襲来と巫女 5
投稿いたします。
「アマネさん、大丈夫ですか?」
「は?」
なんだろう? アマネさんの顔、口をポカーンと開けてちょっと間抜けな感じになっちゃってる?
向こうに居るマリア村長とドルガさんも呆けた顔して僕の方を見てるぞ? それに、この化け物? も何故か一歩、後退していた。
「どうして、マコトさんがここに・・・」
「え? どうしてだろう? 何故かアマネさんが泣いている様なきがしてね、助けなきゃって、思ってこっちに向かったらアマネさんが襲われてるんだもん。だからついね。
「ついね! で、ベアドップのハリ手を受け止めようなんて!」
急にアマネさんが怒り出した。心配かけちゃったかな? でも案外あの巨体の攻撃を受け止めれたって事は、あの熊みたいな? ん?
「あれ? ドルガさん?」
「わしゃ! こっちじゃ!!」
「あ? 本当だ。すみません。良く似ていたもので」
僕は後ろ頭を手で押さえながら小さく頭を下げ謝った。
「どこが! 似とるんじゃ! 背丈が全然違うだろ!?」
「・・・・・・そういえば」
「ああ! もうそんな事はどうでもええ! 前を見ろ!」
グゥウォオオオオオオオオオオ!!!!
ドルガさん、じゃなかった、熊モドキ、そういえばアマネさんがベアドップとか言ってたな? そのベアドップが上空を見上げながら雄叫びを轟かせていた。
「逃げて! マコトさん!」
アマネさんが叫びながら、僕に手を伸ばすが、それよりも早くベアドップの大きな毛むくじゃらの手が僕に襲い掛かってきた!
ドゥオオオオオン!!
「マコトさ・・・・・・え?」
僕はしがみ付く形になったアマネさんの頭を左手で抱えながら、右手でベアドップの張り手を防いでみせた。
でもさっきより衝撃が強く伝わってきたぞ?
「マコトさん! 魔力操作が不安定です! これでは、いつまでも持ちませんよ!」
それに気付いたのだろうか? ベアドップが続けざまに張り手を繰り出してくる。
ドッガアアン!! ドガアン! ドガアン!
僕は必死にそれに耐えるけど、どんどんその力に圧倒され始めてきた。
くっ! 自分でもびっくりするけど何とか耐えれたのは、たまたまなのか? これでは圧し潰されてしまう!
「いった、たたた!! 」
ドガアン! ドガアン!
情け容赦なく僕を叩きつけてくる。いい加減僕が無事なのが気に食わなくなってきたのかその攻撃は単調だけども、叩きつける回転速度が上がってきたかもしれない。
「アマネ! 嬢ちゃん! 今助けるからな!」
ドルガさんの声が聞こえた。なんだ?あの大きな斧は? あんなの人間が振り回せるものなのか?
僕が、その違和感でしかない大斧をいとも簡単に振り回し、この怪物みたいに大きな獣に攻撃を繰り出すドルガさん。
だけど、その攻撃は当たるものの、あまり深手を負わす事は出来ていないみたいだ。
「ん!? 攻撃がまた強くなった?」
僕の手の感触がおかしくなってきた。痛みが増して来て、足が地面にめり込み始めてきた。
「マコトさん! 魔力の流れが乱れ始めてます! このままじゃ魔力操作が上手くいかなくなり、身体強化が切れてしまいます!」
アマネさんが、顔を青くしながら必死に叫んでいた。
そうか、これが魔力操作なのか? 確かに体の包み込むようなものが、部分、部分で大きさが違うような気がする。
「どうしたら良いの?」
「私が、マコトさんの魔力の流れを誘導します! 私を受け入れてください!」
そう言うが早いか、アマネさんは僕をさらに強く抱きしめてきた。
ドカン! ドガン! ドカン!! ドガアン!
いい加減しつこい! こいつむきになってないか?
僕みたいな小さい者が、自分の力と拮抗しているのがそんなに気に食わないのだろうか?
「いきますよ?」
耳元でアマネさんの声がした。
ちょっとくすぐったい。でも凄く温かくて気持ちが良かった。
あれ? なんだ? 魔力の流れが速くなった? それにこれってアマネさんの意識が入ってきてないか? 分からないけどそんな気がする?
