冒険者組合 5
組合で一悶着です。
「へぇ~、マコトさんの契約精霊なんだ? 見た目はもっと小さく見えるが、13才だったよな? それでも凄いじゃないか。その年でどんな低位精霊といえども契約できるなんて、天職が魔導士を持つ人でも特に才能があるんだな!」
ルリを見ながら、凄く僕のことを褒めてくれた。でも、本当は大精霊、高位の中でも最上位の高位精霊なんですけど・・
とにかく、バルガさんが僕のことを褒めてくれるので、アマネもルリも物凄く喜んでくれていた。
「当たり前です! マコト様に不可能はありません!」
街中で声高らかに宣言しているアマネ。
「お母さまは、まるで女神様のようなお方です!」
ぶっ!!
「げほっ! ごほ!! こ、こら! ルリ!」
「「事実です!」」
「そりゃぁ、すげえな! アマネがそこまで他人を褒めるなんて初めてかもしれんな。それほどマコトさんの事が好きなんだ? いやぁ~めでたいな! がははは!」
バルガさんは、女神っていうのは冗談に聞こえたようだ。
ルリにはあとでちゃんと言い聞かせなきゃ! 心臓に悪いよ。
「お、冒険者組合の建物だぞ。俺はまだ、街の巡回中なんでな、ここまでだな。また後で遊びに来い! おいしい飯でもおごってやるからよ!」
「は、はい! ありがとうございました。」
がははと、笑いながら街の中へと消えて行った。
豪快な人だな。でも気さくで良い人だというのが、滲み出ている感じのするおじさんだったな。
「マコト様、入りましょうか?」
「ん? うん、行こう。まずは冒険者登録だね」
「はい、では。」
アマネは、しっかりとした石造りの冒険者組合の建物の扉を開け、中へと入って行く。僕とルリもその後を追って入っていった。
それにしても大きな扉だな、僕の背の高さの4倍くらいはありそうだな? まぁ、僕も小っちゃい方だとは、思うけどね。なにせアマネの胸くらいの所に僕の顔があるくらいだもん。
「お母さま、何か閑散としていますね?」
僕の耳元でルリがキョロキョロと辺りを見回しながら呟いていた。
「確かに、人が少ないね?」
幾つかのテーブルと、椅子が大きなホールの中にあり、所々には、人が座ってはいるけど、空席率は結構高い。天井も高いしホールが大きいからそう感じるのかもしれないけど、それにしても人が少ない。冒険者って流行ってないのかな?
「マコト様、今はもう朝の九つの時をだいぶ過ぎていますからね、朝の早い冒険者にとってはもうかなり遅い時間帯なんです。大抵の方は、仕事を見つけて出ていますから人が少ないのですよ。もう少しして昼頃とか、夕方、日が暮れる前は多いですよ?」
なるほど、今は皆が働いている最中ということか。変に目立たなくていいから、かえって良かったかも?
「マコト様、そちらの席にでもお座り下さい。私が受付で話をしてきますから」
「うん、よろしくね」
「は?! はい!!」
僕が返事をすると、笑顔になったアマネが受付にいるお姉さんに向かって行った。ちょっとスキップしているように見える?
「あ~あ、お姉さまったら、お母さまに頼まれ事をされたのが、よっぽど嬉しかったんでしょうね」
え? そんな事で嬉しいの? ルリの言葉に半信半疑な僕だけど、アマネがウキウキしているのを見ると、あながち嘘ではないようだ。
「おい、あれ、アマネじゃねえか?」
「ん? お! 本当だ。無能のアマネじゃねえか。まだ生きていたんだな」
ん? なんだ? アマネの事を話ししているのか?
机を二つ程離れた場所に、一人は重装な金属鎧に身を包んだ、顎髭の男と、濃いぃ紺色お魔道ローブに身を包んだ、細見の男の二人が、アマネの方に視線を向け話しているのが聞こえてきた。
「いくら、魔操のレベルが高い方だからと言っても、天職があれだしな、治癒士で、パーティー組まずに単独でやっていくほど冒険者は甘くねぇっての。俺らのパーティーにでもくれば、守ってやりながら、ランクポイントだってやるし、その上に可愛がってやろうって言っていんだぜ? それを断りやがって」
今、もの凄くカチンときた。一応、僕って神様だけど、身内の事をこんな言い方されたら嫌だって思う。それでも許すのが神様なんだろうか? でもやっぱり、
「おい、おっちゃん達 僕の家族を馬鹿にするのはよしてほしいんだけど?」
僕はやっぱり黙っていられなくて席を立ち、悪態をつく男二人が座る席の前にいた。
アマネを侮辱されるのは、僕自信を貶されるより我慢できないみたいだ。
「なんだ? ガキじゃねえか? 何しにこんな所にいるんだ?」
「何しにって来ようと、おじさん達に関係ないじゃない。それよりアマネを侮辱したり、変な目で見るのは止めて欲しいんだけどね」
僕はあまり本気で睨みつけないようにしながら、おじさん二人にアマネへの侮辱の言葉を止めるように促す。けど、一瞬ポカンっとなっただけで、すぐに人を馬鹿にした顔で僕のことを見だした。
本当は、思いっきり睨みつけたいんだけど、そんなことしたら、普通の人間だと気がふれるかもしれないと、ルリが言っていたのでやらないけど、この顔見ているとつい睨んでしまいそうになる。
「ガキがなまいき言っているんじゃねぇ! だいたいガキを冒険者組合に連れてくること事態、なめてんだよ!」
「僕は、13才だ! 冒険者に登録するために来たんだ! おじさん達に文句をいわれる筋合いはないよ」
「はあ? こんなチンチクリンが13才? 成人してるってのかよ? こんな色気も何もない成人した女がどこの世界に居るってんだ?!」
「ここに、いるじゃない!」
「プ、ブァハハッハッハ!!! 背が小さすぎて見えないぞ! それに前か後ろか判らなねぇ胸してるくせに何が成人だって? 笑わせるぜ!」
う、う~背のことと、胸のこと言うな! 自分でも13才は無理があるかもしれないとは思ってるけど、しかたないだろ! そうしないと冒険者登録できないんだから! それより僕のことよりだよ!
「まぁ、別に僕のことはいいんだよ! それよりアマネに対しての侮辱の言葉は、取り下げろ! アマネがどれだけ苦労しながらも頑張ってきたか知らないのに勝手な事ばかり言うな!」
「は! 無能を無能って言って何が悪いんだ! 天職が巫女なんて誰も拾ってなんかくれないぜ? まぁ、アマネの奴は後職で治癒士を持ってるからな、使い様はまだあるが、それでも俺達みたいなCランク以上の冒険者と組んでなんぼのもんなんだよ!」
こいつらCクラスなんだ? そうは見えないけど? Cって誰でもなれるのか?
「ほう、天職、巫女は、そんなに無能職なのか?」
「え?」
僕は、綺麗な声がしたので後ろを振り返った。
「当然じゃねぇか! 神に仕えるのが巫女だろ? でもその神が居ない世界・・・・ん?」
「ひっ!!!」
二人のおじさん達は、その綺麗な声の主を見て、2歩ぐらい後ずさった。
「私も、天職は巫女なんだがな?」
僕のちょううど後ろ、おじさん達の正面に、背が高くスラッとして鍛え抜かれた体と言うのが最も合っている感じのする、綺麗な女性が仁王立ちになって立っていた。
「マ、マルナエリス組合長!!」
二人のおじさんは、その名を口にした途端、席を立ち、直立不動で固まってしまった。
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