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遅くなりました。テストや、学校や、部活で忙しかったのです。そしてまたテストなのでまたしばらく更新は出来ないと思います。

 勇者として王都を出発する日。空は青く、バルト達の門出を祝っている。妨げる者はいない。誰もがその背中を押す中、一人その旅立ちを引き止める声がする。


「みんな、お金ある?」


 ユウナの静かな問いにバルトとフィアーが固まる。


「……今はある。」

「はははは、あ、あるに決まってるじゃん!」


 これはないな、と一瞬でわかる反応を示したのでため息を吐くしかなかった。


「本当だからな。王様から貰ったお金があるからな。……足りるかは分からないけど。」

「それ絶対足りないから。……はあ、まあ、お金は魔物の皮とか売ったりすれば大丈夫として……料理はできるよね?」

「料理ぐらいはできる。」


 以外にもバルトは自信満々にユウナに返す。バルトはユウナの獲物を逃がしてから自分で狩りをして捌くようになった。そんなことユウナの知る由もないが料理が出来ると聞いて一安心する。問題は目線をずらしているカナリアとフィアーだ。


「──わ、私、ユウナちゃん家のお手伝い以外料理したことないです! ごめんなさい!」

「カナリアのは知ってたよ。明らかに慣れてなかったし。」


 ユウナの家に来て料理を作る時いつも手伝おうとしてくるが手つきが慣れてない人のそれだったので二回目からは簡単な作業をずっと任せていた。それでも作業は出来ていたのでこれから教えればいいとして問題は……。


「いや力仕事担当だったから、こう……運んだり壊したりは得意だから!」


 そう言ってそこら辺の小石を指で潰すがその態度が料理が出来ないことを物語っている。


「はあ……わかった。カナリアとフィアーは道中で教えていくから。いい?」

「……が、頑張る。」

「アタシはちょっと……。」

「何? よく聞こえない。」


 どうもやる気が見えない二人に再度確認する。


「頑張ります!」

「やります! やるから睨まないで!」


 ユウナの鋭い目に慌てて大きな声で返事をする。よし、とユウナは首を縦に振る。


「それなら今日からしっかり教えるから。それとお金の稼ぎ方も教える。」

「それなら魔物の皮とか売るんじゃないの?」

「それ以外にもあるの。着いてきて。」


 ユウナが先頭になり、三人を案内する。向かった先はある大きな建物だ。二階建てで外からも人の賑わいが漏れている。


「ここは仲介所。色んな人からの依頼や直接依頼に来た人、依頼を受けに来た人が集まる所。ここで簡単な依頼を受けて解決すれば報酬が貰えるからフィアーには向いていると思うけど?」

「──行ってくる!」

「あ、ちょ、待って!」


 ユウナの説明が終わるや否やすぐさま仲介所へと入っていってしまう。


「ふふふ、フィアーちゃん相変わらずね。」

「相変わらず人の話を聞かないやつだな。」


 フィアーのいつも通りの調子に皆が呆れるも大人しく待っていると十分ほどして戻ってくる。


「あ、おかえり。さすがに依頼は取れなかった──」

「──た。」

「ん?」

「やったー! 取れたー!」


 依頼書を持った手を天に突き上げる。

 え、取ってきたの? 今日出発なのに?


「よっしゃあ! 今すぐ魔物を倒してくるから待っててね!」


 ドン!と音が出るかと思うほど地面を蹴って消えてしまったフィアーに三人とも唖然としてしまう。フィアーの猪突猛進さを知っていた三人だがあまりに予想外のことに脳の処理が全く追いついていない。


「──はぁ、はぁ、待ってくださいフィアーさま!」


 フィアーの去って行った方を見ていると仲介所から女性職員が走ってきていた。体力がないのか息を切らして辛そうだ。


「す、すみません。あ、赤い髪の、足の早い方を見ませんでし、たかぁぁ、はぁ、はぁ。」

「えーとフィアーちゃんならどっかに行っちゃいました。たぶん依頼?の魔物を倒しに行ったんだと……。」

「それは! 急がないと!」

「すみません。どうしてフィアーを追ってるんですか? もしかして不当に依頼を受けたのですか?」


 こんな風に職員が受注者を追いかける場面を見たことの無いユウナが訊ねる。


「もしかして皆様、ん、フィアー様のお知り合いでしょうか?」


 職員の問いに全員が肯定する。


「そうですか。申し訳ありませんがこちらの不手際でフィアー様に高難易度の依頼を受けさせてしまったのです。いえ、受けた段階ではさほどではなかったのですがフィアー様が受けたとほぼ同時に情報が更新されまして……。」

