初めての戦闘
「エミリー、イーノーちゃん。逃げるよ。」
俺の判断は早かった。
「「え?」」
俺は二人の手を引き、走り始める。
「お、おい!」
「待ちやがれ!」
人さらい達は一瞬呆けて出遅れたものの、大人の走る速度に子供が敵うはずもない。グングンと距離を縮められる。
「くっ。」
「イーノーちゃん急いで!」
「はぁ…はあっ…。」
不味い。イーノーの足がもつれ始めてきた。どこかに隠れた方がいいと判断し、隠れ場所を探す。しかし、すぐに近くまで追ってきている人さらい達を躱す様ないい場所がなかなか見つからない。焦りばかりが募る。
「きゃ!」
そして、ついにイーノーが転んでしまった。くそっ、戦うしかない!
俺はエミリーとイーノーを背に人さらい達に対峙する。
「エミリー、イーノーちゃんを見てやってくれ、走れるようになったら、俺の事はいいからそのままウチまで走って逃げるんだ。いいね?」
「はぁ、はぁ。でも、お兄ちゃんは…?」
しかし、ここで人さらい達が到着していしまった。
「ガキがっ、ちょこまかと逃げやがって!」
「だが、ここまでのようだな。」
やれるだけやってやる!
俺は念のため持ってきておいた発動体に魔力を流す。
しかし、発動体が淡く光った事で、俺が魔術を使おうとしている事がバレたようだ。
「おい、このガキ魔術を!」
「発動する前にやっちまえ!」
一人かそう叫んだところで、俺はやっと魔術を発動させる事ができた。
「ショット!」
俺が魔術で生み出した小石は片方の人さらいの太ももを貫く。
「ガッ!いでぇ。このガキ!」
貫かれた人さらいは膝から崩れ落ちる。よし、うまく行った。だけどもう一人は敵を討とうと近づいてくる。急いでもう一発撃たなければ。慌てて再び術式に魔力を流す。
「このガキ!調子に乗りやがって!」
だめだ、発動が間に合わない!人さらいは拳を振り上げ、俺の頬を強打した。
「くぶぁ」
歯を食いしばったが、それをあっさりと崩され、口からはつばと少しの空気そして歯が俺の口から弾け飛ぶ。そしてその勢いのまま、俺の身体は壁に叩きつけられた。
くそっ、マズイ不味いまずい!今ので撃とうとしていた魔術も中断された。発動体も落として離れた所にある!
「マルコ「お兄ちゃん!!」」
なっ、あいつらまだ居たのか!逃げろって言ったのに!やばい、ここで俺が倒れたら、エミリーとイーノーちゃんが…。
「このガキが、ヒヤヒヤさせやがって。この落とし前つけさせてやるからな。」
頭の中で必死に術式を構築する。だが、焦ってなかなかちゃんと構築できない。くそ!
もうダメだ……ガン!!
「ぐぁ…。」
人さらいは突然の背後からの攻撃を頭に受け、倒れ込んでしまった。
助かったのか……?
「大丈夫か?」
そこには木彫りの剣を持った少年が立っていた。
「イリュオス!」
イーノーがそう叫ぶ。だが、壁にぶつかった時に頭を打ったのか朦朧として、俺は意識を手放した。