1.今日ボクは、命を落とした。
暗灰透。
黒髪、黒いフレームメガネ。
何の取り柄もない普通の高校一年生。
僕は、昔から人と関わる事が苦手だった。
だから、極力人から避ける為に見た目も派手
な服装や髪型などもした事はなかった。
自分の見た目や性格のせいもあって小学生から今に至るまで仲の良い友達なんて一人として居なかった。
そして、気がつけば僕は、いじめの対象とされ毎日、毎日と繰り返しいじめを受けては、終わることなく続く。
自分がいじめを受けている事なんて親や先生には、一度でも相談なんてしなかった。
相談なんてしたところで何か変わっただろうか? いいや変わらないどころか悪化して行くに違いないだろうと思った。
だから、ボクは、もう飽きていたんだ。
何に? それは、この世界。
現実に……。
いつもボクは、心の奥底で願った。
ゲームやアニメなど創作の世界である異世界転生いつかボクに訪れて来れますようにと願うがそれが起きない事も当然ながら分かっていた。
僕は、毎日毎日朝が来るのが怖くて怯えながらでも消して親からも何もないようにいつもと変わらない素振りをして毎朝登校する。
学校につけば下駄箱や机、ロッカーなど至る箇所にスプレーと落書きされてあった。
正直コレを見るのは胸が張り裂けそうで辛かったがそんな事でつまずいても仕方ないいつもの事だと理解し強く前を向いて一日を乗り切ろうとした。
午前中は、授業をしっかり受けた。
しかし、その日の昼あいつらがやって来た。
いつもの連中だ。
三人で一グループで不規則な格好で僕なんかが逆らってしまったら一貫の終わりだ。
すると、グループの一人赤髪の男が僕に強く声をかけて来た。
「おい、暗灰いつものとこで待ってるから持ち物持って来い分かったか?」
「分かった」
こいつの言う持ち物ってのは僕のお金の事だ。
こいつは、毎日自分のお金で昼食を済ませずに僕からお金を取って三人で好きなものを買って昼食を済ませている。
僕は、こいつからお金を取られている事も当然誰にも相談してない。
第一お金は、母親から毎日昼食分として渡されているのにそんな事知ったら母親どんな顔するだろうか?
考えるだけ不安になって来る。
その後、僕は屋上に行ってお金を渡した。
その為毎日、昼食は、学校の自販機で栄養食を買い済ましている。
午後の授業にしっかり受けて今日は、もう帰るだけだったのだが、教室を出て別のクラスを通り抜けようとした時だった。
その教室で一人の女子生徒が放課後で帰る時間だと言うのにまだ教室に残っている様子が見えた。
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私は、高校一年生の普通の女子高生である。
茶髪のロングヘアーに薄緑のフレームの眼鏡を身につけている。
趣味は、小説を読むことと、書くこと。
それ以外は、アニメ観るとかぐらいかなぁ〜。
ただ、人見知りで友達と話すこともなかなか出来ずにいた。
気がつけば、自分は、周りから距離を置かれる存在になり、時には、いじめられることもあった。
そんなある日の出来事だった。
私の心が揺らいだ瞬間がやって来たのだ。
それは、一人の男子生徒との出会いだった。
私は、今日もイジメを受けて一人寂しく放課後教室でずっと泣いていた。
そんな時だった。たまたま私のいるこの教室に一人の男子生徒が通り過ぎようとしていが、その男子生徒は、私の姿が視界に入ってきたのか立ち止まり、私が泣いている姿を見て教室へと入ってきた。
すると、その男子生徒は、私に近付いて来た。
その時、私は、怖かった。
また何かされるのでは? と思った。
だが、その考えは、すぐに消えた。
男子生徒は、そっと女子生徒の頭に手を置いて撫でた。
それと撫でている時に優しく一声かけてくれた。
「君、大丈夫? どうしたの? 大丈夫?」っと男子生徒は、私がただ話を聞いてるだけだったのでまるでその男子生徒は、一人で話をしているみたいだった。
「そ、それでさ、もし良かったらだけど……顔、あげてくれないかな? あ、えっと無理ならいいんだ見せなくても」
「う、うん」
私は、自然とこの人なら大丈夫だっと感じた。
そう、決心して顔を上げた。
オレは、女子生徒ののその顔を見た瞬間まるで心臓が止まってしまうのではないかと思った。
なぜだろう?
