大樹 7
投稿いたします。読んでいただけると嬉しいです。
「ねぇ、アマネ?」
「なんですか? マコト様」
「僕って何歳くらいに見えるかな?」
コルコネ村へ戻る途中、僕はこれから旅に出るとして、自分やアマネ、ルリをどう位置づけるか悩んでいたので、アマネに相談することにした。だって世界を旅するにしても、いきなり神様だよ~、とか天職が開放された巫女です、とか大精霊なんだよぅ、とか簡単に言えないじゃない?
「え~っと、その神様は見た目では判断できないのですが、幼生体のマコト様なら見た目通りでよろしいかと思いますので、10才くらいではないでしょうか?」
そっか、10才か。
「でも、10才の女の子が子持ちと言うのは問題無いの?」
「・・・・・・・・ありますね、でもルリさんは精霊ですから、精霊と契約した魔導士は結構いますし、その契約精霊が、主人を母様とか父様とか言うのは、ありえる話ですから、まず大丈夫じゃないかと思います」
「そうなんだ?」
その辺りは大丈夫か。すると僕は魔導士辺りを天職と言った方が無難そうだな。
「でも、お母さま。私って大精霊みたいなんでしょ?」
「う、うん。僕にはそう見えたよ?」
あの時の状態表示で、ルリは大精霊だと表示されていたはず。
すると、ルリが僕の肩の上に座ったまま腕を組んで悩み出した。あれ? アマネも難しい顔をし始めたぞ?
「普通の人で成人前の女の子が大精霊と契約しているなんていったら、各国の軍部や研究機関が黙ってないかも・・・」
お、恐ろしい事、言わないでルリ。
「そんな事になったら、目立ってしまって旅がしにくくなるんじゃ・・」
「マコト様、問題はそこじゃありませんよ?」
ちょっと呆れ顔のアマネ。
「大精霊を従える存在で、こんなに神々しく可愛らしいお方を見れば皆、すぐにマコト様が神様だって判ってしまいます。そうなると、今のエルデリード世界では、神はあまり良い印象がありませんから、石とか投げられたり、暗殺しようとする者が現れるかもしれません」
さらに、恐ろしいことを言われるアマネ。う~、前のエルデリード神の奴! どんな事をすればそんなに嫌われるんだ?! 恨んじゃうぞ!
「そうよね、エルデリード神を祀る、聖教会なんか、信者は集まらない、寄付金も集まらない、穀潰し集団と蔑まれるような状態ですから、そこへお母さまが神だと判れば、民衆から袋叩きにされる可能性だってあるかも?」
ルリが追い打ちをかける。
何だか、急に旅に出るのが嫌になってきたかも・・・
「あ、でも、そんな人たちは半分くらいしかいませんから。マコト様がまともな神様だって判れば、慕ってくる者は必ずいますし、実際に神威をお見せになって人々を救えば必ずマコト様の凄さと可愛らしさが伝わるはずですから」
は、半分くらいはいるんだ。それだけの人が石を投げつけてくるかもしれないんだ。結構危険じゃないか?
それに慕われるのに可愛らしさは、あまり関係ないと思うよ?
「とにかく、当分は神様だって事を隠して行動した方が良いと思います」
確かにアマネの言う通りなんだが・・
「その、旅をするのに通行証とかいるのかな?」
「はい、それでですが、取り急ぎ冒険者組合に登録しようと思うのですがどうでしょう?」
冒険者組合? ん? なにかワクワクする言葉だぞ?
「それって、旅するのに都合が良いの?」
「はい! 登録すると組合員の証明書を発行してもらえます。その証明書があれば、国が発行する通行証より、簡単に各国の国境を超える事ができます。ただしCランク以上にならないと国境の自由通過は認められませんけど」
Cランク? つまり実力とか、ポイントとかでなれるクラス分けみたいな事かな? でもそれだけの特典が付くのなら、Cランクには簡単になれない気がするんだけど・・・
アマネの表情は何か自信ありげに見えた。
「Cランク、なれるの?」
「はい、実は私こう見えて現在Dランクで登録されているんですよ。その私の紹介で身元保証すれば、通常Fランクから始まるのを免除されてEランクスタートできます。さらに組合の試験官と模擬戦を行って実力が認められれば、Dランクになれます。そして優秀な人材を紹介したという事で、私にもポイントが加算されて、Cランクアップはほぼ間違いありません。そうすればマコト様と私がパーティーを組んで、Cランクパーティーとして、国境超えが可能になります」
「ん? Dランクパーティーじゃないの?」
「え? マコト様が優秀であると認められていますから、限りなくCに近いDという事で、切り上げCパーティーとなるんですよ」
嬉しそうに言うけど、僕が優秀だと信じきっていますね、アマネ。
「それに国が発行する通行証は申請してから、1年近くかかりますから」
それは却下で。そうなると冒険者組合登録が一番良いか? ちょっと頑張ろう。
「ただ一つ気になるのは、疑わしい状況が出たり、その者の能力を調べる時に魔道鑑定をする事があるので、その時にマコト様が見られている状態表示に近い事がおおよそ判るんです」
「ま、まずいじゃん! そんな事になったら一発で神だってばれてしまうんじゃ・・」
「そこでなんですが、状態表示を改ざん表示できませんか?」
「改ざん? 出来るの?」
「マコト様なら、大丈夫ですよ!」
「そうね! お母さまならきっと出来るわ!」
根拠の無い、自信を胸はって言わないでください。
でも、他に良い方法が無いのならやってみるしかないか。
「と、とにかくやってみる」
僕は、まずルリの頭に手を軽く乗せ意識を集中させた。
ん~・・・あ、出た。よしこれを書き換えられるか? ん? 文字が・・触れる! 動かせそうだ! これなら出来そうかも? んしょ! こうして、ん、こうで、これならどうだ! っと。
「あ!!」
よし、こんなところか?
『ルリ(精霊(幼生体){(元、青の大樹・現、青の世界樹の分身)非表示} 0歳』
『天職:木の精霊{(世界樹の大精霊)非表示}』
『後職:無』
『魔操位:98{(238)非表示}』
『天職特性:人族契約{神族契約(マコト・エルデリード神(幼生体)非表示}』
まぁこんなところかな?
ん? あれ、ルリどうしたの? 顔赤いよ? それに息が荒いけど?
「お母さま・・もっと」
「駄目だよ? これ以上は変える必要ないからね」
僕が駄目出しをすると、なぜかプーッと頬を膨らませ機嫌が悪くなった。
「どうしたの?」
「なんでもないもん!」
やっぱり怒っている? まぁ良いか。それより僕とアマネの状態表示を改ざんしないとね。
「アマネ、次は君の番だよ?」
「は、はい! は、初めてですので優しくお願いしますね」
顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに呟くアマネだったが、どこかソワソワして期待感を感じるのは気のせいだろうか?
その後も、改ざんを続けて、なんとか状態表示を魔道具で見られても、許容範囲内の内容に収まったと思う。
ただ、何故か、ルリはケチ!もっとして!とか叫ぶし、アマネはヘナヘナと腰から崩れ恍惚な表情を見せていたのは何かあったんだろうか?
取り敢えずこれで、僕が神だって事がすぐにばれる事はないだろう・・・・たぶん。
とにかく一旦戻って旅の準備をしよう。マリア村長とドルガさんにはお世話になったからちゃんと挨拶しないといけないな。
僕は、これからの事を考えながら、再びコルコネ村に向かって走り出した。ルリは? アマネの肩に乗っかって僕の後を付いてきてる。
ありがとうございました。