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冒険者組合 3

投稿いたします。

「せっかく、マコト様がレッドドーラを倒し助けていただいたと言うのに、このような暴挙は許せません! 即刻処刑しましょう」

「コラ、コラ、アマネまた暴走しているよ。まずは落ち着いて、ね?」

「ですが! この男、マコト様に助けられたというのに・・・」

「別に、僕はなんとも思ってないから、ただアマネに吐いた言葉は許せないけどね」


僕はなるべく優しく言いっているつもりなんだけど、この男を見るとどうしても睨みつけてしまうようだ。おじさんの顔色が悪いもの。

あ、そうか、アマネに腕を握り潰されそうになっているせいか?


「アマネ、もう放してあげて」


僕のお願いに、アマネは少し躊躇いながらも、聞き入れてくれた。


「くっそー! 腕が千切れるかと思ったじゃねぇか! だいたいこの獲物は俺らの獲物だったんだぞ! それをお前たちが急に現れて偶然倒したのに、それを助けただと? 馬鹿な事を言うなよ? 俺達が深手を負わせていたから、こんなクソガキの蹴りで死んだんだ。いい加減な事言うなよ!」


あ、このおじさん駄目な人だ。素直にありがとうって言えない偏屈な人だ。

僕はアマネに耳元を近づけるように手招きする。

近づいたアマネの耳の口を寄せ小声で聞いてみた。


「アマネ、この人誰? 知っている人なの?」

「この男性は、レントゥール子爵家の次男で、ロエバルバと言います。一応Cクラスの冒険者で、事あるごとに私を自分のパーティーに勧誘してくるいけ好かない男です」


相手に聞こえないように小声で話すアマネだけど、本当に嫌なんだろうな。せっかくの美人なのに眉間にしわを寄せて台無しになってしまっていた。


「この落とし前どうするつもりなんだ? 人の獲物を横取りするは、貴族の私の腕に一生、残る傷を残したんだ、それ相応の代償で償ってもらえるんだろうな?」


なんだこの人? 自分で何言っているのか、分かっているんだろうか?

それより・・


「ルリ、アマネ、彼女達、怪我しているみたいだから、治療してもらえる?」


僕は、この頭の悪そうな貴族の暴言よりも、その傍らで蹲ってしまっている、彼女達の傷の方が気になっていた。


「はい、お母さま」

「マコト様がおっしゃるのでしたら」


二人は、僕のお願いを聞いてくれ、二人の女性にそれぞれが近づいていった。


「あの、良いのですか?」


露出の多い防具姿の剣士の女性が、僕の方を見て少し怯えているような感じで訪ねてきた。


「良いも、何も、怪我している人を放っておけるほど、人でなしではないつもりですから」


実際に、人ではなく神なんですけどね。


「あ、ありがとう・・」


女剣士は小さく呟いてお礼を言い、魔導士の女の子は小さく首を縦に振ってくれた。


「おい! 何勝手なことしてやがる! こいつらは俺のパーティーの女なんだぞ! 俺の許しもなく勝手な事をするな!」


ああ、いい加減この人、鬱陶しいです。どこかに行ってもらえないでしょうか?

僕がそう思っていると、アマネが一瞬刀に手を掛けた。


ファサ・・・


「ひいぃぃぃぃぃぃぃぃい!!」


たぶん自分の目の前で起こった事が見えなかったんだろう。アマネは一瞬で刀を抜き、息巻いている、ロエバルバの前髪を見事に切り落としていた。

一瞬何が起こったのか分からない顔をしていた、ロエバルバだったが、自分の髪がヒラヒラと落ちるのを見て尻もちをついていた。目を大きく見開き、身動き一つ出来ないロエバルバを、チラッと一瞬見たあと、アマネは治療を再開し始めていた。


女剣士は二の腕と太もも等に多数の切り傷や打撲の痕があり、魔導士の子は脇腹の辺りをかなり深い傷が見えた。致命傷ではないのだろうかえど、すぐに治療した方が良いのは誰の目にも明らかなのに、この馬鹿貴族は治療を断ろうとしたんだ。

いつか天罰がくだるかもね? 

・・・・・あ、それって僕の仕事か?

馬鹿貴族が黙っている間に、ルリとアマネが治癒魔法で、傷跡が残らないほど完璧に治療を終えていた。

改めて見ると魔法ってやっぱり凄いな。


「あ、ありがとうございます!」

「あ、ありが・・とう」


女剣士と魔導士の女の子がルリとアマネにそれぞれお礼を言うと、僕の方にも近づいて頭を下げてお礼をしてくれた。

良い娘じゃない。なんでこんな馬鹿貴族に従っているんだろう? 


