冒険者組合 7
アマネとマコトに更なる進展の兆し?
「はい。それは問題なく手配いたします。それでランクはどういたしましょう? あまり最初から高ランクだと怪しまられる可能性がありますから、Aランク辺りで登録させますので」
「ちょっと! 待った~!!」
「はい? どうかいたしましたか?」
僕の待ったに、不思議そうな顔で、どうしました? みたいな顔で首を横にしないでください。
「いくらなんでも、Aは高すぎますよ! まだ駆け出しですよ? ルーキーですよ? それがいきなり高ランクじゃ色々勘繰られてしまうじゃないですか?!」
「え? しかし、マコト様なのですよ? Aでも低い方ですから」
アマネまで、うんうんと頷かない。
僕は、再度駄目だしをして、考え直してもらう。
「そうですか、では仕方ありません、組合長権限での特例処置を発動して出来る最高ランク付けのCランクといたします。よろしいですか?」
それでも高い気がするけど、妥協点はこのあたりだろうと思って頷いた。
「良かった。あまり実力とランクとの差があるのも問題ですから、本当ならSクラスにしたい程なんですよ?」
「マリナエルス組合長は、僕の実力が分かるのですか? それともアマネからある程度聞いていただいたことからの推測なのでしょうか?」
「アマネからは、それほど詳しくは聞いておりません。でもアマネから聞いた時には、年甲斐もなくときめいてしまいましたよ。この世界に神が降臨なさるのは数百年振りですからね。それでどんなお方なのかと思い描きながら一階におりましたら、小さくも凛々しく、全ての美を集めた様な、まさに女神様がおられたのです。この胸の高まりをお見せできましたらどれほど嬉しい事か!」
「あの~、あまり褒められるの苦手なのでそれくらいにしてもらえませんか?」
マリナエルス組合長が、何処か遠くを見つめながら語られるその褒め言葉は、僕にとっては恥ずかしい以外の何物でもないのだけど、アマネといい、組合長がといいちょっと言い過ぎなのでは?
「そんな事ありません! マコト様は、小さくて可愛らしく、美しく、吸い込まれそうな新緑の瞳に、輝く銀色のしなやかな髪、その上お体の大きさに比べれば、ちゃんと主張されている双丘の胸、引き締まりツンと上を向いた小柄なお尻、他にも、他にも! フン!」
「わ、分かったから! アマネ! その辺で止めて!」
「はっ! す、すみませんつい本音が・・・」
顔を真っ赤にして俯くアマネ。これほど思ってくれているんだと思うと結構嬉しいな。
「ありがとう、アマネそこまで思ってくれているのは正直に嬉しいよ。でももう少し抑え気味お願い。僕もさすがに今のは恥ずかしいから」
「す、すみません。マコト様の事を考えると、止まる事が出来なくてつい・・」
そう言って僕の方をジッと見つめてくるアマネ。
あれ? なんか雰囲気が? あ、あれ? アマネ、ちょ、ちょっと顔がどんどん近づいてない? え? ち、近いよ!?
「ゴホン!!」
マリナエルス組合長がわざとらしい大きな咳で、アマネがはっ!となって正気に戻った。
かああああああああ!
っていう音が聞こえそうなほど、アマネの顔がというより体中が真っ赤に染まっていった。たぶん僕も顔が赤いと思う。
「お母さま、アマネ姉さまをちゃんと可愛がってあげてくださいね。そうしないといつか暴走しますよ?」
また、ルリが耳元で凄い事を言ってくるけど、やっぱりそうしないといけないの?
「アマネ、先に冒険者登録を済ますよ。その後で宿に帰ってからそういう事はしなさい」
マリナエルス組合長までが、そういうものだと決めつけて話してくる。
う~ん逃げ道が塞がれていくような感じがするのは僕だけだろうか?
「ま、まあ、アマネ。そのこういう事は僕、慣れてないから、宿を見つけて、それからこれからの事、考えようね? ね?」
「はっ、はい! 嬉しいです! 今晩は頑張ります!」
握り拳を高々と上げて、何かを決意しているアマネがそこに居た。
これからの事を考えるだけだからね? それだけだからね?! ちょっと勘違いしてない?
「お母さま、今晩は覚悟した方が良いですよ?」
「ルリ~、脅かさないで」
「いやぁ~、若いって良いですねぇ。私もあと20年若ければ加わっておりましたものを」
「マリナエルス組合長さんまで変な事言わないでください!」
そんな事がありながらも、僕達は無事に冒険者登録を済ませる事ができました。ついでに宿もローズさんが手配してくれたので、助かりました。
あ、ローズさんと言うのは、マリナエルス組合長のお名前で、そう呼んで欲しいとどうしても懇願されたので、そう呼ぶことにいたしました。
でも、今晩が怖いのは変わりません。どうしよう?
コンコン!
「入れ」
「失礼します。マリナエルス様」
執務室の扉が開き、挨拶と共に入って来たのは、組合の事務用制服を着た一人の女性だった。
「ああ。すまないが、至急、王都へ早便の手配を頼む」
「はい。それで重要度はどれほどでしょうか?」
「国家機密レベルだ」
組合長から出た言葉に、その女性は大きく喉を鳴らし唾を飲み込む。
「それほどの大事があったのでしょうか?」
「ああ、まあな。この事は他言無用だぞ?」
「は、はい!」
マリナエルスの言葉は普通に喋っているように聞こえたが、彼女を見る視線は、殺気にもにた雰囲気を纏っていた。それは彼女の他言した場合、命の保証は無いと無言で伝えているかのようだった。
「先ずは姫様に申し上げてから、これからの事を考えよう」
そう言っているマリナエルスの顔は嬉しそうでもあり、悲しそうでもあり、とても複雑な顔をしていた。
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