答えは、一つしかなかった。
誰がなんと言おうとその子の顔は、かわいい以外になかった。
そして、オレは、しばらくその顔を眺めていた。
すると、女子生徒がオレのことを見て不思議と心配してくれた。
「あっ、あの、わ、私の顔に何か付いてますか?」
「あっ、あ、う、うん大丈夫 何も付いてない」
「あっ、それでどうして泣いてたの?」
「それは私、人見知りだからその、なかなかクラスの人ととか話すとか苦手でそのせいでもあるんだと思うんだけどみんなから距離を置かれたりしてイジメを受けているのそれで辛くて辛くて私、この先どうしたら良いのか分からなくてそれで辛くなって気がついたら……」
その言葉に返してあげる言葉を脳裏で必死に探すも見つからない見つかったとしてそれは、本当に正しいのか?
他にオレがしてあげれることとかないか?
とか必死になって考えた。
そして、オレは、口を開き話始めた。
「ボクと似てるなぁ」
「えっ?」
「ボクも人見知りだから話すのとか得意じゃなかったし、イジメも散々受けて来た悔しくて、辛くてもう嫌だって思うことしかなかっただけど、そんなボクにも唯一の楽しみな瞬間があるんだ」
「楽しみな瞬間?」
「うん、コレなんだけどさ」
ボクは、そう言って自分のカバンから一冊の小さな本を取り出した。
表紙には、キャラクターのイラストが描かれていた。
「ラノベなんだけどさ」
「その気持ち分かります私もラノベ読みます後、恥ずかして誰にも言えた事ではないのですが、ネットで小説を書いてますまだ初心者なので何とも言えないけどえへへ」
「えっ? ほんと? 小説も書いてるんだ」
「うんうん」
ボクは、取り出したラノベが良いきっかけになったと思った。
それと奇跡的にこの女子生徒もラノベを読むと言うので意気投合し会話が弾んでしまったてついつい話し込んでしまっていた。
「ボクは、いつも昼食終えた後の時間にに図書館の静かな場所で一人で読んでるよ誰にも邪魔されずにゆっくりとラノベを読めるから」
「ラノベを読むには静かな場所がいいですよね」
「そうですね読んでたら物語の中に自分が入って追体験してるような感じになります」
そして、ボクは、なんとなくカバンから、出したラノベでこの女子生徒と仲が良くなった。
そして、二人でその後ラノベとか色々と話していた。
「あのさ、コレ、もし良かったら読んでみて面白いから」
「えっ? いいの?」
「うん。明日また教室に放課後来るからあっ、そう言えばボクの名前、暗灰透です君の名前は?」
「私は、彩色小奏」
「それじゃあ、また明日来るよ」
「うん、待ってる」
そして、私が彼と出会って交わした言葉が今日が最初で最後だったと言う事を知ることになるとは、今の私はまだ知る余地もなかった。
その後、私は、帰宅して借りたラノベを手に取り早速本を開いて一ページをめくり読み進めた。
借りたラノベは、面白くてついつい手が止まらずに先が気になってページをめくらずには、いられなくなっていた。
気がつけば読み込んでしまいあっと言う間に読み終えてしまっていた。
あー面白かった。
コレ続きあるのかな? 明日返して聞いてみようかな?
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ボクは、彩色小奏と別れた後。
学校帰り帰宅する道をゆっくりと、歩いていた。
そんな時だった。
スピードを加速させる一台の車の存在があった。
すると、近くから「誰か、お願いその子を助けて」っと母親らしき人の声が響いた。
そして、ボクの目線の先には、まだ幼い子供の姿があった。
オレは、この後の展開がなんとなく嫌なほどに分かってしまっていた。
だからなのか無意識のうちに体が勝手に動いて行動に出ていた。
やるしかない。
本当は、他人のことに首突っ込んでいく様な英雄のような存在じゃないのに今日だけは、違った。
ボクは、加速する車が接近する直前子供を危機から救った。
だが、しかしボクは、子供を無事に救う事は出来たが、代わりに大きな代償として自分の命を落とす結果となった。
やばい、やってしまった。
ボクには約束が、明日の放課後にまた会うはずだったのに……。
せっかく友達になれそうな人と出会えたのに……。
じゃあ、救わなければ良かったのか?
それは違う。
あんな小さい子供がここで死んだらきっとあの子の母親もきっと悲しいだろうしな。
どっちの選択をしてもいい運命には、辿り着けなかったはずだ。
だからボクの選択は、決して間違ってはないとそう思いたい。
子供の命を救ったボクは、車に引かれ交通事後に遭い命を落として死んでしまったのだ……。
ボクは、ここにいない彩色さいしき小奏こかなに意識が遠のいて行く間に伝えないと行けない事を叫んだ。
「彩色小奏さん。ボク、約束守れそうにないや自分勝手な事して済まない」
当然ながらこの声は彼女には届くはずも無い。
やがて目の前は、だんだん視界が悪くなり、自然と瞼が閉じ、何も見えなくなった。