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大樹 3

大幅な改修いたしました。

「試練ですか?」

『そうじゃ。その試練を乗り越えられたら、世界神としてお前さんを認め、わしもお前さんが立派な神になり、神の威信を復活させる手伝いをしてやろうではないか』


「それは心強いのですが、もし試練に失敗したらどうなるんですか?」

『その時は、お前さんが勝手に頑張るだけじゃ。それとアマネはこのまま、わしへの祈りを欠かさずさせる。何処へもやらんぞ?』


結構勝手な言い分をしてくる大樹さんだな。

取り敢えず、試練を乗り越えなくても、アマネの事以外は邪魔するわけではないんだ。でもアマネの事を認めてもらう為に来たのに、これでは話にならない。

ならば。


「アマネ、君はどうするの?」


話を僕の後ろでずっと聞いていたアマネに、聞いてみた。


「私は、マコト様について行きます。青の大樹様、私はマコト様のもとで幸せに巫女を務めさせていただきます。今までありがとございました」


きっぱりと言い切るアマネ。


『ちょ、ちょっと、アマネ! 何を言っているのじゃ? わしが試練を乗り越えないと、お前を連れ出すのは、許さないと言っているのじゃそ?』


慌てた声で、青の大樹が反論するが、当のアマネは涼しい顔で、どうして? といった風に頭を傾げ不思議がっていた。


「別に、大樹様の言う通りにする必要があるのですか? 私にとって大樹様かマコト様かと問われれば、断然マコト様なのですから、あなたの駄目出しは何の関係もありません!」

『そ、そんなぁ~、わしとアマネは長い付き合いではないかぁ、そんな悲しい事を言わんでくれ』


大樹様、泣いてないか?

つまり、大樹様はアマネに居て欲しいんだ。それなら試練なんて言わなくてちゃんといて欲しいと言えばいいのに。


「大樹様、そんなにアマネに居てほしいのですか?」

『な! そ、そんな事あるわけないじゃろ! わしは数千年も生きる世界樹なのだぞ! ひ、一人の人間に執着するわけがなかろう!』


強がっているのが、まる分かりです。


『わしを侮辱するなら、世界神とはいえまだ幼生体のお前なんか、ここで叩きのめしてやる! そうしたらアマネだって、わしの方が良いと言ってくれるはずじゃ!』


逆切れする大樹。その気配に呼応するように、枝が動き葉が騒めきだし始めた。

その枝が、急激に伸び始め、奇妙な動きをしながら拡散し始め、襲い掛かろうと枝の先が鋭利な刃物の様になって僕に向けられた。


「・・いくら大樹様でも、それ以上されるなら、覚悟していただく必要があります。」

「あ、アマネ?」


後ろの方で待っているはずのアマネが、抜刀した姿で、僕の前に立ち、青の大樹と対峙するように現れた。

その姿は、凛々しくて力強かった。

そんな、アマネに青の大樹も怖かったのか、震えているような気配を感じた。


『ば、ばかな! こんな、ちんちくりんな女神なぞ誰が敬うというのだ!?』


あ、アマネ、雰囲気が・・・


「今、なんと、言いましたか?」

『ひ!』


目が座っている。


「私のことならいくらでも貶して下さってけっこうですが、マコト様を侮辱するのは、許す事の出来ない悪行! 万死に値します。今まで神聖なるお方と思い朝の御勤めを続けてまいりましたが、それも今日で最後にいたします」

「あ、アマネさん?」


冷たい視線を大樹に向け、表情一つ変えることなく、刀を大きく振りかぶり静止した。

すると刀身がみるみると赤く染まり始め熱を帯びてくる。


「炎獄刀! 発!!」


アマネの発する声に呼応したかのように、一瞬で刀から炎が噴き出した。


『や、やめてくれ! アマネ! 冗談じゃ! 冗談!』


「冗談ですって? 誰が信じますか? たとえ冗談だったとしても、マコト様を侮辱することは許しません!!」


そう言って、アマネは躊躇なく燃え盛る刀を大樹目掛けて降り下ろした。

・・・はずだったようだが、間一髪で僕が間に入り込み、アマネの刀を受け止める事に成功した。やっぱりアマネの刀は僕に危害を加える事は出来ないみたいだ。何となくそれが分かったから素手で受け止めたけど、ちょっと無茶だったかな?

アマネの顔が蒼白になっていたからね。


「マ! マコト様! なんて事をされるんですか!」

「え? 大丈夫だよ、ほら?」


そう言って刀を受け止めた手をブラブラとさせて怪我をしていないことを見せてあげる。


「そ、それでも、もし何かあったらどうするんですか! そんな事になったら、わ、私、私は・・・」


や、やばい! アマネが泣き出してしまった!


「ご、ごめんね! アマネ。もうこんな事はしないからね、ね?」

「本当ですか?」


う、その上目使いは、卑怯なほどに可愛いじゃないか!


「ほ、本当だよ!」

「約束ですよ?」

「う、うん!」


僕が頷くと、涙を拭きながらニッコリと笑ってくれた。


ふう、とにかく機嫌が治って良かった。何となく自信はあったとしても素手で刀を掴むのはさすがに軽率だったかな? でもあのままだと本当にアマネ、大樹様を斬ってしまいそうだったからね。そこまで僕の事を思ってくれているのだろうけど、切れるのが少し早すぎるような?


「取り敢えず、刀はしまおうね?」

「は、はい。」


アマネは渋々といった感じで不満気だったけど、炎を落とし、刀を鞘へ戻してくれた。

でも、その刀、どこから出したんだろう?


『し、死ぬかと思ったぞ。それにしてもこの巫女はこんなにも荒かったか?』


どうも青の大樹もアマネの性格を見抜けていなかったようだ。そのせいで、いらぬ地雷を踏んで身を滅ぼしかけたようだ。


「さて、青の大樹様、今の事を踏まえてアマネと旅に出る事を許していただけますよね?」 

『何故か脅迫されているような気がするのじゃが、気のせいか?』

「そんなの気のせいに決まっていますよ」


優しい言葉で僕は言ってあげる。

ざわざわと大樹の枝や葉が揺れて震えている。怖がっているみたいだけど気のせいだろう。


『しかしのぉ、せっかくの話し相手が居らぬとなると、寂しくなるのぉ』


青の大樹様、相当にアマネの事が気に入っていたみたいだな。

その気持ち分からない訳でもないかな。僕もこうしてアマネにいてもらえて嬉しいし、こんなに綺麗で優しい女性を手放したくないと思うのは仕方ない事だよね。

とは言え、僕もアマネに巫女としても、相談相手としても居てもらわないと困るから、大樹様の所に居て欲しいとは絶対に言えない。

たぶん、僕も寂しくなると思うから。


そこで僕は一つ提案することにしてみた。

読んでいただいて、ありがとうございました。

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