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冒険者組合 2

投稿いたします。読んでいただけると嬉しいです。

「マコト様、もう少しで、大きな街道に出ます」


僕の前を歩くアマネが、森の中の草が生えていない荷馬車が一台通れるくらいの小さな道を進みながら、伝えてくれる。

そういえば、周りの木々も背が低くなってきている気がするし、木々の生えている間隔も少し大きくなって、森全体が明るくなってきているようだ。


コルコネ村から出た僕達は、かれこれ3時間くらい、地を走り、木々を飛び、それなりに急いで進み続け、木の枝が小さくなってきた事と、これぐらい森の浅いところだと、獣や低位の魔獣くらいしか出ないと言うので、普通の道を歩く事にした。


「これぐらいの森の中だと、冒険者達の主な狩り場になっていますから、遭遇する可能性がありますので、もし偶然に出会ってしまって、私達の身体能力を見られるのもどうかと思いますのでここからは普通に歩きます」

「それぐらい慎重にした方が良いという事だね?」

「はい、これくらいならAクラスの冒険者なら普通ですけど、Aクラスの冒険者自体が珍しいですし、一応、マコト様は見た目上、13才としていますし(それでもかなり無理がありますけど)冒険者としては無登録ですから、自嘲した方がよろしいかと」


さすがアマネだね。色々と僕のこと考えてくれているんだ。


「ありがとう、アマネがいてくれて本当に頼もしいよ」

「そ、そんなこと・・・」


そんな僕の言葉で赤くなるアマネも良いね。

それにしても、他の人に会う事もそろそろあるのか? 考えてみたら、コルコネ村の人達と会うのは初めてだよね。ちょっと緊張しちゃうかも。


「ねぇ、ねぇ、お母さま」

「どうしたの、ルリ?」


僕の肩の上にちょこんと乗っていたルリが右の方向、木々の向こうを眺めながら、話しかけてきた。


「あのね、向こうの方で、魔獣が暴れているみたいなの」

「え?」

「う~ん、この気配は、レッドドーラみたいだよ?」

「ちょ、ちょっと待って! レッドドーラって中型の魔獣でも凶暴な種類ですよ?! そんなのがこんなところにいるなんて普通ありませんよ?!」


アマネの驚いた表情が、そのレッドドーラという魔獣、あまり好ましくない存在なんだろうな、というのが分かる。


「ルリ、でもよく判るね?」

「だって、この森、おじいちゃんの森だもん。全ての木々や草花から情報が常に集まるから、大きな変化があればすぐに判るよ?」

「へぇ、凄いね! それってこの森だけなの?」

「違うよ。他の森でも大抵は繋がっているからだいたいの事は判るんだけど、この青の森以外にも、赤とか白とかあるんだけど、そこにはそれぞれの大樹が管理しているから、情報は集まりにくいと思うの」


ちょっと、顔が沈むルリの頭を人差し指で撫でてあげる。


「それだけでも十分凄いよ。危険察知が早く出来るのは助かるからね。これからもよろしくルリ」

「うん! 私、頑張るね!」


うん、機嫌が良くなったみたいだ。


「あれ? この気配、人がいる。まずいよ! レッドドーラはその人間達を襲っているんだ!」

「え?!」

「マコト様! レッドドーラは冒険者でもBクラスの者が数名でやっと対等に戦える魔獣です。どんな人物か分かりませんが、まずいかもしれません!」

「ルリ! 状況は判る?」

「う~・・・・!人間の方が押されている? 血の匂いも感じる・・これは人の血だよ!」

「ルリ! 方向は?!」

「えっと、あっち!」


僕はルリが指し示してくれた方向を確認して、一気に飛び出していた。


「マ、マコト様!?」


驚いたアマネの声が後ろの方でしたようだけど、今はそれどころじゃない。レッドドーラっていう魔獣がどんなものか知らないけど、近くで人が襲われているんだから助けに行かなくちゃ!


「お、お母さま! は、早い!」


ルリが何か耳元で言っている気がするけど、風の音が凄すぎて良く聞こえないや。

僕はとにかく少しでも早くと思って、突き進む。

何故か木々が避けてくれているみたいに感じるほど、ほぼ真っ直ぐに進むことが出来る。

すると、前方から圧力というか、前に進ませない抵抗みたいなものを感じ始めていた。

これって、魔獣の力なのかな?

