが神経なの?」
「うん、私達、世界樹の精霊も、木々の根を地中にはわし、世界中と情報を共有しているんだけど、それに近い感じがする。」
「つまり、この首輪が元になって、体中の神経と繋がっているっていう事だね?」
「そうみたい。だから無理やり首輪を外せば、神経を破損させ彼女達の精神が崩壊する可能性が高いみたい」
「じゃぁどうすればいいの?!」
「今、近くの森の大樹に来ていて、お爺ちゃんからの色々情報を貰っていたんだけど。急にお母さまとの繋がりが消えて分からなくなって、探し回っていたの。それでようやく此処を突き止めて今、話しているんだけど、そのお爺ちゃんが言うには、その首輪は、魔法による契約で主との繋がりを確定させ、主の命令に絶対服従させる魔道具なんだって。だからその主をお母さまになるよう上書きすれば良いみたい」
「そんな事が出来るの?」
「ちょっと待って・・・・・・・・大丈夫だって。神様の魔法思念はどんな魔法よりも優先されるみたいだから、その首輪に対して、自分が主だって願えば叶うらしいよ?」
うん、分かった! やってみよう! ってそれって僕がこの子等を奴隷化するってこと?
「ルリ! 駄目だよ! それじゃこの子達、主人が変わるだけで奴隷のままじゃない?!」
「でも、それしか今は方法が分からないんだって! もし方法があってもそれを調べている時間は、もう無いよ?」
仕方ないのか?
・・・・・・・・・・え、え~い!! ままよ!!
僕は、とにかく助ける事が先決である事を優先させ、首輪に向かって魔力と思念を送り込み、首輪を僕の支配下に置くイメージを作りあげた。そのイメージに手中していくと、僕の意識はその中へと、どんどん入り込み埋没していった。周りは黒くドロッとしたその感覚はとても不快なもので、一瞬でも居たくないと思わせる雰囲気だ。
それでも、僕はさらに奥へと進む。すると、遠くの方に二つの明かりが見え始めた。
あれかな?
僕はその光に向かって泳ぐように進む。確かに近づいている。けどその光は明滅し今にも消えそうだ。
僕は手を伸ばす。そしてようやくその光を二つの手にそれぞれ乗せ、僕は集中した。
「どうか、彼女達をもとの姿に、悪魔の手中から解き放って!」
僕の言葉がきっかけになったのかどうかは分からないけど、今にも消えそうだった光が、輝きを次第にまし、それはどんどん大きくなってさらに光を増してきた。
そしてその二つの光の玉が今度は形を変え、うごめきだす。それは次第に人の形となり、いつのまにか、僕の両手をそれぞれの人型がしっかりと握っている様な姿となっていた。
「レリーア? カルナ?」
僕はそれぞれの名前を呼んであげると、その人の形をした光が頷いてくれた気がした。
それを見た僕は、何故かもう大丈夫と確信を持つことができた。
どうして? と言っても感覚の問題でそう感じたから、そうなんだと思う。
すると、体が軽くなり上へと引っ張られる感覚に入った。
終わったから戻るのか?
そう、頭の中で思えた途端、体がだるくなり意識がもうろうとし始めた。それがどれくらいの時間続いたのだろうか? 現実とも夢ともぼやけた曖昧な時間が続いて不思議な気分の状態で、僕は目を覚ました。
「お母さま! 大丈夫?」
目を開けると、僕を心配そうにのぞき込むルリの姿が見えた気がした。
「大丈夫だよ。ちょっと集中し過ぎたのか頭の中がはっきりとしない感じ? だけどね」
「集中し過ぎたって、どれくらい集中しているんですか? もう3つの時が経ったよ」
少し呆れ顔のルリ、のように見えただけです。
でも3つって、一日25の時だから、結構長い間、意識が二人の中にいたんだ。
「あれ? アマネは?」
「あそこだよ、お母さま」
ルリの言葉に不思議に思いながら、部屋の中を見渡していくと、入り口を背にし身構えるラーデンと、それに対抗しているアマネの姿が目に映った。
まさか、あれからずっとなの?
「そうみたい。でもどちらかというとアマネお姉さまの方が優勢かな? 動こうと思えばいつでも動けそうだもの。それに比べて相手の方は結構めいいっぱいって感じでお姉さまに注意しているもの」
へぇ~、そうなんだ。それなら任せても大丈夫かな?
「それで、どうだったの?」
「ん? ん~、よく分からないんだけど、二人の意識みたいなものが流れ込んできて、色んな情報も一緒に分かって、それからはなんか夢中だったから・・・でも、もう大丈夫な気がする」
「お母さまがそう思うなら大丈夫でしょう。実際途中から二人が光に包まれて負傷していたところが急激に回復していったもの」
ルリの言葉に僕は二人の事が気になり、それぞれを見回してみたけど・・・
本当だ。レリーアの胸の傷も塞がり、二人の曲がっていた首も自然な形に戻っていた。何より、青ざめていた顔にほのかな赤みが戻っていた。
「あれ? この首輪取れていない。けど黒かったはずなのに白くなっているし、これどうしたの?」
僕は振り返り、ルリへ質問してみたけど。
「私も分からないの。一応、マコトお母さまの奴隷って事になっているはずだけど・・・お母さま、状態を表示してみたらどうです?」
「そ、そうだね。気を失っているけどちょっと見せてもらおうかな?」
気絶した女の子の頭の中を見るのは罪悪感があるけど、もし何か大きな問題があって手遅れになるような事になれば、後悔するからね
と、自分の言い聞かせて、もう一度二人に手をかざしてみた。
『レリーア 天人族 女 22』
『天職:剣士』
『後職:無』
『魔操位:84』
『天職特性:聖剣士』
『付属特性:主神・マコト・エルデリード神の使徒(天使)』
『カルナ 天人族 女 16』
『天職:魔導士』
『後職:無』
『魔操位:186』
『天職特性:聖魔導士』
『付属特性:主神・マコト・エルデリード神の使徒(天使)』
・・・・・・・・・・・あれ? これは一体何がどうなった?
「あ、これは凄いですね」
「え? はい。お母さまの思考など、これだけ接触していれば大抵は共有することが出来ますよ?」
「え、でも接触って・・・あ!」
いつのい間にか、石で敷き詰められた床の隙間や、壁の隙間から木の根や枝みたいなものが生え出し、その一部が僕の胸まわりに巻き付けられていた。
「ルリ?」
「はい。お母さま?」
「どうして胸にばかり巻き付いているのかな?」
「え? それは体の中でも敏感なところほど、思考の共有がしやすの。本当ならあそこが一番良いんだけど、あいつらもまだいるし、そういう事は部屋の中での方が良いと思って・・それとも、お母さまって、外でする方がいいの? だったら今すぐ!」
僕は胸に取り巻く枝を抓ってみた。
「い、いた! 痛い! ご、ごめんなさい! お母さま!」
「今は、良いけど今度からはちゃんと説明してからしなさい!」
「はい! ・・・・・・え? 説明すれば良いの?」
「ば! 馬鹿!」
つい、口走ってしまった事に今更ながらに顔が赤くなっている事に気付いた。
「じゃあ、じゃあさ! 今晩は?」
「そんな事今は言えません!!」
「あのう! 二人で盛り上がらないでください!! 私も混ぜて欲しいのに!!」
アマネが涙目で訴えてきた。
視線は、ラーデンに向きけん制しているけど、僕とルリの会話にまざりたかったんだ。
アマネ、ごめんね。
ありがとうございました。またお越し下さい。




