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襲来と巫女 4

投稿いたしました。是非読んでみてください。

アマネ達は、まさかとは思いつつも、燃え盛る炎の中を注視した。


「まさか、そんな・・・」

アマネ達は驚愕する。

獄炎と言えるほどの炎の中に、目を光らせ、こちらを睨む存在が確かに居た。


「ベアドップは確かに魔獣の中でもトップAクラスの凶暴な魔獣だけど、火には弱かったはずなのに・・」


村人の一人が呟く。


「しかし、現実はあの炎に耐えてやがる。大型化しただけじゃない。進化してやがる」


ドルガの言葉に、その場にいたすべての人が己の最後を感じていたかもしれない。


「みんな! 防壁の中に入るんじゃ! この防壁なら多少は持ち堪えられる。その間に裏山からの獣道を通って、トルタの町へ逃げ延びる! そこでこの事を報告し国に災害級魔獣の出現を知らせるのじゃ!」


マリア村長の言葉で正気に戻った村人達は、我先にと閉ざされた正門横の小さな通用口から村の中へと入って行く。


「さて、そうなると殿は必要だな」


そう言いながら大きな斧を片手に担ぎ炎の中で、うごめく怪物に相対するドルガの姿があった。


「すまないね。こればっかりは他の者では役不足じゃからの」


当たり前のように言うドルガとマリア村長。

二人の間にはこういう時のための決め事でもあったのかもしれない。


「私も、残ります!」


突然アマネがドルガの横に並び、腰の刀に手を掛け、怪物を睨んでいた。


「馬鹿な事、言ってるんじゃないよ! アマネも逃げるんじゃよ!!」


マリア村長の厳しい言葉にも、動じないアマネは、決意の表情を見せる。


「アマネ! ここは、わし一人で十分だ! 上手く時間稼ぎをして必ず生き延びるからお前は皆と行くんだ!」


ドルガも、必死にアマネを止めようとするが、頑として聞く気が無いと言わんばかりに口をつむいでしまっていた。


「あんた! あのお嬢ちゃんを一人にしておくのかい?!」

「え?」

「あのお嬢ちゃん、お前の事を本当に信頼しておる。記憶も無く、一人で心寂しい嬢ちゃんの拠りどころは、アマネ、あんた一人なんじゃぞ!」

「で、でも・・」


マリア村長の言葉にアマネは心揺さぶられる。

確かに、マコトは自分にとっても何故か心安らぐような気持ちにさせてくれる女の子だった。

今まで、無能扱いされながらも、拾ってくれたこの村の為に必死に後職として治癒士を取得し居場所を見つけることは出来た。けど、自分の心が満たされる事はなかった。天職である巫女を持つ自分にとって神のいないこの世界は、必要されていない人間であり、どんな事があっても満足する事が出来ない世界だった。

でも何故か、マコトの傍にいると満たされていく感じがしたのだ。ほんの少ししか、一緒にいなかったはずのあの少女に。

そして、マコトも自分を必要としてくれていると、何故か感じてしまうのだ。


「わ、かりました。ドルガさん、絶対に無事に戻ってくださいね」

「ああ、絶対にだ」


ドルガは、熊のような大柄の体に似ず、可愛らしい笑顔を向け、親指を立てる。


「それじゃ頼んだよ。アマネ行くぞ!」


マリア村長の呼びかけにアマネは一瞬ドルガを見てから、村の方に向けて歩きだそうとしたその時、炎が大きく揺らぎ、熱風がドルガやアマネ達の方に襲ってきたのだ。


「くっ! 来るぞ! 早く中に入れ!」

「ドルガさん!!」


ドルガは大斧を身構えゆっくりと横へ動きだす。あくまでも自分が魔獣に敵対する人であることを見せつけながら、村の方へ向かわないよう自分に意識を向けさせる。

魔獣は、それが分かっているかのように、ドルガの動きに合わせて視線を動かし始めていた。


「よし、これなら・・」


ドルガがそう思った瞬間、その魔獣は炎の中から勢いよく飛び出した。


「な?!」

「え?」


ドルガは当然自分に向かってくるはずと思い構えていたが、その魔獣が飛び出し勢いをつけて向かったのはアマネ達の方へだった。


「しまった! アマネ!」


しかしアマネは一瞬も躊躇しなかった。腰を落とし刀に手を乗せると、構えた体制のまま魔力を操りだした。

魔操士でもあるアマネは、体中の細胞の一つ一つに魔力を流し、潜在能力を最大限にまで引き出す事ができる。これで普通の人よりは、かなり早さも力も桁違いに能力が上がるのだが、天職が無効である以上、ドルガにも到底及ばない程の力にしかならなかった。


「それでも!」


アマネはそれでも立ち向かう。自分自身に負けない為に。

しかし、魔獣の体はドルガの4倍以上はある超大型の熊に似た魔獣だ。その振り下ろす前足の勢いを受け止めることなど出来るはずもなかった。


グワァァドン!!


「「アマネ!」」


マリア村長とドルガは叫ぶが、もうそこにはアマネは無事でいられるはずが無いと思うしかなかった。


「な、なんてこと・・・」


魔獣の勢いのある振り下ろしで土埃が舞う中、悲痛な表情の二人に見えたものは、最悪の状態ではなかった。


「な、なんであんたが!?」


アマネは驚いていた。振り下ろされたはずの魔獣の大きな前足が、自分が放った刀で受け止めていたからだ。


「え? な! そんな事?」


一瞬、自分の力かと思ったアマネだったがそれは直ぐに違うと確信した。

刀から伝わるはずの魔獣の圧力がまったく感じなかったからだ。

アマネは何故かその先を見た。土埃が舞って視界が悪いその先を。


「やっぱり来て良かったよ。でもまさかこんな事が出来るなんて思ってもみなかったけどね」


そこには、両手を頭上で交差させ、魔獣の前足を受け止めているマコトの姿があった。


読んでいただきありがとうございました。また来てください。

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