桜の涙
「 今年の桜が終わってしまうのね、、そして来年の桜はもう、、私には、、。」
そう呟くと自然と涙がこぼれた。
去年の秋、医師から 「持ってもあと一年でしょう」と宣告されてから半年。
死を受け入れて~一日一日を大切に過ごしてきたつもりであるが、、
時々、自分でもコントロール出来ない感情に振り回される日がある。
今日もそういう日になりそうだ。
朝から何を見ても、何をしても悲しみが止まらない。
極めつけが今見ている桜だった。
1年の内、たった1週間だけ咲き誇る~最後は妖艶に花びらを散らして去っていく。
そんな桜に自分自身を重ねてしまう。
もう少しで死ぬという事は十分に理解している。 でも、、、
何もかも壊れてしまえばよい、壊してしまえばよい、、私だけでなく、この世界が壊れてしまえばよいと思ったりする。
自分勝手なのが重々承知の上だが、つい、そう思ってしまうのである。
俯いて泣き続ける私に
「桜と一緒に泣いてるの?」 、、と 可愛い声がした。
顔を上げると、5歳くらいだろうか、目のくりくりっとしたおかっぱ頭の女の子が目の前にいた。
「桜も私も悲しいのよ、きっと、、変ね?」
「変じゃないよ!桜もバイバイするのが悲しいんだよ」
にっこり笑いながらその子は私の頭をなでてくれた。
「ありがとう、ありがとうね。」
余計に涙が止まらなくなってしまった、、。
でも、不思議な事に心が落ち着いた。
「桜の花好きなの?」
涙を手で拭きながら聞くと~~~
「うん! ママが大好きな花なの。」
嬉しそうに答える。
「ばいば~い」
手を振りながら元気に駆け出した。
あ、そんなに急いで、、 「転ばないようにね」
多分私の声は届かなかっただろう、、あっという間にその子の姿は見えなくなった。
どんな人にも、さようならする時は必ずやって来る。
そう、今日は桜にさようならしよう、、そして明日は、、。
あのこの~バイバイに何か大切な事を教えて貰った気がした。
有難う、、本当にありがとう。