僕はその圧力に負けまいと、さらに前へ進む力を増していく。


「え?!」


突然だった。そう本当に突然に変わったんだ。

今まで木々で囲まれていたはずなのに、一瞬で開けた場所で出たと思ったら、目の前に大きく口を開けている獣の姿が飛び込んできた!

僕は咄嗟にルリを手で庇うと、勢いの付いたまま前のめりに傾きクルっと空中で前転していた。


ドッカガァーンンンン!!!!


一瞬何が起こったのか自分で判らなかった。空中で回転したまでは覚えているんだけど、足の方に衝撃があってその後どうなったんだ?!


「マ、マコト様!!」


あ、アマネの声がする。


「おーい! アマネこっちだよ」

「よ、良かったぁ。ご無事だった・の・・・です・・はぁ、無茶しないでください」


あれ? アマネの顔があきれましたって書いてある気がするんだけど・・・


「お母さま、足元ですよ」


ルリが耳元で教えてくれたので、自分の足元を見てみる。

お! なんだこれ、デッカイ虎みたいな獣が僕の足元でのびている? いや頭蓋骨が割れている? 眉間辺りから血が流れて白目むいているし、口からは泡吹いている。これって完全に死んでいるよね?


「ねぇ、アマネ。これって死んでいるよね?」

「そうですね」

「これが、そのレッドドーラなのかな?」

「そうですね」

「これって僕がやっつけちゃったのかな?」

「そうですね」

「どうしよう、勢いで殺しちゃったよ。可哀想なことしたかな?」

「そうですね」


うう、アマネが、怖いです。


「マコト様、自嘲してくださいと申し上げましたよね?」

「・・はい」


両手を腰に当てて、グイっと僕の方に顔を突き出しながら、少し怒った顔のアマネ。


「つい、人が襲われていると聞いたら体が勝手に・・ね」


僕は、めいいっぱいの笑顔をアマネに見せてみたけど・・・


「マ・コ・ト・様」

「ごめんなさい!」


僕は思いっきり頭を下げて謝った。でも頭を下げた視線の先に白目をむいて死んでいるレッドドーラが目に入って・・・アマネの方が怖いかも、なんてつい考えてしまっていた。


「あの~、君達、いいかな?」


僕と、アマネに怒られているところに、恐る恐るといったふうに青年が言葉をかけてきた。


「はい? あ、ああ、大丈夫で・・ちっ!」


あれ、アマネが似合わない舌打ちをしたような? それに顔がさっきと違って穏当に嫌悪感、丸出しで怖い顔している。どうしたんだろう?


「あれ? なんだぁ! 無能のアマネじゃないか。どうしたんだい? 最近は森の奥に籠っていたんじゃなかったのかい? それともお金に困って出稼ぎかな? 辛いねぇ、まともな職業を授かってない者は。はははは!」


なんだこいつ? いきなりアマネに酷い事言い始めやがって。

見た目は、ちょっと優男風だけど、まあ綺麗な顔立ちの上、金髪、ブルーアイでスラッと背も高く、それに装備している防具や刀が豪華絢爛とうか、無駄に金がかかっているというか、もろ金持ち! をわざと表現している、まあモテル要素がありそうに見せているイケメン男だ。

実際、両隣に何故かビキニみたいな露出の多い防具を身に着けた、色気を出しまくっている女性と、これまた際どミニスカートに横から胸が見えるんじゃないかと思える程の大胆なカットの服装をしている魔導士っぽい女の子を連れている。

こいつの趣味か? ちょっとムカつく。


「おじさん、いきなりアマネに、失礼でしょ。謝ってください!」

「お、おじさん?! 何を言いやがるこのクソガキが!」


お、おじさんと言っただけで、いきなり僕に殴りかかってきた。けどその攻撃は届くことはないよ?


「ぐ! な、何だ!?」


優男おじさんは、振り下ろした腕を、アマネに片手で防がれ、しかもがっしりと握られて振りほどけないでいた。


「マコト様に手を上げるとは、死に値します。首を刎ねてよろしいでしょうか?」

「ひ! な、何を言いやがるこの!」


アマネの本気の視線をぶつけられて、必死に逃げようと抵抗するも、捕まった腕がアマネから逃れることは出来なかった。


ありがとうございました。

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