第3話 その選択肢は無意味だ
「一生童貞でいるのと全身の毛がハゲるのとどっちか選べって言われたらどっちを選ぶ?」
「はぁ?」
いきなりのわけのわからん問いかけに、反射的に「何言ってんだコイツ」という意味を含んだ声が漏れてしまった。
「いや例えばの話だよ、例えば」
「例えにしてもなんだよその二択。どっちも選びたくねぇに決まってんだろ」
漫画を読む手を止めて相手の表情を確認してみるが、わりと真面目な雰囲気だ。いや本人は真面目なつもりなんだろうが、俺にとってはどう答えていいかわからない問いかけとも言える。
「そこをなんとか、二択しか選べないと仮定してだよ」
学校帰りにいつものようにツレの秋月んちで暇をつぶしていただけなんだが、まぁこれもコイツなりの暇のつぶし方だろう。
「うーん、そうだなぁ……」
はたと考えてみるが、そういえばそもそもの前提が間違っていることに気が付いた。
「つーか俺もう童貞じゃねぇからその質問は無意味だな」
「――はぁっ!?」
「じゃあそういうことで」
手を止めていた漫画へと視線を戻すと、続きを読み始めると。
「リア充め! 爆発しちまえ!」
ツレの叫び声がこだました。