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三話ほど短編と同じです。

なろうで初めて掲載するところはまた前書きなどで知らせます。

 バレスティア大陸にはある伝説が存在している。


 世界が魔王の危機にさらされる時聖なる剣が勇者の元に現れ魔王を打ち砕きバレスティア大陸に平和をもたらすと。


 子供への読み聞かせ物語として大人がこぞって語り聞かせる話。バレスティア大陸で知らない者はいない。誰もが知り、誰もが憧れ、誰もが勇者などいないことを理解してしまう。


 魔王など居るはずもなく平和な日々が流れていた。所詮は空想上の話。そう思い長い月日が経ったある日。バレスティア大陸一の国ゴルスタ王国の城が魔王の手により落ちた。貴族達は見せしめに殺され王族は魔王により建てられた魔王城に幽閉され王国に住む者は生きる拡声器として魔王とその配下である魔物に住む所を追われ方々に散った。


 ゴルスタ王国の崩壊と魔王の出現はバレスティア大陸全土に伝わった。各国兵士を派遣しゴルスタ王国へ向かったが道中の魔物に無残に殺されてしまった。


 各国が魔王の脅威に対するため自国の優秀な剣士や魔法使いを養育することにした。魔王を討ち取るよりも自国を襲う魔物を狩るだけで十分だと気づいたのだ。魔王はゴルスタ王国を落として以来他の国には一切手を出していない。しかし、手を出していないからとそれが襲われないという確証にはならない。それはどの国も理解していた。


 魔王が現れて50年以上。魔王が居ることが当たり前のことになりつつある日空から眩い光を放ち落ちる謎の物体があった。


 それは空に一筋の線を描きまっすぐとまるで意思があるが如く落ちていった。





 ゴルスタ王国から遠く離れた国、ベル公国。その中の小さな村ポポ村。魔物もほとんどおらず魔王に対して恐怖心があまりない平和な村で四人の子供達が遊んでいた。女の子が三人に男の子が一人。年は全員六つと幼い。


「ねぇ、あれなぁに?」


 金髪で三つ編みのカナリアが空を指す。


「すげー!きれー!」

「おひるなのにながれぼしがながれてる!」


 黒髪の男の子のバルトと真っ赤な短い髪の女の子のフィアーがカナリアの指す方を見る。カナリアの指した空には光を放つ物体が飛んでいた。

 もう一人の茶色い髪を一つに束ねた女の子、ユウナもその物体をゆっくりと見上げた。


 しばらく四人がそれを見ているとユウナがあることに気づいた。

 なんかだんだんおおきくなってきている……?


「ねえ、なんかこっちにきていない?」


 独り言のように呟いたユウナの言葉通り謎の物体はだんだん大きくなり四人に向かって落ちていた。


「やばくないこれ!」

「え、え、え、にげなきゃ……!」


 ユウナの言葉でそのことに気づいたカナリアとフィアーは声を出して慌てる。ユウナはゆっくりとその場から離れようとしていた。少し離れたところから皆を呼んだ方がいいと思ったのだ。


「あっちににげるぞ!」

「え?」


 バルトとがユウナの手を掴み走り出した。ユウナの考えたことが一瞬でおじゃんとなった。

 走り出したバルトとユウナの後についてカナリアとフィアーも走り出す。


「まだ、こっちに、きている、よぉ……!」


 息も絶え絶えなカナリアが後ろを振り向いて謎の物体を確認する。

 フィアーも振り向いて確認するとカナリアの手を握る。この中で一番体力がないカナリアを置いていかないためだろう。


 しばらく走り続けていく。バルトは一度も振り返らず走っている。手を掴まれているユウナは必然的に走らなければならず後ろの二人も謎の物体から逃れるため走る。

 ユウナは横に走ればいいのではと思っていた。しかし、一生懸命な三人には通じないなと諦め走っていた。


 体力的に余裕のあるユウナはそこで初めて後ろを振返った。


 するとユウナの眼前に謎の物体が差し迫っていた。

 カナリアとフィアーは突然前に現れた謎の物体に足を止めてしまう。


 ユウナもあまりの近さに驚く。


 ごちん!


