プロローグ
処女作な上適当につらつら書いてるので、面白くなかったらごめん
「ここはどこだ…。」
何もない真っ白な空間で目を覚ました俺は思わず独り言を呟いた。
俺は研究室で学会の資料を作っていたはずだ。明日は学会の発表の予定だったため徹夜で作業をしていたのだが、どうやらいつの間にか眠っていたらしい。だが、目を覚ましてもいつもの研究室ではなく謎空間にいた。
学会の予定もあるので、研究室に戻らなくてはならないが、ここがどこかも分からない。辺りを見回しても扉どころか壁すらなく、延々と白い空間が広がっていた。
「「困ったな…」と思ってますね?」
そんな独り言に合わせる様に、背後から声をかけられた。
「こんにちは、菊池正樹さん。」
そんな挨拶をしてきたのは、長く白い髪をした美しい女性であった。
「えっと、あなたは?っと言うかここはどこでしょうか?私は研究室に戻らなくてはならないのですが…」
「わたしはレウコテアー。ここは死と生の狭間の世界。あなたは研究室で過労で倒れ、その生を全うしました。」
「なっ…」
衝撃の事実に絶句する。研究成果のあの人工知能が世に出れば歴史的な成果になるはずだったのだ。
「しかし、あなたが生前に行っていた人工知能の研究はあなたの死後人類の発展に大きく寄与するものです。以後、あなたの助手はあなたの残した資料を発表し、印刷機や火薬に並ぶ人類の偉大な発明として後世に永く語り継がれることになります。」
なんと、俺の苦労はどうやら報われるらしい。ただ、死んでしまったあとでは関係ないか…。心残りがあるとすれば、語り継がれるのは俺の名であってほしかった。
「あなたの名は人類史に残りませんが、我々神界はあなたの功績を正当に評価しなくてはなりません。
そこで、あなたを通常の輪廻の輪に送る前に、その功績を讃え私はあなたに選択の機会を与えましょう。」
「選択?」
「はい。神からのご褒美と言うやつです。」
「褒美と言われても、私は死んだのであれば物を貰っても仕方ないのですが…。」
次の人生は身一つで生まれるのだ。物を貰ってもしかたない。
「はい、そこは抜かりありません。これでも神、あなたにには次の人生の特典を与える形で褒美を与えましょう。」
なるほど、そういうことですか。
「とはいえ、その特典を褒美と思っていなければ、次の人生は堕落の道に向かうでしょう。あなたには褒美とは別に、生前とここでの会話を記憶を次の生に与えます。堕落せずに次の人生も真っ当に生きてほしいですからね。」
これは嬉しい。確かに、生まれた家が良いだけで天狗になるやつはいくらでもいるからな。素晴らしい対応だ。
「分かりました。ですがレウコテアー様、その…次の人生は生前と同じ世界なのでしょうか?」
せっかく記憶を引き継いで生まれるのだ。せっかくならこの記憶が役立つ世界であってほしい。いつか読んだラノベのように。
「あぁ、そういう世界がいいのですね。いいでしよう、あなたの記憶はその世界の発展にも寄与する事も可能でしょうから、科学ではなく魔術が発達した世界に送って差し上げましょう。」
……。さらっと思考を読んだな。流石は神だ。
「それとは別に褒美を貰えるのですか?」
「もちろんです。世界に寄与するものですから。」
すごい太っ腹だ。
「女性に向かって失礼な物言いですね?」
おっと、思考が読めるんでしたね。口に出してはいないのだが…気をつけよう。神とは言えこんなキレイな女性に嫌われたくない。
「……(赤面)」
あ…。
◇
「ゴホン。話に戻りましょう。」
「えぇ、そうですね。私にはどんな選択が与えられるのですか?」
「はい。まずは丈夫な体を育める環境での生、または存分に学ぶ事ができる環境での生。そのどちらかを選択してください。」
ん?
「『まずは』?」
「はい。生まれる環境の要望を聞き、できるだけ要望を叶えた家庭に生を受けるのが、今回の褒美です。」
なるほど。恵まれた環境で育つことができるというわけか。
「その通りです。しかし、その環境でどのように過ごすかはあなた次第です。できれば正しく努力し、人類の発展に貢献していただきたいですが。」
「わかりました。わたしは存分に学べる環境を望みます。」
なにせ、前世は研究者だったのだ。前世の記憶を最大限利用するなら、まずは次に生を受ける世界を学べる環境であるべきだろう。それに魔術がある世界ならぜひ魔術について学びたい。
◇
その後も、私は幾つかの選択肢を提示し、彼が答えるという事を繰り返していく。
「さて、これであなたが生まれる環境が決まりました。あなたは安全で、存分に魔術について学べ、衣食住に困ることのない、仲睦まじい夫婦のご家庭に生を受けます。願わくは、あなたの人生に幸あらん事を。神々はいつもあなたを見守っております。」
「ありがとうございます。」
感謝の言葉を述べた彼は次の生を受けるため旅立っていった。
「行ったか。」
「はい。ゼウス様。しかし、よろしかったのでしょうか?」
「ん?特別なスキルを授けなくても良いかという意味か?」
「はい。」
あの程度の環境は、普通に運が良いだけで手に入れられる物なのだ。神からの褒美というにはあまりにショボい。
「物足りないか?だが、あの者の世界は我々が手を出さなくなっても発展したではないか。それに、神よりスキルを与えるのは使命を帯びた者だけだ。」
そうなのだ。神が与えるスキルは彼の世界で戦乱の種になってしまったのだ。その影響は宗教戦争の形で今もなお引きずっている。それからは神より使命を受けた者だけにスキルを与えて良い事になった。
「分かっております。その使命も、人類の存亡に関わるようなものでなくてはならない事も。」
「分かっておるなら良い。特にお主は人類を愛しすぎている。ゆめゆめ忘れるでないぞ。」
神である私は誰に聞いてもらうでもなく、彼の幸せを心から祈った。