神の言語
5歳の誕生日を迎えた。5歳になるまでの間、俺はひたすら魔術入門書に書かれている術式を読み漁っていた。それでこの世界に出回っている術式は非常に非効率的であることが分かった。この世界の魔術師は英語を知らないため、術式がめちゃくちゃなのだ。世の魔術研究者は非効率的に数撃ちで検証を重ねて作っているのだ。俺は術式を理解しているため、術式の非効率さが分かってしまう。
しかし、俺は風魔術以外は使うことができなかった。入門書によると人が放つ魔力には、火、風、水、土、光の5種類があり、その種類によって使う事ができる魔術が変わるそうだ。で、その魔力の種類は5歳になると教会にある魔術具で調べてもらえるらしい。
というわけで、おれはリビングの扉を勢い良く開ける。
バン!
「父上!母上!5歳になりました!教会に行って魔力を調べて貰いましょう!あ、おはようございます。」
「おはよう。マルコはとうとう5歳になったか。まぁ、属性は風と分かりきっているが。」
「まったく、小さい頃から魔術使うと背が伸びないと言ってるのに。」
子供が部屋でコソコソしていても、親にバレるのはどの世界も同じらしい。初めは怒りたものだが、それでも貪欲に魔術の知識を求める俺の姿を見て両親は諦めたらしい。たまにこの様に小言を言われる程度だ。
「私も父上や母上の様に早く立派な魔術師になりたかったんです!いいじゃないですか背丈ぐらい伸びなくても死にはしません。」
「全く、後になって後悔しても知らんぞ。」
「ふふ。マルコはエドワードに似て頑固ね。」
バン!
「おにいたん!おめれとー!」
俺に続いて扉を開けて飛び込んできたのは妹のエミリーである。2歳下のかわいい妹だ。
「ありがとう。エミリー!エミリーは可愛いなぁ。よしよし」
「やー!」
妹のあまりの可愛さに頬ずりしたら速攻で嫌われた。かなしい…。これが思春期か。
「ほらほら、遊んでないで早く朝ごはんを食べなさい。教会へ行きんでしょう?」
「はーい…。」
エミリーに嫌われたショックを引きずりつつ、パンを食べ始める。そういえば、魔力ってどうやって調べるんだろう。食事中の雑談にエドワードに聞いてみるか。
「そういえば父上。」
「なんだ?」
「魔力を調べに行くわけですが、どうやって魔力なんて調べるんですか?目に見えないですよね?」
「あぁ、そんな事か。教会には魔力を調べるためのアーティファクトがあって、それに触って魔力を流すと魔力の種類に応じた色で光るんだ。そして、その色で魔力の種類がわかる様になってる。」
「へぇ、そうやって調べるんですね。どういう仕組みなんですか?」
「さぁ?光るから光魔術だとは思うがその他の属性の魔力でも光るから、どういう仕組みかは分からん。分解して研究したがる者も多いが、何せ教会が管理するアーティファクトだからな、研究できた者はおらんよ。」
「ふーん。術式も見られないんですか?」
「いや、術式は見られるぞ。別に隠してあるわけじゃないしな。そもそも誰も読めないから隠す必要もない。」
「え?術式って読める方がいないんですか?」
「あぁ、各属性に頻出する並びがあるなど、様々な規則性あるため、何かの言語である事が通説だ。しかし、世界中どこにも魔術以外でこの言語が使われていた形跡がない。そのため、信心深い人間は神の言語と呼んでいるぐらいだ。」
なんと、英語は神の言語だったらしい。しかし、なんで英語なんだろう。プログラム言語にするとしてもこちらの世界で分かりやすい言語にすればよかったのに。レウコテアー様と会話できる機会があれば聞いてみよう。
初回なので3話まで同時投稿。次回からは日刊更新の予定です