 謎の物体はユウナの額へと勢いよく当たる。ユウナの額へと当たった瞬間謎の物体の光が消え美しい剣が現れた。

 それを確認できたのはカナリアとフィアーのみ。

 ユウナは謎の物体もとい謎の剣が当たった瞬間気絶し後ろへと倒れる。


「ユウナちゃーーーん!!!」


 カナリアとフィアーの叫び声が揃う。バルトはその声と背中にかかった突然の重さにに後ろを向く。


「ユウナーーー!?」


 背中に当たるユウナに驚きながらもユウナが地面と接する前に慌てて手を離して両手でユウナの体を支える。


「ユウナちゃんだいじょうぶ!?だいじょうぶだよね!?」

「ユウナちゃん!どうしようユウナちゃんがしんじゃった……!」

「え……!ユウナちゃんしんじゃ――」

「フィアーのばか!まだしんでない!きぜつしているだけだ!」


 ユウナの体を支えるバルトはユウナが呼吸していることに気づいた。死んでないと分かったカナリアとフィアーは気が抜けたようにしゃがみ込んだ。


「よかっだー!ユウナちゃーん!」


 大粒の涙を零しながらカナリアがユウナの首元に抱きつく。


「なあ、どうしてユウナはきぜつしたんだ?」

「え、ああ!わすれてた!さっきのながれぼしがユウナちゃんのあたまにぶつかってそしたら、けんになって、ほらそこ!」


 フィアーが地面に落ちている剣を指さす。そこには傷一つついていない美しい剣が横たわっていた。バルトは訝しげに剣を見る。


「けんがユウナのあたまに?」

「ねえもしかしてこれゆうしゃのけんじゃない? だって絵本のとそっくり!」


 フィアーが手を振りながら興奮した様子で話す。勇者の剣。その言葉にバルトの眉がピクリと動く。


「ゆうしゃの……!」


 誰もが夢見、憧れる伝説が目の前にある。男の子の心がくすぐられバルトはじっと謎の剣を見つめる。

 ゆっくりと剣に手をのばし始める。


「ねぇ、そのはなしだいじ?」


 ピタリとバルトの動きが止まる。


「いまはユウナちゃんのほうがだいじじゃない?」


 冷たい目でバルトとフィアーを見据えるカナリアに二人はバツが悪そうにユウナの方を見る。


「ユウナちゃん起きそうにないね。」

「……。」


 フィアーがユウナの顔をのぞき込む。バルトはユウナの顔を見ていると黙って手をユウナの顔の上に翳す。突然のバルトの行動に二人の頭にハテナが浮かぶ。


「アクア」


 バシャリ。

 バルトの手から水が現れユウナの顔にかかる。


「バルトくんなにやってるの!」


 カナリアが怒りの顔を向ける。だがバルトに気にした様子はない。


「ん……うーん……。」

「ユウナちゃん!?」


 バルトの水のおかげかユウナの口から呻き声が漏れる。ユウナの目がゆっくりと開く。


 ユウナが起きて一番最初に目に映ったのはカナリアとフィアー。特にカナリアの赤く腫れた目がユウナの目を引いた。


「カナリアちゃんないたの?どこかけがした?」


 ゆっくり体を起こしてカナリアの頬に手を当てる。


 だれか泣かした?泣かすとしたらだれだろう……わかんない。それよりなんか顔つめたい。


「ユウナちゃーん!」


 突然カナリアがきつくきつく目の前のユウナへと嬉しさのあまり抱きつく。


「ど、どうしたの本当に?」


 ユウナの頭は混乱でいっぱいだ。


「カナリアちゃんよりユウナちゃんなんともない?きぜつしてたから。」

「き、きぜつ?」


 気絶と聞いて驚くユウナだがすぐに額の痛みと共に思い出す。額をゆっくりさする。

 なんだったのあれ。すっごいいたかった。


「やっぱりまだいたい?」

「だいじょうぶだよフィアーちゃん。それより私にぶつかったのは?」

「そこにあるけんよ。」


 ユウナはフィアーが指した剣をなんとか見る。未だカナリアがきつく抱きしめているので動きに制限がかかっている。

 そろそろはなれてくれないかなー。と考えながら剣をじっくりと見る。


 ん?これってえほんの――。


「ゆうしゃのけん……。」


 面倒な予感がするなー。いやだなー。帰りたい。




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