表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/76

大樹 2

大幅な改修を実施しました。

僕とアマネは、今、森の奥へと向かっている。

でも、これってかなり飛ばして進んでいるよね?

走るというより、木々の間をすり抜け、枝と枝とを飛び移り、立ちはだかる大草を軽々と飛び越えていく。魔操で筋力強化や耐性強化とかしてないと絶対について行けないよ。


「マコト様、大丈夫ですか?」


アマネが僕の方を伺いながら時々こうして心配してくれている。


「大丈夫だよ。アマネに教えてもらった魔力操作が上手くできているせいか、全然疲れないよ」

「さすが、マコト様です。私も巫女職が解放される前はもっと移動するのに時間がかかりましたけど、今は凄く楽に体を使う事ができますね」


さっきの池からここまでまだ5分くらいしかかかってない。


「前はどれくらいかかったの?」

「そうですね、3時間くらいでしょうか? でもこの感じだと後、5分で着きますね」


どれだけ違うっていうんだ?


「じゃあ、普通の人が歩いていくとなると、どれくらいかかるの?」

「う~ん、3日ほどですか?」


アマネって、巫女が解放される前からかなり高レベルだったんじゃないのか?

そんな事考えてみたけど、本人が無能だったと思っていたんだからあまり突っ込まない方が良いだろうとこの事はスルーする事にした。


そうだ、聞いておかなきゃならない事があったんだ。

僕は思い出し、隣に並ぶアマネに聞くことにした。


「ねぇ、アマネ?」

「はい、なんでしょう?」

「成り行きみたいに、僕の眷属になってしまったこと、嫌じゃなかった?」

「どうしてですか?」

「どうしてって、僕って自分自身が神様だって事自体忘れているような神だよ? そんな神の眷属になってもあまり嬉しくないんじゃないかと思って・・・」


僕の言葉を聞いて、一瞬アマネの表情が険しくなった気がした。


「マコト様、何故そのような事を言うのですか?」

「何故って、だから僕は記憶を無くしているし、一体どんな神なのかも分からないし・・・」

「マコト様!」

「は、はい!」


いきなり、アマネが真剣な顔で僕を怒鳴りつけてきた。


「マコト様は私を眷属にした事を後悔しているのですか?」

「そ、そんな事無い! 初めて会った時、凄く綺麗な女性だなって思っていたし、何故か心がドキドキして惹かれたんだ。後悔なんかしてないよ!」

「でしたら、何も問題ありませんね。私もマコト様を始めて見た時から何故か目を離せなくなってとても惹かれていました。」


そう言って彼女は胸に手を当て自分の心がここにあると主張しているように見えた。


「この心の気持ちに嘘はありません。どうか私の気持ちを受け取っていただけませんか?」


女の子にここまで言わせるのは、男として? じゃなくて女の子だよね、僕? いや神様か? どうでもいいか! とにかくアマネは僕を受け入れてくれているんだ。それにちゃんと応えないといけないよな。


「ありがとう、アマネ。その気持ち、ちゃんと受け取ったよ。僕の巫女になってくれて本当にありがとう」


僕、今凄く顔赤いだろうな、たぶん。

女の子なのに、女の子に告白しているみたいで、ちょっと想像しちゃう。これも前世の影響なのかな? もしかして僕ってやっぱり前世は男だったのかも・・・

そんな事考えながら、ふとアマネの方を見ると、顔を伏せて真っ赤な耳が良く見えた。


「そ、そろそろ、目的の場所に到着します。ここからは歩いていきます」


そういって地上に降りるアマネに倣って、僕も地上におりた。

そこは、周りすべてが大木に囲まれ、太陽の光もあまり届かない、薄暗い場所だった。

思っていたイメージとちょっと違うかな? もっとこう大きな幹の木が真っ直ぐにそびえ立つような感じを想像していたんだけど、幹回りは確かに太いけど、円柱形でなく、ごつごつといたる所に大小様々な節があり、右に左にと、ねじれ曲がりながら大きくなった、老木といった雰囲気のある大樹が集まっていた。

僕の想像していたのは、人が手入れをしているからできる光景で、ここはその人の手がまったく入っていない、自然のままの森なんだ。


僕が珍しそうに周りを見ているのを暫く待っていてくれたのかな、その場にずっと立ったままのアマネがいたので、僕は小さく頷いて微笑む。

それを合図に、アマネが僕を誘うように前を歩きだし案内し始めてくれた。

暫く小道らしきところをアマネを先頭に歩いていたけど、急に少し明るくなったので不思議に思い辺りを見渡してみた。


「あ?! 青空?」


そう、その開けた場所は、木々が全く覆わず、鮮やかな青いそらと、小さく白い雲がゆっくりと流れているのが見えた。


「不思議な場所だね」

「はい、この空間は以前、エルデリード神が降り立った時に大樹達が避けた為に出来た空間だと言われています」

「へぇ~」

「そして、あそこに居られるのが、この森の主であり、エルデリード神がお掛けになった大樹、青の大樹様です」


アマネが指し示してくれた方はこの空間の中心で、周りの大樹より二回りくらい大きく、幹の色が若干青い老木の大樹が一本だけでそびえ立っていた。

確かに、幹の窪みが腰かけの様にも見える。少し葉っぱが光ってないか? それに僕を呼んでいる気がする。

僕はその呼びかけに答えるように、ゆっくりとその大樹の方へと歩き出そうとした。


「マコト様?」

「大丈夫。たぶん僕を呼んでいるみたいだ。アマネは少し後ろの方で待っていてくれるかな?」

「分かりました」


アマネが小さく頷くのを確認し、僕は大樹に向かってさらに歩き出す。

結構近くかと思ったけど、歩いて2、3分たってないか? ようやく根本の近くまで到達したけど、で、でかい!!

アマネと最初に見た場所って結構、距離があったんだ。近くにきたらその大きさに圧倒されそうだった。


『ようやく、来られましたな・・』


突然、僕の頭の中に老齢な重みのある低い声が、響き入ってきた。

この声は? この大樹なのか?


「今、僕に話しかけられたのは、青の大樹様でしょうか?」

『・・・・・・そうじゃ・・若きエルデリード神よ』


ん? エルデリード神? 確かに僕の名前にはエルデリードって名前が入っていたのは分かっていたけど、なんでこの大樹は知っているんだ?


「何故、あなたは僕の名前を知っているのですか?」

『・・・ふん、これでも何千年と生きておるからの、この地に降りた色んな神を見てきて、その力を感じ取ること出来るようになったのじゃ。お主の力、純粋にこの世界の力そのものじゃよ』


つまり僕はこの世界の神、エルデリード世界の神と言う事? ますます実感が沸かないぞ。


『それより・・』

「それより?」

『今からわしの試練を受けてもらうぞ?』

「は?」


考えてもみなかった青の大樹の言葉に、聞き返すだけになってしまった。


読んでいただいてありがとうございました。

また、お越しください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