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竜族 2

投稿いたします。

「お前はいったい何者なんだ?!」


黒竜はその得体のしれない小さき者に、自分が警戒している事自体が信じられなかったが、それでも竜族のまとめ役としては、聞く必要があった。

しかし、その小さき者は、ぶつぶつと呟きながら考え事をしているようで、黒竜の言葉を聞いていないようだ。


「小さき者よ! そなたは何者なのだと聞いているのだぞ!!」


黒竜は自分の言葉を聞いていない自分よりひ弱である種族の小さき者に竜族としての誇りを傷つけられた気持ちになり、大きな咆哮を発し威嚇する。普通ならこの竜の声を聞くだけで小さき人は委縮し、体を強張らせ、心臓の弱い者なら死んでしまうだろうその声に、竜の目の前にいる小さき少女は、キッ! と、睨みつけた。


「うっさい!!! 今、思い出そうとしてるのに黙ってて!」


その小さき者の声と視線は黒竜達に、死を覚悟させるだけの威圧を投げつけた。


「ひ!!」


怒鳴り返された黒竜と他の竜は、その一声で、皆が地面に頭をこすりつけ従順の意思を示してしまった。


「なに? どうした事だ? 何故逆らえぬ? あの小さき者が俺達竜族より大きく見える。」


平伏したまま震える自分にまだ、納得ができていない黒竜だった。

すると、すぐ後ろに控えていた、白磁のような白い色の竜が、黒竜に近づき小さな声で囁いてきた。


「黒竜様、もしかするとあの方は神なのではないですか?」

「神だと?」


黒竜は白竜の言葉に何故か、納得していた。

確かに小さき者が竜と生身で敵うはずも無い。それに容姿はよくわからないが、あの覇気は竜の我等でさえ到底及ばぬ大きさだ。天から降りて来られた事を考えても、目の前に居る小さき者が、神だとしたなら?


「しかし、本当に神ならば、我等と衝突したくらいで血を流されるものなのか?」

「それは、あの様子からするとまだ幼生体の神なのでは?」

「幼生体? なるほど! それならば理解できるぞ!」

「そうなると、数百年ぶりにこのエルデリードに神が降臨なされた事になるぞ?!」


なにやら急に盛り上がる竜達。 


「ご無礼をいたしました。あなた様はこのエルデリードに新たに降臨なされた神でありましょうや?」


先程までの態度とは違い、丁寧に聞いてくる黒竜にその小さき者は訝しむ。


な、何? この竜だったかな? 急に態度が変わって・・・竜、そうだ!思い出した! 竜って言ったら凶暴、世界の暴風、最大の恐怖って何かの本に書いてあったよな、ね? ん? 僕は誰だ? あれ、恐怖? 僕食べられるの? 頭が混乱して・・・


「そのぅ、どうかなされましたかな?」


黒竜は大きな口を開け、その小さな少女に問いかけた。


「え? 口・・牙・・ヨダレ?! た、食べられる?!」 


頭が混乱した中、竜への恐怖がその大きな口と牙を見て増幅する少女


「ひっ!!? た、食べられる!!」


気が動転していた少女は、その大きく開いた口が自分を飲み込もうとするように見えたのだろう。

彼女は条件反射的に身を守ろうと、身を固くする。


「な、何を言われるか! 私共はあなたを食べようなどとは思っておりませぬぞ!!」

「だ、駄目です! 黒竜! そんな大きな声をあげたら!」


少女に、食べられると恐れられてしまった事が不愉快だったのか、つい大声で反論してしまった黒竜に。それを窘める白竜だったが、遅かったようだ。

少女は身構え、自分を守ろうとする。するとそれが無意識に体の中心に向かって集約し始め、大きな力となって溜まってく。


「いやぁ!! 食べられる!!」


迫る恐怖。それから逃れるべくその少女は、内に秘めた力を、言葉に乗せて一気に開放した。それは大きな光の塊の様になって、打ち上げ花火の様に上に向かって飛び出していってしまった。


「「あ!?」」


黒竜達は、一瞬の出来事だったので対応も出来ず、その場に留まってしまっていた。


「黒竜様! 迂闊ですよ! あなたが不用意にそんな馬鹿でかい口開かれて、近づいたものだから驚かれて逃げられてしまわれたじゃないですか!」


白竜に窘められ、意気消沈する黒竜。


「すまぬ。私も神との対面は久方振りであったからの、幼生体様との接触の仕方を忘れておったよ」

「とにかくです。あのご様子だと、まだ神の力はあまり使えないと思われます。早く私共か、巫女共に護衛させなければ、どのような者が危害を加えようとするやも知れません。それに悪鬼どもや高位魔獣に襲われでもしたら」

「そうだな。神様と言っても、まだ幼生体であられるのに、あのような怪我をされていては、ご自身で危険を回避する術をお持ちでないかもしれぬ。至急、調査隊を出すぞ!」


気絶する赤竜を尻目に、竜族の者全てが旅立ちの準備を始めた。


「どうか我等がお探しするまで無事でおられますよう。」


黒竜は、少女の飛び去った方向に目をやり、ただ祈るのだった。

またお越しください。

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