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 オークは現れたバルトの方へと向く。バルトを見るとニタァと笑うと棍棒を振り上げバルトへと向かっていく。


 バルトは向かってくるオークに臆することなく剣を構える。それはとても様になっている。


 へぇ、案外肝すわってるんだ。


 木上でユウナは感心してしまう。


 オークが棍棒を振り下ろす。バルトは横に転がりながら避ける。すぐに体勢を立て直すと


「アクセル!」


 地面を蹴る。とても人間とは思えない速さで棍棒の上から腕を走りオークの肩へと乗ると剣を構える。


「スウィング!」


 超振動する剣でオークの目を切りつける。振動は切った表面から奥まで届き目がぱっくりと割れ真っ赤な血が吹き出す。


「ガアアアアアア!!!」


 オークの急所は目だ。オークに尋常ではない痛みが襲い暴れ始める。


 バルトはオークの肩を蹴り飛び降りる。片目を押さえたオークはバルトを捉えると半狂乱で棍棒を振り回しながら襲ってきた。

 バルトは慌てずオークの棍棒をくぐり抜ける。


「聖なる剣よ。俺に応えよ。」


 勇者の剣が光り輝く。


「アクセル!」


 バルトがさらに加速しオークの足を斬る。太いオークの片足がオークに置いていかれる。


「ガアアアアアアア!!」


 オークの巨躯はバランスを失い地面へと倒れた。残った手足を激しく動かす度に地面が揺れる。

 苦し藻掻くオークを見てバルトが顔を歪める。しかし意を決したのか剣を構える。


「ウインドエッジ!」


 バルトが剣を地面から振り上げると風の爪牙がオークの頭と胴体を切り離した。大量の血が森の草を真っ赤に染めていく。


 ありゃー。これはここ一体はしばらくダメだな。オークの処理は村長に委ねた方が良さそう。


 木の上から全て見ていたユウナは村長にこの事を報告するため木から降りようとしていた。降りる前にオークを見る。醜い巨体。見ているだけで不快になる。


 今後の対策として見ているとオークの体が少し動いた気がした。


 まさか、さすがに首を切られたんだ見間違い見間違い、とまた見るとオークが両手で体を持ち上げ片足で立っていた。


 は……?嘘でしょ。まさか反応だけで動いているのか!頭を切られたニワトリかよ!


「バルト!そいつはまだ動く!!」


 ユウナは大声で去りかけていたバルトに叫ぶ。バルトはユウナの声に振り向き異常なオークに気づく。


「な……!化物かよ!」


 すぐさま剣を構えながら叫ぶ。


「バルト!そいつはもう生きていない!ただの屍だ!躊躇うな一気にやれ!でなきゃ村の皆が死ぬ!」


 もしオーク反応が長く続くものだったら。あの巨体のオークが少し暴れただけでも村にはかなりの被害が出る……!他の人はまだ来ないのか!


 ユウナが待つ魔物退治の仲間は別の方角に現れた他の魔物と相対していた。どうしてユウナの方に誰も来ないかと言うとバルトのせいであった。勇者がいるなら殺すことは無理でも阻止することは出来るだろうと他の所へ行ったのだ。

 まだバルトは13の子供だというのに。


「分かってる!けど……うっ――!」


 バルトの体がよろける。頭を押さえるバルトをオークが棍棒で薙ぎ払う。バルトは吹き飛び木へと勢いよくぶつかる。


「がはっ――!」


 力なくバルトの体が地面へと落ちる。


「バルト!」


 ユウナの体が勝手に動いていた。気づくと気を失ったバルトを庇うように弓を構えて立っていた。


 どうする。思わず木から降りたけど……。

 バルトをこのままになんて出来ないし。

 けど弓矢じゃオークにはどう足掻いても勝てない。バルトを持っては足が遅くなってオークに追い付かれる……。どうすれば、どうすれば!


 何かないかとユウナは辺りを見渡す。


 何か、何かせめてバルトだけでも生かす何か……!


 バルトの方をちらりと見ると自然と目に入るはバルトの持つ勇者の剣。ユウナはこれしかないと気を失っているバルトから勇者の剣を取った。

 普段なら絶対手にしない。けれどバルトを守るためと焦りが生じているせいか正常な思考が出来ていない。


《ニヤリ》


 誰かが笑った気がした。しかしユウナにそんなことを気にする余裕はなく剣を構える。


 私にこれを扱えるのか。たぶんバルトがよろけたのは魔力を消耗していたから。でも使っていた魔法はアクセルとスウィングとウインドエッジ。バルトの膨大な魔力量から考えてこれだけで失うはずはない。つまりこの剣が光った時。あれはバルトの魔力を使っていたということ。私の魔力で果たしてオークを倒せるのか、いや、悩んでも仕方ない!いちかばちかだ!


 ユウナはなけなしの魔力を剣へと流れ込むイメージをする。


 ユウナの魔力量は最低レベルだ。誰もが魔力は少なからず持っているの少なからずしか持っておらずさらに魔法も使えない。

 不安がユウナを襲う。けれど後ろのバルトを守るため村を守るため。ユウナは剣を高く掲げた。


「今だけはこの瞬間だけ私に力を貸して!」


《喜んで》


 ユウナの中の何かが大量に引っ張られる感覚がする。突然の初めての出来事に驚くとユウナは気づいた。剣が光り輝いていることに。


《さあ、ユウナはどうしたい》


 謎の声がユウナの脳に響く。


「あのオークをぶっ倒したい!」


《了解した。オークを消し去るイメージをするんだ。そして剣を思いっきり振り下ろして》


 謎の声に従いユウナは自分が剣を振るいオークを消し去るイメージをする。そしてオークに向かって剣を振り下ろした。


 振り下ろしたと同時に眩い光がオークへと向かっていく。圧倒的な光量。けれどどこか優しさと荘厳さのある光にユウナは見蕩れた。


 光はまっすぐとオークへと向かい巨体を呑み込む。輝きの本流の前にオークは為す術もない。光が消えるとオークが消え辺りの自然が蘇っていた。


「終わっ……た――。」


 ユウナはオークが消えたのを確認するとゆっくりと倒れ意識を失った。



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