「つまり素人同然の人に見合わない依頼になったので止めるために追いかけてきたと。」

「はい。その通りでございます。」

「……依頼の魔物が出るのはどこですか?」


 フィアーが向かうとしたらそこしかない。フィアーに戦闘に備えて準備などという思考はない。真っ直ぐ目的地に向かったはずだ。


「ここから北に行った森です。あの、ですが危険ですので……!」

「俺たちなら大丈夫です。あの馬鹿を探しに行くぞ。」

「そう言ってお前が迷うなよ。」

「……先導頼む。」


 ユウナとバルトが森に向かって走って行く。


「え、あの! ど、どうしましょう!」

「皆なら大丈夫ですからあなたはお仕事に戻ってください。私が待ってますから。」


 優しい笑みを浮かべたカナリアが職員を促す。どこか逆らうことを許さない笑みに職員は押し黙ってしまう。


「で、ですが……。」


 さすがに戻るわけにはとなんとか言葉を発するがカナリアは笑顔のままで戻るしかないと悟ってしまう。


「ほ、本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。だって皆強いですから。予想ですけど多分……」


 ──フィアーちゃんが一人で片付けてますよ。



「どこよー!どこにいるのよー!!」


 森でフィアーは声を上げていた。折角依頼を受けたのに当該の魔物を見つけられないでいた。久しぶりに歯ごたえのある魔物相手とあって燃えていたが見つからず苛立ちが募っていた。


「むぅ。早く戦いたいのに。」


 ぐるぐると腕を回していると、ずん、ずん、と重い足音が聞こえてくる。

 ──来た!


 拳を握り魔物が現れるのを待つ。現れたのは依頼通り建物ほどの大きさの魔物。そんな大きな魔物を見てフィアーは唇を舐め口角を上げる。


 魔物は長い体毛に覆われ鋭い爪はないが人撫でされれば尋常ではないダメージを負うのは大きさから分かってしまう。そんな相手に一人だというのにフィアーに臆する様子はない。


「ふっ──!」


 呼吸を整え地面を強く蹴る。魔物に近づいたところでジャンプしそのままの勢いで横腹を殴る。凄まじい威力に魔物の巨体が押される。そこで魔物の動きがピタリと止まり、ゆっくりと、地面に降り立つフィアーを認識する。


「ウォォォォォォォォォォォ!!!」

「ちょ、うるさいわよ!」


 雄叫びを上げる。目が、射殺さんばかりにフィアーを睨む。太い腕がゆっくりと持ち上がる。


「さすがにそれは無理!」


 そう言って素早く振り下ろされる腕を転がりながら避ける。


「でもその腕使えなくしてやる!はあぁぁ!」


 そのまま反対に腕に向かって足を伸ばし回る。魔物の手首にフィアーの踵が決まる。手の甲に曲がっては行けない角度まで勢いよく曲がる。骨が折れる音、神経が切れる音、魔物の悲鳴が響き渡る。


「あっはっは!ざまあない──がぁ!」


 上手く決まり上機嫌な所に魔物のもう1つの腕がフィアーを吹き飛ばす。飛ばされながら体勢を建て直し地面に手をつきながらも倒れることなく立ち上がる。


「ガアアアアアアアアアア!!!」

「やろうっていうの!? 今更すぎるよ。もう最初に勝負はついてるのよ!」


 巨体がフィアー目掛けて突進してくる。しかし、慌てることなくそれを待つ。泰然と、臆することなく。

 そして、フィアーに届く前に魔物の動きが止まる。まるで糸が切れたかのように倒れてしまう。


「──やったあ! いやぁ、内部攻撃がここまで上手く決まるとは私って案外天才? さーてあとはこいつを持って帰るだけね。──よいしょ。」


 そう言って自分の何倍もある魔物の腕を両手で持ち上げ引きずる。地面と擦れ合う音が大きいがフィアーは気にすることなく上機嫌だ。


「──フィアー!!」


 遠くからフィアーを呼ぶ声がする。目の前をよく見るとバルトとユウナが走ってきていた。


「なんで二人がいるの? もしかして依頼を受けたとか?」

「この、馬鹿が!」

「いた! 何するのよバルト!」


 近づいて早々バルトに拳で頭を殴られる。


「勝手に突っ走るやつがあるか! それも危険な依頼を受けて。」

「危険? ああ、確かに聞いてた奴より大きかったけど楽勝だったよ。ほら!」


 ベチベチと魔物の腕を叩く姿にバルトとユウナの顔が引き攣る。倒したことは驚かないが本人に傷がほとんどないのが恐ろしい。


「……フィアー、こっちは心配してたんだから。それ皆で運ぶから。」

「本当!? ユウナやっさしー。これでお金がっぽりだよ。」

「帰ったらお金と一緒にカナリアに叱ってもらうから。」

「──!! まって、それは!!」

「俺こっち持つな。」

「私はこっちだね。」


 フィアーの制止は無視した二人が魔物の両足と片腕を持つ。


「カナリアの説教だけは嫌だあああああああ!!!」


 戻った後のことを考えたフィアーの悲鳴が森に木霊する。自業自得だ。二人はそっとしておくことにした。


 街に戻ってから職員に驚かれ、さらにその時仲介所にたむろしていた人達にも盛大に祝われていたフィアーの顔は泣きそうだった。喜びか恐怖かは本人にしか分からない。

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