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冒険者組合 6

是非読んでみて下さい。


あれ? そのマルナエリス組合長と言われた女性の後ろに、プルプルと震えているアマネがいるぞ? あ、刀に手が掛かって前のめりなっている。でもそれを、組合長と言われた女性が片手で制しているみたいだ。

と、いう事は彼女が、この冒険者組合のトップで、この白竜丸の元の持ち主で、アマネが尊敬しているローズさんなのかな?

それにしても、威圧感というか、緊張感というか、醸し出している雰囲気が周りを圧倒している。背も高いけど、大柄というより、細見の流麗な感じの体つきなのに、この感じ、まるで刀みたいな人だ。


「初めまして。ローズ・マルナエリス組合長様ですね? 僕、マコトと言います。お騒がせして申し訳ありません」


僕は、ローズさんを正面に向かい、深々と頭を下げ組合内で騒いでいたことをまずはお詫びした。どんな理由があってもやっぱり、迷惑を掛けたら謝るのが筋だよね?


「マルナエリスさん! こ、このガキ、いや、女の子が自分は成人しているとか、冒険者に登録するだの、嘘ばかりつくので、お、俺らが諫めていたんだ!」


片方の男が、僕を指さして、嘘つき呼ばわりしてきた。まぁ、実際の年齢は判らないので、見た目は10才程度だけど、13才にしたんだよね。だからあながち間違いじゃないから、その辺はちょっと気が引けるけど、そこは神様という事で、勘弁してね?


「そうか? 私には巫女の事を愚弄していた様に聞こえたが、気のせいだったのだろうか?」


凛とした声が、ホール中にいきわたる。

このローズさんも天職が巫女のはず。普通ならその巫女を活用出来ず、悩んだはずなのに、それどころか、後職だけで上りつめた元冒険者でクラスAAの超人的な人、とアマネが自分の自慢の様に語ってくれた人。


「き! 気のせいでしゅ!!」


あ、噛んだ?


「そ、それでは俺達、依頼を受けに行ってまいりましゅ、ので、し、しゃきに失礼しまっしゅ!」


噛み噛みで、おじさん二人、この場から逃げるように立ち去って行った。


「さて、立ち話もどうかとは思いますので、皆さん上の私の執務室においで願いますでしょうか?」


先程までの威圧的な雰囲気が無くなり、優しい音色の声で、僕に話しかけてくれる組合長さんに僕が頷くと、ニッコリと微笑んでから先に上へと繋がる階段へと向かいだした。

僕と、アマネ、ルリはその組合長さんの後を追って階段を上がっていく。



「くそ! アマネのやろう! 組合長を連れてきやがるなんて卑怯じゃねぇか!」

「ほんとだぜ! 無能のくせに、ちょっと組合長に可愛がられているからっていい気になってやがる!」

「それに、あのガキも気にくわねぇ! 子供のくせに生意気なんだよ!」

組合の建物から出た二人は、悪態をつきながら、大通りから外れた場末の飲み屋や賭場が並ぶ裏路地を歩いていた。


「そこの冒険者の方々、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですかな?」


二人の男に、この場所には似つかわしくない、黒ずくめのしわ一つないスーツを着た初老の男が話しかけてきた。


「なんだ? おめぇは?」

「失礼しました。私、ラーデンと申します。ある貴族家に仕える者ですが、少々お二人にお頼みしたい事がございまして、不躾ではございましたがお声をお掛けいたしました」


丁寧な言葉と共に、胸に手を当て深々と頭を下げるラーデンに、警戒する二人。


「貴族だぁ? そんな奴が俺たちになんの用だ?」

「はい、お二人は、先程、アマネと、おっしゃられておいでだと思いましたが?」

「ん? ああ、まあそうだが、それがどうしたってんだ?」

「実は、私の主人もアマネ殿の事では迷惑しておりまして、その同じ様な境遇のお二人に力添えが出来ましたらとお考えでございます。つきましては一度お話をお聞き願えないかと、お声をおかけした次第でございます」


