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危険な出来事 3

アマネに知らせが。

「あ、お帰りなさい!」

「プエルちゃん、ただいま」


私は、憩いの止まり木亭に戻ってきていた。


「早いお帰りだったけど、なんの用事だったの?」


この宿の娘で、マコト様より一回り小さくて可愛らしい赤毛の女の子。そう、十分に可愛らしい少女なのだけど、やっぱりマコト様を思うと、霞んでしまいそう。

あ! でも、本当に可愛らしい女の子なのよ?! マコト様が異常に可愛いから、そう思っても仕方ない事なの! お姉さんを許して!


「アマネお姉ちゃん、大丈夫? 何か目が明後日の方向にいっちゃっているよ? それに体くねらせて? 何かの病気なの?」


ふ、不思議な人扱いされてしまった。

でも大丈夫です。他の人にどう言われようと、私にはマコト様がいますから大丈夫!


「あ、そうそう、プエルちゃん? 私に伝言してきた人ってどんな人だった?」

「え? どうかした? 普通のおじさんだったよ?」

「普通・・ね。それが冒険者組合に行ったら、だれもそんな伝言していないって言われたの。だからどんな人だったのか聞きたくてね」

「え?! そうなの? う~ん・・・・どこにでもいる普通のおじさんだったけどな? 通行人1とか、2とか、そんな感じだったよ」

「そう・・・」

「あ、そういえば、普通の町人にしては体つきが筋肉質だったような? あれは冒険者だったかも?」

「プエルちゃん、分かるの?」

「うん! だってこの宿屋で働き出して長いもの。それにこの宿、組合長さんが良く組合の人を泊まらせてくれるから、冒険者がどんな感じの人とか、よく知っているもん」


なるほど、彼女の言葉に納得です。という事は、その伝言を話してきたのは、冒険者だったのでしょうか? でも一体誰がそんな嘘を?


「ところでマコト様は、お部屋ですか?」

「う、うん、ちょっと街を見てくるって、出られましたよ」

「そうですか」


マコト様の事ですから、大丈夫だとは思いますが・・・どうしてこんなに不安なのでしょう。


「それでは、私も一度、部屋で着替えてからマコト様を迎えに出ますね」

「分かりました。お夕飯はどういたします?」

「そうですね。それまでには戻りますので、三人分お願いできますか?」

「はい、でも三人って、あの精霊様もですか?」

「ええ、あれで案外食べられるそうなので」


さすがにプエルちゃん、も驚いているみたいです。私もコルコネ村で見てなければ信じられませんもの。あの小さな体であんなに食べられるとは思いませんでした。

私は、プエルちゃんと別れて、私達が借りている3階の部屋へと向かった。


カチャ


扉を開け部屋に入ると、ベッドの上にきちんと畳まれた、マコト様の外着と防具が置いてあり、ベッド上の台座には黒竜丸が置かれてありました。


さすがマコト様、丁寧なお仕事です!

その昔、この世から身を隠した前のエルデリード駄目神は、自分の着た服を片付ける事もできず、見た本も投げっぱなし、食い物も散らかして巫女達を悩ましていたとお聞きします。それに比べてこの整頓の達人ことマコト様の素晴らしさ! 私は果報者でございます!

・・・・・は! いけないまたあっちの世界に行ってしまいました。


それより、この状況は、マコト様が無防備でお出かけになったという事なのでは?


コンコン!


「は、はい」


扉をノックし入って来たのはプエルちゃんでした。


「アマネお姉ちゃん、またさっきの人が来てね、これを渡してくれって」

「さっきの人って、私に伝言をしてきた冒険者の人?」

「うん」


いったいどういうつもりなのでしょうか?


「その人はまだ下にいますか?」

「え、この小包を私に投げつけるように渡して、すぐに出ていったよ」

「・・・・そう」


今すぐ追いかければ間に合うか? でもその前にこの小包を確認すべきでしょうか?

少し迷ったけど、小包を早く確認し、その後その男を追いかければと判断し、取り急ぎ小包を開ける事にしました。


「え?」

「どうしたの? アマネお姉ちゃん」

「これは・・・・」


見間違うはずがありません。これは、このスカートは・・・


「あ、お姉ちゃん、手紙みたいな物が落ちたよ?」


プエルちゃんが、床に落ちていた髪を拾い上げ、私に渡してくれました。もの凄く嫌な予感がします。

私は、恐る恐るその紙をめくりました。


「! !!!!」

「ど、どうしたの!? アマネお姉ちゃん! そんな怖い顔して!」

「プエルちゃん、ちょっと出かけてきますね」

「う、うん」


私は、ちゃんとプエルちゃんに話せただろうか? 自分が言った言葉さえ今ははっきり分からない。何この手紙は! 

私の胸は張り裂けそうにバクバクと唸っている。体の奥底からわけの分からない感情が噴き出してきそう。この感情は駄目だ! そのまま出すと今、目の前にいる少女が酷い事になってしまう。

とにかく私は、この場を離れるべく急いで階段をおり、宿の外へと出た。


「ハア、ハア、ハア、」


息が苦しい。吐きそうなほど気持ち悪い。

今は、ただただ自分が許せない! 

何故マコト様を置いて一人で向かったの? 一緒に行ってもらえばこんな事にはならなかったはず。

何故、私はマコト様に外出するときに武装を外さないことを注意しなかった?!

悔やんでも悔やみきれない!

この感情は負の感情そのもの。魔獣にもよく似たものを感じる事がある。

そうか、魔獣も何かに怒っているのかも・・でも魔獣は感情を剥き出しにするから討伐される。私も感情をそのままむき出しにして向かえばやられてしまう。

感情を保て! マコト様を救うなら人の心を保て!


私は、自分に心の中で言い聞かせる。


「でも、もし、マコト様に何かあったら・・・・この世のことなんて、どうなっても構わない・・・」


そう呟きながら、手紙で指定してある場所へと向かい歩き出した。


読んでいただいてありがとうございます。

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