妹の友達
7歳になった俺は、相変わらず訓練とOSの開発に精を出していた。前世の俺は7歳といえば近所の糞ガキ共と外を駆け回って遊んでいた。決して今の俺がぼっちというわけではない。俺には可愛いエミリーがいる。しかし、前世を含めると精神年齢がおっさんと言っても過言ではない俺は、なかなか同世代のガキ共と仲が良くなることはなく、友達ができないでいた。そんなある日、暗くなってもエミリーが帰って来ないとアンナに言われ、近所を探してくるよう言われた。
「まったく、夕方には帰りなさいと言われてるだろうに。」
そう独り言を言いながら俺はライトを使い、エミリーを探す。最近、エミリーは友達ができたらしく、公園でよく遊んでいる姿を見る。そのため、まずはと思い近所の公園に行くと、やはりエミリーの姿があった。
「あっ、お兄ちゃん!」
「エミリー。やっぱりここにいたか。夕方までには帰りなさいと言われてただろう?」
「えへへ。ごめんなさい。イーノーちゃんと遊んでいたらいつの間にか暗くなっちゃった。」
イーノーちゃんって誰だ?と思ってメアリーの横を見る。
「この子がイーノーちゃん?」
「うん。イーノーちゃん。この人はお兄ちゃん。」
「こんばんはイーノーちゃん。」
「こんばんはお兄ちゃん。」
あん?なんで俺をお兄ちゃんって呼ぶんだ?と思ったら、俺は名前を名乗ってなかった。
「あぁ、俺はマルコ。エミリーのお兄ちゃんただ。」
「…マルコお兄ちゃん?」
……まぁいいか。好きに呼ばせておこう。
「イーノーちゃん。お家はどこかな?暗くなったから家まで送っていってあげよう。エミリー。ちょっと寄り道するぞ。」
「うん、分かった!」
そう言って俺たちはイーノーを家まで送り届けるべく、ライトで夜道を照らしながら歩いていく。
突然だが、俺の住む領都は様々な人族が住んでいる。犬や猫と言った獣の姿に似た種族や、エルフ、ドワーフと言ったファンタジー定番の種族達だ。前世のような人種差別はこの街では目立ってないが、様々な価値観を持つ人間が社会を形成するにはやはり無理があるようで、残念ながら社会から脱落した者もいる。つまり何が言いたいかというと、この街の夜は治安が良くないのだ。
まぁ、前世でも日本の様に夜中に女子供が出歩くような治安が良い地域はなかなか無く、南米や中東なんかは大の大人でも危険な場所がたくさんある。しかし、前世が日本人の俺は夜中に子供だけで出歩く事を甘く見すぎていた。
「あん。こんな時間に子供が出歩いてどうしたんだ?」
「親切なおじちゃん達が家まで送っていってあげよう。冒険者の俺達は護衛依頼もおちゃのこさいさいだからな!」
「でも兄貴、こんなガキ共が依頼料を持っているとは思えませんぜ?」
「馬鹿だなぁ。親からふんだくれば良いじゃねーか。払わないなら、依頼はまだ完了じゃないんだ。俺達のアジトでそのまま護衛し続けてやればいいだろう?奴隷商人に依頼して、俺達の代わりに護衛してもらってもいいなぁ?」
「ククク、流石は兄貴。考えることがあくどいぜ!」
2人の人さらいに遭遇してしまったのだ。