「え? え? な、何この感覚は?」
アマネさんも何かを感じたようだ。僕も胸の奥にアマネさんを感じその意識が頭の中に浸透するように入ってくる。
・・・・・・・・・・・・
急に周りが静かになり、何も感じなくなった。
あれ?! ベアドップは? 攻撃は?!
何もかも急に消えてしまった。
何が、どうなったんだ?!
僕は、必死に周囲を感じようと見渡す。すると見えないけど、確かに僕の傍にはアマネがいると確信できた。それと同時に、僕の目の前に文字が光浮かび上がってきた。
何だ、これ?
急の事に少し焦ったが、その文字を読んだ途端、気持ちが落ち着いていくのが分かった。
これって?
意識したわけではないのだけど、その文字に僕は指を伸ばしていた。
「ん!」
アマネさんの、可愛らしい声が聞こえた。
反応した? けど、その文字の方は素通りするだけで、消える気配がない。
これってアマネさんと繋がっているのか?
僕は、もう一度その文字を今度はゆっくりとなぞるように触ってみた。
「あ、ん!」
また、アマネさんの声が聞こえた。たぶん間違いない?
そう思ってもう一度その文字の内容を確認してみることにした。
『アマネ・コウヅキ 女 15』
『天職:巫女(万能型)(封印閉鎖状態)』
『後職:治癒士(優先)』
『魔操位:68』
『天職特性:神族契約( 未 )』
これって、アマネさんの性質とか、状態とかなのだろうか?
でもなんで僕にこんなものが見えるんだ? それに・・
僕は、この巫女という文字と、神族契約という文字に何故か惹かれてしまい、無意識に、指先がその神族契約という文字に指でなぞってしまっていた。
「ん!!」
途端に、文字が光出し、それに合わせてアマネさんから甘い声が発せられた。
僕は、光る文字から指を離すことができない。
なんだ!? 指が離れない? この文字に僕の何かが移っていくようなそれから光っていた文字が次第に消え落ち着くと、自然に指もその文字から離感覚に襲われた。
でもそれは一瞬で、直ぐに落ち着いていく。それと同時に文字の光も収まっていった。
あれ? 文字の内容が変わっている?
僕は、最初に見たアマネさんの性質、状態の内容が変わっていることに気付いた。
『アマネ・コウヅキ 女 15』
『天職:巫女(万能型)(優先解放状態)』
『後職:治癒士(適用可能)』
『魔操位:136』
『天職特性:神族契約(マコト・エルデリード神(幼生体))』
な、なんだ、これ?!
天職の巫女が優先解放状態? 後職が適用可能? 魔操位が倍? すべての項目が変わっている。
それよりも、これってどういうことだ?
天職特性で神族契約の名前、僕の名前なのか? でもエルデリードって? そして、神ってなんだよ?
あまりの変わりようと、自分の名前らしきものが書き加えられていることに、驚いてしまう。
「あ、あの、アマネさん、大丈夫ですか?」
アマネさんの姿は見えないけど、そばに居るのは感じられるので、ついそんな言葉が出てしまった。
「マコト、さ、ま」
「え?」
アマネさんの言葉が聞こえた瞬間、さっきまでの静けさが嘘だったかのように、目の前にベアドップの大きな手が二つ折り重なりように、僕の顔を目掛けて振り下ろされて来るのが見えた。
「!!?」
「マコト様に牙を向けるなんて、そのような不敬が許されるとでも思っているのですか!!」
突然、アマネさんから物凄い威圧がベアドップ目掛けて放たれた。
僕もその威圧を真面に受けたけど、なんともないけど、ベアドップにとっては違っていたようだ。
攻撃を仕掛けていた手が止まり、身動き一つしていなかった。というよりアマネさんの威圧を受けて固まってしまったのか?
そして僕は見たんだ。アマネさんが自分が携えていた刀に手を掛け、流れるような動作でベアドップに迫り、腕を切りつけ見事に切り落としてしまった事を。
ドサ!!
大きな音と共にベアドップの腕が2本地面に転がった。
ヴゥウォオオオオ!!!
叫び、切られた腕から大量の血を流し、のたうち回る。
読んでいただきありがとうございました。