「あまり無茶しちゃ駄目だよ? あんな魔獣を相手にするには冒険者クラスも人数も足らないよ?」

「はい、でもご主人様の命令は絶対ですから・・」


女剣士の方が、俯きながら小声でそう言っていた。


「マコト様、彼女達の首に、呪縛の首輪が嵌められています。あれは強制奴隷に用いる契約の首輪です」

「はあ? 何それ? そんなのが存在するの?!」

「はい、残念ながら」

「それって違法とかじゃ・・」

「いえ、奴隷制度そのものは合法です。犯罪者に対してその罪の重さによって課せられる贖罪ですので。ただ彼女達の物は、重犯罪者用で、主人の命令に逆らう事を許されていない最も過酷な物です」


僕は、あの馬鹿貴族を睨みつけていた。どう見ても彼女達がそんな極悪人には見えない。絶対におかしいよ!

僕は申し訳ないと思いながらも彼女達の状態表示を見る事にした。


『レリーア 人族 女 22』

『天職:剣士』

『後職:無』

『魔操位:28』

『天職特性:無』

『付属特性:強制奴隷契約 主:ダカバ・レントゥール 重罰刑(冤罪・非表示、主権限により)』


『カルナ 人族 女 16』

『天職:魔導士』

『後職:無』

『魔操位:62』

『天職特性:無』

『付属特性:強制奴隷契約 主:ダカバ・レントゥール 重罰刑(冤罪・強制非表示、主権限により)』


なんだ? アマネには無かった付属特性に奴隷と確かになっているし、重罰という文字はある。けどこの冤罪ってなんだ? それに非表示? 主の権限で? つまりこの娘らの罪は実際は犯していない事なのに罪をかぶらされ、その上、強制的に表示が見えないようになっているってこと?

つまり、濡れ衣。

そしてその事を隠している、主、つまりそれは、ロエバルバ!

こんな事がまかり通るのか?

いったい神様は何をしているんだ! 

・・・そうか、これが神がいないと、いうリスクの一つなのか・・・


「マコト様、どうかいたしましたか?」

「い、いや、何でもない」


「おい! お前! その奴隷にそれ以上ちょっかいを出すな!」


僕は反射的に、ロエバルバを睨みつけていた。


「ひっ!?」


ダカバは、一瞬で顔を青くし、その場に立っている事が不思議な程、体中を振るわせていた。

煌びやかに金糸で刺繍が施されたズボンからは、白い湯気が立ち上がり、鼻をつく異臭が周囲に流れだす。


「いけません! マコト様! 気をお静めください!!」

「お母さま!!!」


アマネとルリの声で、ハッと気づいた。僕、今、このロエバルバを射殺そうとしていた?


「ご、ごめんアマネ、ルリ」

「いえ、たぶん何かあったのでしょうが、人を殺めるのには神といえども、それ相応の根拠が無いと神威に陰りが生じますので」


心配そうに僕をのぞき込む二人。心配をかけてしまった。


「こ、こ、この、クソガキ! このままで済むと思うなよ! レントゥール子爵家にたてついた者がどうなるか、後で後悔させてやるぞ!」


勇ましい言葉を発しているようだけど、それだけ声が上ずって、腰が立たない状態で後ろに下がっていっても迫力は微塵も感じませんよ?


「おい! お前ら! 私を助けろ! なんのための奴隷だ!」


相変わらずの悪態をつくダカバ。腰が抜けて立てなくなったので、彼女らに担いでもらおうとでもいうのだろうか?


「クスッ」

「えへへへ」


レリーアとカルナが、ロエバルバに見えないように小さく笑っていた。


「マコト様、でしたね。少しすっきりしました。あれほど滑稽な物を見られて面白かったです」

レリーアが、小さな声で呟くと、本当に小さく頭を下げてからロエバルバの方に向かった。

そして、カルナも僕の方を見て少し笑ってくれたようだ。


「マコト様、これ以上あいつに関わらない方が良い。でも本当に嬉しかった」


カルナもそう言い残し、ロエバルバの方に駆け寄り、二人が主人の両肩を抱きかかえ、僕達がいる方とは反対の方に歩き出していった。


「お前ら! 絶対に許さんからな! 覚悟しておけよ! お、お前たち! もっと優しく抱えろ!」

「!!」

「アマネ、石投げても良い?」

「我慢してください」


石を投げるのは渋々だけど諦めたけど、このまま終わらす気も全然ない僕だった。


また来て読んでやってください。

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