二人は顔を見合わせ、ニヤッといやらしい笑みを見せた。


「聞かせてもらおうじゃねぇか。アマネに仕返しが出来るなら願ってもねぇからな」

「では、こちらの店でお酒でも飲みながらお話いたしましょう。もちろん私の奢りでございます」

にやける二人をつれて、黒の紳士は場末の酒場へと入って行った。



「先程は申し訳ございません!」

「え? あの!」


僕は戸惑っていた。

だって僕の足元にマリナエルス組合長が土下座して謝っているんだもの。


「ちょ、ちょっといきなりどうしたっていうのですか?!」

「その様な事決まっております。女神マコト様に対し、あのような下賤の輩に絡まれ、悪態をお聞かせしまった事、この私の監督不行き届き以外の何物でもありません! どうかなんなりとお申し出ください、どんな天罰でもお受けいたします!」


ああ、アマネの師匠だ。同じような雰囲気だぞ。


「そんなことしませんよ。だいたいあれは僕がアマネの悪口を言われて勝手に怒っただけなのですから」

「いえ! あの馬鹿共はマコト様ご本人を貶したのです! これは万死に値します! 私も組合長などという、国から仰せつかった役職がござませんでしたら、その場で首を刎ねていたでしょう」


ほんと、良く似てるよ。でも、役職の事で自制できるところは、さすが師匠と言うべきか?


「とにかく落ち着いてお話しましょう? とりあえず椅子に座りません? アマネも一緒になって、組合長さんの隣で床の上で正座しないの」


僕は、アマネに言い聞かせ、座っていたソファーの横に来るよう、ポンポンとソファーを叩いてみせる。

アマネは一瞬戸惑い、マリナエルス組合長の方をチラッと見てから、立ち上がりそのまま僕の横に座ってくれた。


「マリナエルス組合長も、ちゃんと椅子に座ってください。でないと僕の方が落ち着きません」


僕は本当に困った様に訴えかけると、渋々ではあったがマリナエルス組合長も対面のソファーに座ってくれた。


「これでようやくお話が出来ますね?」

「は、この様に寛大なご処置いただき、なんとお礼を申し上げればよろしいかと」


堅い! 本当に堅物だな。


「処置もなにもないでしょ? 相手に対して土下座をするというのは、その相手に対しても失礼なんですよ? そもそも土下座は相手が自分を見下していると思っているからするのです。つまり相手の事を、人を見下すような程度の人間と思っているという事です。それって結局、相手を見下しているんですよ?」


僕が、土下座を止めさせ、それを僕が良く思っていないことを告げたのだけど、何やら組合長とアマネが僕のことをジッと見つめて、目に涙を溜め始めていた。


「な、なんとお心の広いお方だ!」

「マコト様、凄いです! 土下座一つでそれだけのお考えを示すとは、このアマネ今ここで全てを捧げさせていただきます!」


こらこら! アマネ服を脱ごうとしない! ちょ、ちょっと組合長さんまで服に手をかけない!


「お母さま、別にいいじゃないですか? アマネ姉さまを受け入れても?」

「ルリまでなんてこと言うんですか?!」

「え? でも神様の眷属となった巫女は全て身も心も全てさらけ出し、主神に委ねることで、より繋がりを深くするものなんですから」

「え? そうなの? でも女の子同士だよ?」

「それが何か?」


ええ~! それが普通なの?


「それに受け入れてあげないと、嫌われたと思って命を絶つ者も以前はいたと聞きますよ?」


ルリ、そんな怖い事言わないでください。


「マコト様、私では駄目ですか?」


か、顔から火が出そうだ!! そんな切なそうな顔を僕に近づけたら駄目だって!!


「わ、分かったから! と、とにかく僕の気持ちが落ち着いたらちゃんと考えるからね! 今はちょっと待ってて!」


そんな残念そうな顔しても、さすがに簡単にはできません!

マリナエルス組合長さんも、そんな物欲しそうな、羨ましそうな顔しないでください。


「コホン! 取り敢えず話を本題に戻したいのですが、僕は当面普通の冒険者として過ごしたいのですが、手配できますでしょうか?」


僕はもともとの用事をマリナエルス組合長にようやく話しすることができた。


読んでいただいてありがとうございます。

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